儚げなもの

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 儚げなものが好きだ。  例えば線香花火。田舎で聴いた蜩の声。夕立。月の夜の雲。粉雪。砕ける波頭。  そんな気持ちに共感してくれたひとが、昔居た。ぼくがまだ小説スクールに通っていた頃、同じ先生のクラスにいたひとだった。  名前を仮に、野々宮さんとしておく。  野々宮さんはぼくより二つ下で、絵本の出版社のOLをしていた。編集の部署ではなく、事務職だった。けれど作家になりたいという気持ちは強くて、ぼくが通う小説スクールを受講するようになったそうだ。
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