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「・・・ここでなら私だけの妻になってくれるのか?」
「ええ。・・・お慕いしてもよろしいですか?」
私がにっこり笑うと萩野宮さまはこれ以上にないくらい喜び、更にこんな約束をしてくれた。
「これから逢うたびにに豪華な着物を用意しよう。私の妻ならこの世界で一番美しい着物を着なければならない。そうなれば簪も良いものが必要だな。ああ、妻のために用意するとはなかなか気分がいいな!」
私はお気持ちだけで十分嬉しいです、と伝えた。まあ、こう言っても絶対用意すると分かっていながら。すると苧環は奥ゆかしく謙虚な女子だと褒め称える。聞いて笑える。自分でもその性格の逆の人間だと自信を持って言える。
そして萩野宮さまはいつもの倍くらいのお金を女将さんに渡し、機嫌よく帰っていった。
「あんた、これはすごいじゃないか。いや、この前もこんなことあったね。一体どうやったらこんなにお金を出していただいたのさ?」
「さあ?どうしてなんでしょうね?」
私は女将さんの前でもとぼける。とぼけてみせても女将さんは元高尾太夫。私がとぼけてることぐらい気づいているはずだ。
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