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平安後期の都。帝が統治していた世。城の鬼門を守護をしていた社寺が大火で焼失したため、城の結界が緩み魔が自由に世に行き来できるようになってしまった。
鬼門より侵入した妖魔者は城内を汚し帝に呪詛を掛けた。御身に受けた帝は病に伏せ、世は冷夏となり人々は飢饉に陥っていた。これを収拾すべく、各宗派の代表者が城に収集となった。
各宗派の長を前にこうして会議は夜を明かして進められ、彼らはそれぞれの配城のある都の東西南北の方角に各宗派の強者の妖退治の班を送り、ここにいる妖を滅するものであった。
こうして妖隊が各地に派遣された一年後。ある三宗派が城に密かに呼び出された。
「おお。お主もここに?」
「八田殿か。それにしてもなんたることか」
「口を慎め。右大臣じゃ」
陰陽師の力を持つ天満宮の神主、八田家当主と、修験道の大僧侶、そして天狗の祖は、右大臣に平伏した。
「面を上げよ、そちらに内密の話があるのじゃ」
天領庁を管轄する大臣は疲れた顔で三人に顔を向けた。それは妖討伐の戦況についてであった。
「東道へ赴き、妖を退治する者が帰って来ぬのだ」
「東道でございますか」
「ああ。これはもう、他の妖隊が行っておるが途絶えるばかりじゃ」
重い話を聞いていた三人は黙っていたが、僧侶が尋ねた。
「……そこで。我らにどうせよと」
「お主達の元から手練れを出してくれぬか」
宮廷からの無理な話に三人は下を向いたまま応えた。修験道の僧侶は既に遣い手を出しているといい、天狗の祖も無理だと低い声を通し八田も続いた。
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