何でも言うことをきいてくれるパソコン

4/11
前へ
/11ページ
次へ
「ゆうた、かんた、お風呂入るぞ」  仕事から帰って同じくフルコースを食べたパパが言う。 今日は機嫌がいい。 どうしてわかるかって?ほら、パパの歌声が聞こえてくるでしょ? 「ウルトラソー、イェー!」  パパはC´zの大ファンで、お風呂に防水スピーカーを持ち込んで曲を流している。おかげで僕やかんたまで歌えるようになってしまった。 「「ウルトラソー、イェー!」」  パパは時々、ギターをひいて歌ってくれる。若いころは、ろじょう?っていうところでお友達と歌っていたんだって。  お風呂から上がって、パソコンのことを思い出した。  そうだ!パパをミュージシャンにしてみよう!そうしたらいつでも大好きな歌を歌えるよ。  音声認識ボタンを押して、パソコンに言う。 「パパをミュージシャンにして!」 「カシコマリデチュ」  お風呂から出たパパは、いつもと変わらない様子だった。あれ?失敗したのかな?  パンツをはいたところで、パパが急に止まった。 「ふってきたぞ!」 パパは何かわけのわからないことを言って、紙と鉛筆をつかんだ。そして、机に向かって何かを書き始めた。 「ちょっと聴いてくれ」 書くのが終わると、パパはママと僕たちを集めた。そして、ギターを弾きながら歌い始めた。 うわあ!初めて聴く曲だけど、何かかっこいい!  ジャーン!と最後を決めたパパは自慢そうな顔をしていた。  まだパンツのままだったけど。  ママもいつもなら「早く服を着なさい」って怒るのに、今は笑顔で拍手している。  ももちゃんにはまだ難しかったみたいで、向こうの方でおもちゃにかじりついていた。 「パパは、明日、この曲をレコード会社に持っていってみるからな」  ミュージシャンパパの目はキラキラしていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加