その15

1/1
前へ
/18ページ
次へ

その15

約束された血の匂い/その15 麻衣 「ものの見事にハマってるでしょ、ヤツ…」 「はは、まさにだ。それにしても”あの女”、役者だなあ…。いちころだったみたいだ、そのエリカとかってホステスに、西城はさ」 その日は、いつものリッチネル最上階がとれなくて、2階の室だったわ ちょうどさっき、着いたところ… で、ベッドに二人して腰かけて、この人は煙草をくわえ一服してる 「フン、麻衣が”力”を行使できるのは、会長からクスリの条件を呑んだと、はっきりだったそうだ。ヤロウ、カンは鋭いところがあるからな」 「それと、身の施し方は砂垣順二以上かもしれないわ。クソよ!私、殺すわ。然るべき場で、しっかり懺悔させて、それからやってやる!」 「麻衣…、ひとつ聞かせてくれ」 「何?」 「西城は断罪する。当然な。だけどよう、あんな野郎、別に珍しくないぞ、今の世の中。なのに、なぜそんなにムキになるんだ?俺から言わせれば、お前なんかが相手にする輩じゃないと思うんだ…」 この時の彼の言葉には、あえて答えなかった 私はその場でいきなり服を脱いで、彼に抱き付いたわ ... 「麻衣…、大丈夫か?」 「うん、平気…。終わったのね…」 「ああ…。ヤツを病院に運んで、あとは他の人間がここを済ますから、俺たちは引き上げよう」 「私も後始末を手伝うわ。あなたは先に戻ってて」 「おい…、なにもお前が血のふき取りまでやることねえよ」 「ふふふ、最後まで体感したいのよ。あ…、勝田さん、そのモップいいかしら?」 私は、倉橋さんの隣にいた勝田さんが持っていたモップを指さした 「え?でも…」 「勝田、麻衣には最後までやらせてやってくれ」 「あっ、はあ…」 私はモップを受け取り、床に飛び散った血やら何やらを掃除している、みんなのところへ駈けて行ったわ そして振り返って、彼に大きな声で言った 「今夜、部屋に行くわ。じゃあ、後でね…」 小さく頷き、右手を上げてる撲殺人のサングラス奥の目は、気のせいか少し笑っているように見えた
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加