三 鬼門の決壊

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 幼い顔の篠に、笙明は眉を潜めたが、龍牙がそっと呟いた。 「八田殿。こやつの寺は山の上ですぞ」 「そうだよ。おじさんこそ大丈夫?」 「ハハハ。これは楽しみだ?」  妖退治の任務の三人は、顔を神妙し、右大臣が待つ間に向かった。 「よく参った。この書によれば、陰陽師の八田笙明。修験僧の龍牙。天狗の篠か。必ずや倒してくれるであろうな?」 「必ずとは申せませぬ」 「行って見ないとわしもわかりませぬな」 「俺できますよ」 「真か?」 「……しばし。待たれよ」  笙明は部屋に飾られている壺を睨んでいた。 「右大臣様。あの壺は」 「あれか?帝が気に入っておいでだが」 「何かあったのか、笙明殿」 「龍牙殿……あれはここに飾るものではござらん」 「どれ?我が見るか」  龍牙は数珠を手にこの壺に歩み寄った。壺はカタカタと小刻みに横に動き出した。これを見た篠は念仏を唱えた。 「笙明殿よ。この壺は何か言いたいことがあるようだ」 「さもあらん。これは骨を入れる南洋の壺だ」 「え」 驚く右大臣が見る中、笙明はすっと立ち上がった。 「……冥界の異物、害を成すものめ……ここはお前のいる場所ではない……立ち去れ……往ね!」  穏やかだった笙明の面から想像できない程、冷たく恐ろしい呪いの言葉は、手に触れずして壺を握りつぶした様に砕いた。 「なんと?これは一体」   慄く右大臣を前に笙明は何食わぬ顔で説明をした。 「これは悪意の塊。こんな物を置くとは?目利き以前の問題だ……」 「大方、帝に反する者の贈り物だな」 「それ。庭に埋めないで河原に捨てた方がいいですよ」
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