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その13
約束された血の匂い/その13
麻衣
ヒールズでの剣崎さんとのミーティングが終わって、2階から倉橋さんが降りてきた
カウンターでビールをぐいぐい飲みながら、撲殺男が隣で週刊誌を読んでいる私に、例のとつとつ調で話しかけてきたわ
「麻衣ちゃん、聞いていいかい?」
「なんですか?」
「アツシは”中央公園の出番”、”抜擢”だと思い込んで図に乗ってる。”彼女”にはますます大ボラだし、久美って子も真に受けて熱が上がってるみたいだ。麻衣ちゃんはなぜ、あの久美って子とアツシを強引にでも別れさせないんだい?」
「確かに久美はここんとこ、バッジの彼がついたことを臭わせて、チーム内でも一部からは反感を買ってます。どんどんあのクソ男に染まって、久美にとっては極めて悪影響だって、私もそう実感してますしね。別れさせなきゃ、久美がダメになるって」
「なら、なんでだい?もともと、中央公園後の二人を見て、引き離すつもりだったんだろう?」
「ええ…。そうするつもりではあります、今も。でも、正直、迷ってるんですよ。私が強引に別れさせても、あの単純な久美のことだから、また繰り返すんじゃないかって…。やっぱり自分で決断させるように持って行かないと、意味ないかなって」
「…」
...
「真樹子さんがそうでしたから。あくまで、自分の意思で断ち切った。だから、彼女はそのあと、輝いてる…。倉橋さんはその現場、その目で見てますよね?」
「だけど、久美って子に同じことを期待するのも、どうなのかな…(苦笑)。まあ、俺みたいな人間がどうのってガラじゃないが、あの子はなあ…」
「うん、私もその辺は承知してるんで。近く機会みて、背中を押してみる考えです。できる限り、自分で持って行かせるようにしたいんですよ。それに今、久美は私側の幹部格として頑張ってるんですよ。自覚も少しずつ出てきていますから、私としては、そうしたいんです」
「わかった。麻衣ちゃんに任せる、その件は」
「ありがとう、倉橋さん。でもね…、一方では、西城アツシを追い込む手立てとしては、久美ともう少しくっついててもらった方が、こっちには都合がいいとも思ってるんです。ふふ…、結構いいネタ晒してくれるかもですよ、あのクソ男は」
倉橋さんは「なるほどな…」って、感心してたわ
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