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その8
約束された血の匂い/その8
麻衣
椅子に縛りつけらつけられたアツシの両脇には、二人の若い屈強な男がぴったり張り付いてる
そのやや前面横に勝田さん、そのすぐ後ろにもう一人
更に数メートル離れて私と倉橋さんが立っている
フン、コイツ、あぶら汗びっしょりの情けないツラで、私の方をずっと見てるわ
...
「アツシさん、あなた決してアタマの切れ、いい方じゃないだろうから、きちんと説明しなくちゃね。まずは十分納得してもらってね、それからね」
「ああ…、いやあ、勘弁してくださいよ。俺は何も…」
クソ男の愚にもならない弁明など、ダラダラ聞かされてたらキリがない
私は言葉をさえぎって続けた
「じゃあ、最初から行くわ。去年春、ここであなたは私の親友を犯したわ。その原因は、私たちが相和会の縄張りを侵した。対やくざ組織と括れば、私たちに非があったと認めていいわ。だから、その戒めとして暴行されたんなら、一応はつじつまが通るってこと。では、聞くわよ…」
アツシは「ええ…」と言って2,3回頷いて私の質問を待ったわ
...
「あなた、北田久美の体で果てた。そして、ちょうどあなたの後ろあたりにその証を発射したわね。端的に答えて」
「ええ、出しましたよ、確かに…。あの、やっぱり…」
「余計なことはいいのよ。事実だけ答えれば。それで、事実として他の人は達していない。これはこの倉橋さんが、きちっと本人たちに証言をとってるわ。もう一人、私の体を奪おうとした相馬さんの息子は、私がガラスの破片で切り付け、そのまま病院へ運ばれた。だから、結局イッちゃったのはあなた一人ということになるわ」
「…」
この娘、なにが言いたいんだろうって目をしてる
...
「ええと、これはひとまず置いとくわ。で、その夜、相馬定男は病院から飛び降りて亡くなったわ。当時、相馬さんの跡目に指名されていた人よね。その場にいた人間は、組にとって大事な人を守りきれなかった。それで責任をとらされて、指を詰められたのよね。あなたを除いて。どうして、あなたの指は無事だったの?」
「ああ、それは俺、定男君の友達で、あそこに連れられてたんだ。だから、組の人間じゃなかったってことで、あの時は…。それで、了解してもらってますよ!親分も承知されてますし」
どうだ、文句ないだろうって言いっぷりだわ
なら聞こう
「と言うことは、相和会の組員ではない外部の一般人の立場で、当時16歳の女子高生を強姦したってことね。そういうことで間違いないのね?」
あれ?
勝田さん、下向いて、ちょっとクスッとしてるわ
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