反応

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 結局、その日はしばらく横たわってどうにか動けるまでに回復すると、簡単に応急処置をして足を引きずりながら宿に帰った。道中(どうちゅう)、血だらけの格好でさすがに視線を集めたが、リセンはそんなことを気にする余裕もなかった。  その後、普段から神官たちが民のために開放している治療所(しんりょうじょ)へ足を運び、驚かれつつもどうにか傷を癒してもらった。それなりの金を取られたうえ、傷跡はまだはっきりと残っているし痛みも発していた。  いかに神の奇跡を(たまわ)った神官といえどその力を発揮するのは容易ではなく、傷の完治ともなれば大司祭の域に達しない限りは無理な話なのだ。  だがおかげで日常を差し支えなく暮らせるようになったのも事実で、リセンは数日間宿で眠るとすぐに今まで通り動けるようになった。  しかしその一件を皮切(かわき)りに、リセンは次々と暴力を振るわれるようになる。その理由は、リセンが力を使わなくなって軍が弱くなり、そのせいで多くの兵が命を落としたことへの(いきどお)りであったり、何故リセン一人に自分たちの未来が左右されなければいけないのか、という怒りなどであった。リセンはそんな人たちを見て、これだけの憎しみが自分へ向けられているのだと否応なしに知らされることとなった。  だからこそリセンは、その暴力のいずれにも抵抗せず、()されるがままに殴られていたのだった。それはこれまでの罪の清算(せいさん)の気持ちからであった。  そして一か月が過ぎた頃には、リセンはかつてのような凛々(りり)しい姿ではなく、多くの人から殴られ体中に傷を負った弱々しい姿になり果てたのだった。
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