362人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は床で苦しみ出した。三人の目には彼女の姿が白い鳥に見えてきた。
「……はあ、はあ。苦しい……」
鋭い目の龍牙が数珠を振るい問いかけた。
「お主は何者だ。言え!」
「私は……娘です……ここの、ここの娘です」
胸大きく呼吸する苦しそうな娘に篠は可哀想になっていた。そんな娘に笙明は優しく顔を撫で乱れた髪を直していた。
「そうか、お主は、お主の母はあの鷺で、お主の父は人か」
「……知りませぬ、私はここの……娘」
「私が楽にして進ぜよう、二人とも離れておれ」
そう言うと笙明は息を吐き、両手で印を結び娘をじっと見つめた。
「……真、正、静、奥、中」
「ううう……あああ」
「潔、実、心、封……開!!」
笙明の呪文に娘の身体は悲鳴と共に一瞬輝いたが、すぐに娘の姿になった。
「どうなったの」
「娘御、どうだ」
「……はあ、はあ。もう、大丈夫です」
体を起こそうとする娘を笙明は優しく抱き起こした。
「お前は無意識に鷺になっておったのだ。私はそれの封を解いたぞ」
「……はい……旦那様……今はそれがわかります」
「どうだ。苦しくは無いか」
心配そうな笙明の優しい腕の中で娘はゆっくりと彼を見つめた。
「はい。私の中で静かに血が回っているのを感じます……」
「そうか。それなら良い」
娘から離れた笙明はやんわりと離れると立ち上がった。
「これからはお前は自分で姿を変えられるであろう。しかし決して人には見せぬように」
「はい」
最初のコメントを投稿しよう!