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謎の声はこれを撤去ではないかと推測した三人は岩を前に立った。しかし大岩はびくともせず三人では到底無理であったので、ひとまず山を降り村人の助けを借りる事にした。
下山した三人は村の者に、岩を退けたいと話をした。だが誰一人手を貸そうとはせず、山の上の事などどうでも良いと笑った。
三人は今一度、村からの脱出を試みたが、やはり出られず、再度山に登り岩を退ける事にした。御堂で一休みをした一行は昼下がりに再度山を登っていた。
「くそ。今は明るいだから笙命様は力が出ないのか」
「わしは力が有り余っておるので、少し掘りまする」
「私も加勢するか。どれ」
笙明はこの地に魔物が来ぬように清めをしようとした。そこで落ちていた木片を手に取り、指に樹々の葉の上の水を浸し文字を書いた。
「霊符御守護。四方八方を守りたまえ……さて、これをどこかに置けば」
「笙明様!それって」
「む。そうか、これは村の木戸の」
木戸に置かれていた符号をこの時書いた笙明に篠もぞっとしたが、岩の周囲を調べていた龍牙は何やら底を掘り始めていた。昨夜よく寝ていなかった笙明は二度の登山で疲れたため、符号を篠に託し昼寝をしていた。
「笙明様!起きて」
「ん……夕暮れか」
目を擦った笙明は二人が岩を避けるために周囲を掘った跡を見て感動していた。
「これなら私達で除けられるかも知れぬ」
「はい!それに日暮れじゃ。笙明様の出番じゃ」
「それにしても……濡れているのか」
まるで月を仰ぐように山に空いた穴にぴったりくっついている岩の隙間からは水が滲み出ていた。彼らは一気に片付けようと支度をしたが、空は雨雲になってきた。
「どうするの」
「やるしかあるまい。そしてこの村から出るのだ」
「良し!さあ。やるぞ……」
岩の底の土を削った龍牙は、岩が揺れるくらいの隙間を作っていた。この隙間に篠と笙明は丸木を入れた。そしてこの丸木をどんどん入れ増やし、岩を転がそうという作戦であった。雨足が強くなってきたが三人は作業を続けた。
「せーの!」
「……今だ。篠……木を入れろ」
「入れた……よ。これで動くんじゃないの」
「はあ、はあ、はあ」
全身汗と雨に濡れた三人はいよいよこの大岩を押し、転がそうとした。
「参るぞ」
「おう!篠も押せ」
「わかっているよ。せーの」
三人が渾身の力で岩を押すとゆっくりと動きとうとう退すことができた。
「うわああ?」
「水が……凄い勢いで」
「高台に登れ!まだ出るぞ」
人が通れるほど隙間から噴き出した水に三人は驚いたが、すぐに出水が少なくなったため安心していた。夜の大雨の中、高台でこれを見ていた彼らであったがここで龍牙が叫んだ。
「泥の匂いだ!崖が崩れるぞ」
「ここが?」
上の斜面が崩れてくるので下に逃げても万事休すであった。三名は一か八か今開けた水の抜けた穴に飛び込んだ。ここは洞窟になっており奥まで続いていた。この穴に奥に潜んでいた三人にはドドドという恐ろしい音が響いていた。
「終わったの?」
「ああ。だが出口は埋まっておるかもな」
「笙明殿。松明をくれ。よく見えぬ」
確認した龍牙は隙間を埋めた穴の土を内側から退け始めた。濡れた土であったが深くは無いと彼は話した。交代しながら押し進めた彼らは外に出た時は朝だった。
「これは」
「酷い」
「村の跡がないぞ……」
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