四 鷺娘

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 彼女は床で苦しみ出した。三人の目には彼女の姿が白い鳥に見えてきた。 「……はあ、はあ。苦しい……」  鋭い目の龍牙が数珠を振るい問いかけた。 「お主は何者だ。言え!」 「私は……娘です……ここの、ここの娘です」  胸大きく呼吸する苦しそうな娘に篠は可哀想になっていた。そんな娘に笙明は優しく顔を撫で乱れた髪を直していた。 「そうか、お主は、お主の母はあの鷺で、お主の父は人か」 「……知りませぬ、私はここの……娘」 「私が楽にして進ぜよう、二人とも離れておれ」  そう言うと笙明は息を吐き、両手で印を結び娘をじっと見つめた。 「……真、正、静、奥、中」 「ううう……あああ」 「潔、実、心、封……開!!」  笙明の呪文に娘の身体は悲鳴と共に一瞬輝いたが、すぐに娘の姿になった。 「どうなったの」 「娘御、どうだ」 「……はあ、はあ。もう、大丈夫です」  体を起こそうとする娘を笙明は優しく抱き起こした。 「お前は無意識に鷺になっておったのだ。私はそれの封を解いたぞ」 「……はい……旦那様……今はそれがわかります」 「どうだ。苦しくは無いか」  心配そうな笙明の優しい腕の中で娘はゆっくりと彼を見つめた。 「はい。私の中で静かに血が回っているのを感じます……」 「そうか。それなら良い」  娘から離れた笙明はやんわりと離れると立ち上がった。 「これからはお前は自分で姿を変えられるであろう。しかし決して人には見せぬように」 「はい」
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