とある薬の有効活用

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   罠だろうか。  ちょっとでも位置が変わってたりしたら、「おい、母、見たな!」って言ってきたりするのかな。いや、それなら言い訳ができるから、まだ良い。何も言ってこないで、静かに信用を失うのが怖い。あの子は、私に似ているから、そういう嫌なことをしそうだ。  しかし、見たい。息子の日記。  娘のだったら見なくて良いのよ。自分も女だし、自分の子供だし、まぁ、私の娘時代と似たような悪いことしてるんでしょ、って想像できるからさ。  でも、息子は!異性は!  なに考えてるんだろう。好きな女の子の事とか?エロ?いや、案外もっと子供かも知れない。真面目かも知れない。それは親の願望か?  あの子は私に似ているからなあ、親に隠し事していそうなんだよなあ。きっとそこまで悪いことじゃないだろうけど。いやでも、似てるったって、親と子は別の人間だし。もしかして、私の想像の上を行く犯罪的な悪事とか。  いやいやいや。そんな子が日記を書くか?ってか、男の子で日記書くって。今時、わざわざ日記を買ってまで文字で綴るとか。お前は女子か!  はっ。もしや、そうなの?心は女子なの?嘘。じゃあ、悩んでる?傷ついてる?お母さんはあなたの味方よ!  いやー!見たい!見たい!見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見よう!見ようよ!そうだ、見るぞ!見なくちゃ!だって、悩んでるかも知れないし。あの子は私に似てるから、繊細で思い詰めやすいところがあるから!  ・・・でもなぁ。悪い事だよね。  あ、思い出した。  昔、ある極秘ルートから手に入れた、あの薬。透明人間薬!  凄く高かったけど、「今しか買えないですよ」とか言われて買っちゃったのよね。あれは息子が幼稚園の頃だから、十年くらい前だっけ。蓋開けてないから劣化して無いよね。大丈夫、大丈夫。駄目でもお腹壊すくらいでしょ。  たしか、冷蔵庫の一番上の段の一番奥に・・・あった!  いやー、恐ろしい。一番奥に置いたと思ってたけど、まだもっと奥に全然記憶に無い海苔の佃煮の瓶があったわ。  まぁ、良い。冷蔵庫の片付けは後にして、薬を・・・ゴクッ!  ありゃ、本当に透けてきた。わぁ、これ服も消えるんだ。超便利。  ふっふっふっ。姿が無いのだから、私は母ではないですよ。ただの風です。風なのだから、どこを吹いても良いのです。風が息子の部屋に入って来ましたよー。  ふははははは、楽しくなってきた。我は風の大聖霊ルシルフィードの化身。禁断の書に触れてしまったが為に地上に堕とされた天界の仔を救済する使命を持つ者なり。  どれ、では、禁断の書の確認を・・・ 『黒薔薇の堕天使がその翼を深紅に染めて  漆黒の闇に捕らわれし穢れなき魂を救う時  少女は神の力をその手に宿し・・・』  ・・・・・・。  似てるの、厨二病(そこ)かーーーーーー。  
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