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その4
その4
砂垣
サウナの中で、俺は頭を整理した
ひとつひとつ…
まず、今回アツシがマトにされた理由は、麻衣との約束反故と組織の内部事情を口外したこと、その両方だった
前者はアツシ個人、後者は相和会の人間として、処罰の対象になったと…
具体的には、元カノと復縁を計ったことと、俺にこれまでリークしてくれた暴露ネタ一式だ
つまり、公私双方の”罪状”には、俺がもろ絡んでいる
俺は、アツシと彼女とのヨリを戻す行為に共謀したことになり、相和会に都合の悪いネタを横流しさせた
つまり、相和会から怒りを買い、狙われる立場になったって訳だ
これは間違いないところだよ
...
だが、西城アツシは、俺との接触は認めたが、彼女とのことでは俺のかかわりは否定してくれたらしい
組織の情報漏えいに関しても、俺にはしゃべらなかったと通していたというし…
要は俺とは個人的な付き合いで、今回の件の当事者ではないという主張だ
正直、それだけでもホッとしたよ
とりあえず、アツシさんには感謝しなきゃな
無論、相和会、それに麻衣はそんな供述を信じやしないだろう
で、執拗に俺のことを疑って、訊問してきたらしいや
今でも俺に関しては、そんなことねーだろうがってね
当のアツシ自身、そう感じてるとのことだ
そりゃ、そうだ…
自分で言うのもなんだが、バックは星流会だし、見え見えだわ
...
今日、真樹子を使ってオレをここへ導いたのだって、明らかに麻衣の意図が込められているよ
言わば警告だ…
ここまで奴らに睨まれたからには、相当ヤバい立場という自覚はあるさ
ふん、さっき真樹子が言ってた通りってこった
そこでどうするかだが…
まずは、病室で耳打ちされたあの言葉…
”その紙に書いてある女に会ってきてくれ…”
...
その女とは、新宿のクラブJのホステス、エリカ…
アツシによると、その女に相和会の内部情報を漏らしたようだ
しかも、俺に教えた内容以上のことを話したらしい
その女には明後日、店で会うことなっていたので、代わりで俺に行ってほしいと…
で、聞いた話は絶対口外しないように、クギを刺しておいてくれってことだ
あいつ、”余分な口”をきいた相手として、俺同様、彼女の名も奴らには吐かなかったって言ってたよ
西城アツシは、ああ見えてもえらいよな、そういうところ…
...
どうやら、アツシはそのエリカって女にお熱を上げていたようだ
帰り際には、その女からねだられてたという、赤い高級マニュキアを受け取ってさ
会ったら約束のプレゼントだからって、渡してほしいと頼まれた
アツシとしては、彼女が相和会から狙われることを恐れているんだろう
とにかく店に行って、エリカとかって女には会って来るとしよう
明後日の昼には、大場とも落ち合って、星流会からの伝達事項が伝わることになってる
一応、アツシが制裁を受けた件は伏せといて、星流会の直近の状況を確認するんだ
もう俺は、星流会の利害関係とは連動してるし、いろいろと見極めた上で判断しないとな…
...
それと…
実はアツシの耳打ちでもう一つ、重要なメッセージを授かった
「俺はもう動けないから、この前取り交わした例の目的は、君に託すよ。その紙の最後に記した名前はよく覚えといてくれ…」
これは先日、俺と約した麻衣を潰すという意志には、今も変更がないということだろう
そしてその名前の主が、麻衣を追い詰める材料になり得ると…
俺はそう解釈したよ
で、その名前なんだが、”横田競子”と記されていた…
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