一 月夜に老狸を討つ

4/4
前へ
/243ページ
次へ
 一行は春の風に吹かれながら東に道を進んでいた。頭上からは雲雀の声がしていた。 「そうだな。しかし、笙明殿の占いが効くとわかったのでこれで行くしかあるまい」  ああと篠はうなづいた。 「では先の社に行きますか?そこで占いをしてまた見つければ良いんだもんね」 「……そう、だな。よし、私は先に参るぞ?は!」  そう言って笙明は澄ました顔で馬を走らせた。 「あ。ひどいよ」 「待ってくだされ?」  桜の蕾も硬い弥生の春の古道。妖隊は風の中を舞うように進んでいくのだった。 第一話完 第二話「悲しき水鏡」へ <2020・4・30>
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

358人が本棚に入れています
本棚に追加