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「ゆうた、かんた、お風呂入るぞ」
仕事から帰って同じくフルコースを食べたパパが言う。
今日は機嫌がいい。
どうしてわかるかって?ほら、パパの歌声が聞こえてくるでしょ?
「ウルトラソー、イェー!」
パパはC´zの大ファンで、お風呂に防水スピーカーを持ち込んで曲を流している。おかげで僕やかんたまで歌えるようになってしまった。
「「ウルトラソー、イェー!」」
パパは時々、ギターをひいて歌ってくれる。若いころは、ろじょう?っていうところでお友達と歌っていたんだって。
お風呂から上がって、パソコンのことを思い出した。
そうだ!パパをミュージシャンにしてみよう!そうしたらいつでも大好きな歌を歌えるよ。
音声認識ボタンを押して、パソコンに言う。
「パパをミュージシャンにして!」
「カシコマリデチュ」
お風呂から出たパパは、いつもと変わらない様子だった。あれ?失敗したのかな?
パンツをはいたところで、パパが急に止まった。
「ふってきたぞ!」
パパは何かわけのわからないことを言って、紙と鉛筆をつかんだ。そして、机に向かって何かを書き始めた。
「ちょっと聴いてくれ」
書くのが終わると、パパはママと僕たちを集めた。そして、ギターを弾きながら歌い始めた。
うわあ!初めて聴く曲だけど、何かかっこいい!
ジャーン!と最後を決めたパパは自慢そうな顔をしていた。
まだパンツのままだったけど。
ママもいつもなら「早く服を着なさい」って怒るのに、今は笑顔で拍手している。
ももちゃんにはまだ難しかったみたいで、向こうの方でおもちゃにかじりついていた。
「パパは、明日、この曲をレコード会社に持っていってみるからな」
ミュージシャンパパの目はキラキラしていた。
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