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「恐れ多い事ですが我が八田家は結界を張っておりまする。なぜ故にございますか?」
「……占いが出たのじゃ」
右大臣の話では、帝の母である皇后による占いであると話した。
「私とて。そち達に無理を言っているのは承知だ。しかし、このままでは帝の体が持ちますまい」
話を拒むことができないまま、三人は下の間に戻って来た。
「我らで、妖退治……なんとするぞ」
八田夕水はそういって頭を抱えたが、修験道の老僧侶はうってつけの者がおると話した。
「酒飲みで今は謹慎しておるが腕は確かでございます」
これに天狗の祖は嘆き出した。
「おお情けない……。我が弟子達は鬼門の結界のために足りないくらいじゃ。しかしそちらが出すなら、うちも出しましょう」
「……わかり申した。八田家も工面致しましょう」
重い足取りの三方は火事で消失した社寺を横目で見ながら夕暮れの古道を帰って行った。
◇◇◇◇
「息子達よ。帝様より命を頂戴したぞ」
実家に揃っていた四人の陰陽師の息子達は当主である父の言葉に頭を下げた。父は息子達に東道への妖退治の話を静かに溢し出した。
「では我らのうちの誰かが行かねばならぬのですな」
「左様」
跡を継いでいる長兄、晴臣の低い声に次兄の弦翠が二人の弟の顔を見た。
「兄上は天満宮がおありです。紀章は婿入りしたばかり。ここは私が参りましょう」
兄弟で一番大柄な弦翠はそう素直に言い、坐する一堂を見渡したが父が目を閉じた。
「……お前は今、鬼門の結界を張っておるではないか。そこはどうする」
「父上。その代わりは笙明に」
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