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その6
その6
剣崎
ホテルの駐車場についた
愛車の青いポルシェが止まったのは、3時前だったよ
ちょうど、チェックインでフロントは賑わっていた
秋の観光シーズンってこともあるのか、それらしき宿泊客が目立つな…
俺は即部屋に戻ると、ソファでしばらく体を休めていた
その間、頭の中は自然と、倉橋と麻衣からのそれぞれの”報告”を思い浮かべていたわ
まず…、今回の裁きの場に、麻衣は最初から最後まで立会った
倉橋が言うには、血しぶきが上がる場面でもたじろぎもせず、終始、冷静で決して目をそらすことはなったという
自分が作業中も、他の者へは事前に麻衣の様子を事細かくチェックするように指示していたらしいからな
しかも、異例の抜擢だった”進行役”の手腕も半端なかったと…
これには、矢島さんも明石田さんも、唸っていたわ(苦笑)
...
麻衣は相和会を巡る諸情勢を、鋭いカンで見切っている
そして、ヤツの言うオペレーションとやらを画策し、すでに次へ着手しているだろう
自分が倉橋の妻になるという立場も念頭に入れながら、すべてを見通し計算したうえで…
「…麻衣は俺の考えが及ばない発想で、次から次へと組み立ててくるんで、俺、ついて行けねえっすよ」
倉橋がぼやきだかのろけだかわからねえが、嬉しくてしょうがない口ぶりだったのは、受話器を通してもはっきりわかった
...
”ダーティー・ビューティー”…
昨年夏、都県境の女勢力の再編を巡る衝突の際、麻衣が仕掛けたオぺレーション企画書のタイトルがこれだった
俺はこのフレーズに、思わずのけ反ったわ(苦笑)
だが…、騒動が終わって見れば、ヤツのオペはものの見事に時限爆弾の役割を担い、結果、勢力フレームを”一新”させた
しかも、その枠内には墨東会をはじめ、男のガキ勢力をも巻き込んでの都県境オールの大編成を成したんだ
加えて、自らを極限に駆り立てる好敵手まで、そのフレームにひっぱり込んだ
その相手こそ普通の女子高校生、横田競子だった‥
二人の火の玉川原でのタイマン勝負は、まさに殺し合い寸前だったぜ…
そして、その場から二人を相馬会長の元に連れたことから、この1年がはじまり、今回の相馬さんの死を受け、”この夏のあの二人”に至った…
ふう‥、相馬会長の描いた絵はなんとも…、としか言いようがない
...
倉橋の婚約者に収まった麻衣…
俺は思う…
ヤツはここに至っても、その行動すべてが”ダーティー・ビューティー”の精神に則ったものだろうと…
ふふふ‥、この後、麻衣は西城アツシへの制裁を経て、さらなる仕掛けに入る
間髪入れずに…
我々、相和会の進路を折り込んだ上で…
それは、ガキ界隈とオレ達の世界とのボーレスが、星流会・砂垣ラインから、大打とかって危険なガキと東龍会のランデブー関係へのバージョンアップを見越したアクションとなるはずだ
おそらくは、当の砂垣と星流会が、またまた麻衣にド肝を抜かれることだろう…(苦笑)
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