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その1
その1
砂垣
ルーカスでルーレットに勤しんでいると、後ろから女の声だ
「砂垣さん…、しばらく」
真樹子!
コイツ…、何てきれいになりやがったんだ
まず、このセリフが頭に浮かんだよ
間近かで岩本真樹子を見るのは、”あれ”以来か…
...
「ああ、真樹子‥、随分と変わったな。はは…、ホントしばらくだったから…」
「ふふ、砂垣さんは変わらないわね。あのね、”コレ”をあなたに手渡そうと思って」
そう言うと、真樹子は手に持った白い封筒を差し出したよ
「なんだ、これ?」
宛名は”岩本真樹子様”となっているし、差出人は…
あれ…?
裏にも表にも書かれていないや
まあ、消印はあるから、真樹子の自宅に届いた郵便物には違いないな
「これ、お前宛じゃねえか。なんで俺に渡すんだよ?」
「中に一回り小さい封筒が入ってるわ。出してみて」
そう言えば、白い封筒は開封されてたわ
俺はその封筒の中を覗き込んだ
..
「ああ、たしかに茶封筒があるな」
「それ、あなた宛ての手紙なのよ。それも差出人は非明記だけでど。もちろん、中は開けてないから。とにかくあなた宛てなんで、お渡しするわ。じゃあ…」
「おい、真樹子、ちょっと待てよ…」
俺は、足早に振り返った真樹子の肩を掴んで、引き留めた
「…砂垣さん、昔のよしみで言っといてあげる。もうそろそろ、考え改めないとヤバいわよ。かなり…。言ってる意味は分かると思うわ」
「はは…、真樹子、俺のこと心配してくれてるのか。嬉しいねえ。どうだ、メシでも驕らせてくれねえか?積る話もあるしよ…」
「私、これからベッツに出勤なのよね。奥さんから店、頼まれててさ。あなたとの話は、そこでなら可よ。当然、お客として来てくれればだけど」
「…」
あの店って、黒原さんの…
...
「今日もたぶん、”みんな”顔を揃えるわ。私の彼も含めてね…。どう?」
「ああ…、また今度にするわ。はは…」
「相変わらずハンパなのね、あなたって人…。こっちはいつでも歓迎だから、度胸があったらどうぞ。ああ、たまに麻衣さんも顔だしてるわよ、最近は。そのうち、ダーリンも連れて行くって言ってたし…」
はあ?
麻衣のダーリンって、あの撲殺男だろーが!
このズベめ、オレを挑発してやがる…
「…真樹子、俺は俺の道を疾走してるんだ。今、最大に加速してる最中だよ。まあ、最後までみてろや。ああ、この手紙はまあ、受け取っとく。ラブレターかも知れないしな、ハハハ」
「…」
俺は真樹子の肩を突っかけて、先にルーカスを出た
見てろ!
年内にはひっくり返してやるからよう…
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