その10

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その10

その10 砂垣 「どう?OKなの?」 「ああ、お前の考えは伝わったしな。線引きは俺の解釈でいいなら、やってみる」 「よかったわ。あのさ、正直言うと、あなたがいないと寂しいのよ」 それ、来たぞ… コイツには最後まで油断できたもんじゃない 何かまた仕掛けてくるかもしれないんだ 用心だ、ここは用心だ… ... 「去年の再編劇だって、砂ちゃん、随分と盛り上げてくれたじゃない。今回もあなたが戻ってきてくれて、刺激的な局面になってきたわ。だからさ、あなたは消されて欲しくないのよ。本心は」 コイツ、もう体ぴったりつけてきて、恐えーよ 次は何なんだよ! 「はは、そんな怖がんないでよ。私はね…、あなたのこと、ある意味評価してるわ。紅丸さんには、さんざんコテンパンにのされても、何度もゾンビみたいに舞い戻ってきてさ。そもそも、やくざモンと不良や族のガキ連中の、中間層の開拓者よ、あなた。愚連隊やハングレだとか、ガキより一段上に立てて威張り散らせるし、やくざもんの威光も使える。でも、いざって時は、その筋じゃないからその世界のルールははずれる。賢いわよ。アツシなんかとは違うわ」 麻衣の奴、一転、褒め殺しに出てきやがったか… ... 「ふふっ…、なにもないわよ、今日はもう。ただのお話だから。とにかく、そういう才能はあるってことよ、あなたにはさ。諸星の顔デカも、そこのところをよく承知してるから、あなたをずっと囲ってるのよ。ハンパもんなりに性根が入ってるってとこで。私にしても、そんな砂ちゃんは使えるからさ。なるべくなら殺されないでね」 結局、こんな話を30分ほどした後、俺は”解放”されたよ こうなったら、今度は星流会の動きを常にチェックしておかないとな ”バグジー”も送り込んできたことだし、俺がセーブ利かさないと、早速、麻衣からレッドカードを食らうぞ よし、明日にでも、諸星さんと直接会ってこよう 向こうの事情をもっとよく確認してくるぞ ... それと、帰り際の麻衣からの一言だよな 「あとさ、アツシが私たちからの通告以外にも、自分の意思であなたに話したことがあるかもしれないけど…。別に聞かないわ。でも、今日の取り決めをひっくり返すようなことにならないように、くれぐれもね」 全く、どこまでも恐ろしいヤツだよ アツシから横田競子の名が出たことなど言えようか ましてや、アツシに麻衣を潰す意思がまだあるなんて たとえ麻衣が、それを察していたとしても… ... 翌日、星流会を訪ねた ここしばらくは大場を遣わしていたが、それには理由があった あっちが盛んに知りたがってる相和会ネタを、俺にせっつくからだ 言葉のはずみで、ちらっとでも漏らしてしまえば、尾ひれ背びれは世の常だ それを警戒して、諸星さんや金城さんと会うのを避けていた訳だ だが、麻衣とあのような取り決めをしてしまったからには、事情が全く違ってきたよ ... 今までは、アツシからの暴露ネタを、”高く”売りたいという下心から、ネタの温存という面が強かった ところが、今はしゃべったら消されるという身の危険から、絶対に他言できない立場に至った それこそ、死ぬまで胸の内にしまっておくという、固い決意がなされたよ だから直接会っても、つい口を滑らすなんてことは決してないわ 逆に直接会って、リアルなところを最大限掴んでくる必要性が出てきたんだ で、これから星流会トップの諸星さんと会う ... 「なんだー、おい!ここんとこ大場ばかりよこしてたくせに…。いいネタ持ってきたのか、順二?」 うわあ、早速詰められるわ… 「あれば、そちらから聞かれる前に持って行きますよ。ないんで、バツ悪いから、大場を行かせてたんです」 「じゃあ、今日はあるんだな?」 「いや、それが特段ないんですよ」 「砂垣、テメー、何年面倒見てやってると思ってんだ!いい加減貢献してみろって!全く…」 なんか、いつにもまして機嫌悪いな、諸星さん ... 「すんません、親分。相変わらず、役立たずで…」 「ああ、それでお前、何の用件だよ今日は…。そっちからのネタじゃないんならよう」 「あのう、例のバグジーって男が”納品”と、大場から聞きましたんで…。やっぱり、事前によく確認しときたいと思うんです。使い方間違えると、かえってヤバいことも起こり得ますから」 「ああ、そうだな。お前も早めに見といたほうがいい。今、連絡取らせる」 よし、何とかつじつまは合わせたぞ ... 連絡を手配つけてる間、まずはこっちからも直近の情勢を伝えた 「そうか…、テンバッテんな、これは。なら近々、勃発するか…」 「ええ、いつ火がついてもおかしくない情勢で…。ですからバグジーも早速、出番が回ってくると思いまして」 「ああ、高い銭使ったんだ。有効に使ってもらわんとな」 ふふ、ちょっと機嫌よくなってきたぞ
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