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眠りから起きるように意識が戻った。確か、おなかがすごく痛くて……そこまで思い出した私は、慌てて腹部に手を当てた。
「目が覚めたのね」
ホッとしたような声に、思わず横を見た。
「お母さん……」
離れた県に住む母がどうしてここにいるのか分からない私は、呼んだきり黙った。点滴のパックが見える。自分の腕に繋がれていた。
「びっくりしたわ。
救急車で病院に運ばれたって連絡があったから、急いで来たのよ」
急いで……飛行機を使っても半日は掛かる。つまり、意識がなくなってから最低でも半日は経ったわけだ。
それなら、おなかの子供のことは聞いているはず。
「ねぇ……お母さん、赤ちゃんは?」
泣きそうな声で訊くと、母は俯いて首を振った。
「う……嘘でしょ。嘘だよね……」
言いながら声が震えて涙が溢れてきた。
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