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その12
その12
砂垣
その後、何点か直近の報告をし、相和会ネタはかなりガードが固いと告げた
諸星さんは眉間にしわを寄せて、渋い顔でタバコを咥えてるよ
「間接的に信号も送ってくるんですよ、奴ら。俺もうかつには動けませんので、まあ、思ったより”集まり”が鈍くて、何しろ憶測の範疇ばかりです。すいませんが…」
ここで諸星さんは「ふーっ」と、大きなため息をついて、ソファに背をもたれた
「まあ、実際、こっちも往生してるわ。奴ら、俺たちが”裏ネタ”集めてんの知ってて、挑発してきてるしな。ムショから出た旧建田組の下っ端をよう、ウチの”眼下”にかくまってやがるんだ。そいつの口の中お宝たんまりって、こっちが睨んでんの承知でな」
そこまでアジってきてるのか、相和会は…
...
「フン、撲殺人が先頭立って、その”口”を武闘派連中がテント状態だ。東西双方と合意を交わしたばかりじゃ、こっちが手を出せないと計算ずくなんだよ。それにな、例のお前に振ったチンピラ、こっち経由でも間接的に探りいれていたんだが、どうやら”ケガ”したらしいぞ。お前も、少し間を取った方がいい」
げーっ、アツシのことも、しっかり”知らせ”を手配済みかよ…
「今朝は今朝で、ひと騒ぎあってな…。金城もあの小娘におちょくられてきやがった…」
おい、おい…、”あの小娘”って…
「おい!”アレ”持ってこいや」
すぐに若い衆が”アレ”を手に、諸星さんの前に置いた
うわー、参った…
もう、この先は遠慮だって
諸星さん、開かなくていいですよ…
...
「金城の奴、こんなもんを土産に持たされて帰ってきやがった」
諸星さんが手にしたものは間違いなく、俺が”今日だけエリカ”に見せられた赤い爪だった
「実はよう、前々からネタの売り持ち込みがあってよう…。何人かつないだ末、若い女がうちの事務所に、会って話したいって電話があってな。報酬は赤い高級マニュキアだった。こっちはそれを用意して連絡待ちだったんだが、けさ早く今からって電話があってな。金城が意気揚々と待ち合せ場所のルーカスに行ったら、何と、本郷麻衣が待ってたって訳だ」
ああ…、また頭が痛くなってきた
「麻衣はこっちの用意したもんと交換で、そいつを渡してきてよう、金城が中を開けてびっくりしてるの見て、ニヤついてたらしいわ…」
「麻衣は何か言ってなかったんですか?」
一応、俺がその爪とご対面済なのを話したかは、確認しとかないと…
「まあ、麻衣からの”説明”は特段なかったが、倉橋の嫁になる娘がそういうことなら、”先方”のメッセージは聞かんでもわからあ…」
どうやら、昨夜のことは触れなかったようだ
...
「ひょっとして、この生爪、麻衣が直に剥がしたんじゃないのか?あいつならやりかねんぞ。お前は麻衣とは何かと接してるんだ。どう思う、順二?」
「はあ…、まあ、麻衣なら何でもアリですからね…」
「このコトは、東龍会に報告したんだ。対相和会で歩調を合わせている2,3の組にも知らせてくれてな。いいか、順二、さすがに未成年の小娘にここまでは看過できない。そういう方向で、いずれ何らかの方針が定まるかと思う」
これって…
麻衣、ヤバいだろう
とうとう本気で怒らしたぞ、関東を…
ー完ー
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