その7

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その7

約束された血の匂い/その7 麻衣 どひゃ~、真樹子さん! ちょっと待ってよ… いくらアテ物といえ、あんなポマード野郎ってさ… ... 「そりゃ、真樹子さんの組み立てには文句なしよ。久美のこと、そこまで考えてくれて、ありがたいと思ってる。でもねえ、いくら何でも浅土道也って、私的にはありえないわ」 「麻衣さんがそう言ってくるってのは、当然承知よ。でもね、今日久美に会って感じたわ。間をおいたら、あの子、持ってかれるわ。クソ男にまた戻っちゃう。南玉でも肩身狭い思いしてるようで、しょぼんとしちゃってるし…」 まあ、南玉の連中は出戻りめって、冷たい視線浴びせるわな そりゃ立場悪いよ、いくらノー天気な久美でもさ 「いま、優しく囁かれたらあの子、いちころよ。だからさ、中途半端なのを充てたら、寂しさのあまり勢いでデキちゃうかもしれないわよ。その点、道也なら、あくまでアリバイつくりの相手ってことで割り切れるでしょうから」 うーん、そういうことはあるだろう さすがの久美だって、あのポマードのチビなんかにポーッとなることはないか… ... 「わかりましたよ、真樹子さん。それでいこう。私の読みじゃ、近々、偶然装って久美に会うよ、アツシは。道也とは至急、セッティングをお願い…」 「了解よ。ああ、それで、そのアツシとかっての、そろそろなんでしょう?」 「そうね、もう近いわね。ほぼ材料は整ったから、倉橋さんとも詰めてるわ」 「そう…、なんか、凄いことになりそうね。今回は私たちの世界でのスジを超えてるから…」 その通りよ アツシは相和会の正式組員として、”過ち”を犯した それは愚か極まりないもので、この世界に生きる人間としては、決して許されないことだ もっとも、あのクソには、約束された運命だったとも言える そして誘ったというか、仕掛けたのが倉橋さんと私 そう言うことになる ... あの男には、私たちを駆り立てる理由が、十分なほど備わっていた 私たちを監禁して暴行した際、ビジネスではなく、欲望にまかせて女子高校生を犯した いい思いをして、”若さん”を守れなかった責任は他の人間に背負わせ、自分は無傷ですり抜けた あくまで組の人間ではなく、若こと、相馬定男の”友人”だからと… だが、その後、相和会の正式となって、倉橋さんの下に就いた ふふ、哀れなほどバカね、西城アツシって男は アイツ、久美より足んないわ、アタマの中のモン それから二日後、真樹子さんから再び電話があり、明日、浅土道也と久美を引合せることになったんだって 真樹子さん立会いの下、異例の”お見合い”はうまくいくだろう(笑) 準備は整った ... 倉橋さんからも連絡があった 今週の金曜日に”実行”とのことだ 例の廃工場で… 去年の春、相和会の人間でもないくせに、かわいい高1の子をレ○プし、けがらわしい白い液体をその床に晒した男 今度は同じ自分の体から、真っ赤な液体を献上することになる その流す量は、前回の白いものをはるかに超える 間違いなく… ... 「私も当然立会うわ。何時?」 「ダメだ。お前は来るな。二十歳にも満たない女が見るもんじゃない」 「…」 倉橋さん、いや優輔さんの愛情は感じる でも、そういう訳にはいかない このケジメは、相和会幹部の倉橋さんと同じくらい、私が大きく関わったんだもの 「とにかく、現地には連れてって。今のあなたからもらった私への思いやり、もう一度考えてみる。でも、結論は私が出すから。私の気持ちが変わらなかったら、もう一度説得してみて。じゃあ、時間教えてくれる?」 「…、たぶん6時過ぎってとこだ。また連絡する」 「ええ、お願い。ちなみに道具は音の出る方を使うの?」 電話の意向こうで一瞬、間があったが、”意味”は通じたようだ 「そうだ。今回は”そっち”になる。単なるケジメをつける儀式じゃなく裁きの場になるんだ。いいか、それはマトだけでなく、手を下す方も見届ける人間にとっても、全く違う決着なんだよ。わかるよな?」 「わかるわ…」 私はそれだけの言葉で答えた 武士で言えば、儀式なら切腹、裁きなら拷問の上斬首よ
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