苧環が咲き誇れば

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・・・いや、一度だけ私に目を向け話しかけられたことがある。 それは母様の墓参りに来てた時だ。宗助も幼いころに母親を失くしているらしく、よく一人で参りに来ているのは知っていた。その時は必ず一人だった。女性は傍にいないし、服装も質素なものだった。けれどどんな格好をしても宗助はいつだって特別な存在を出していた。普通の人とは全く違う存在だ。なぜこんなふうに思えてしまうのか不思議で仕方ない。 「・・ねえ。」 心の中で一心に亡くなった母親と話してる私の頭上に冷たい声の宗助が話してきたのだ。 「見返そうとか思わないの?」 何を、とは言わなかった。でも言わなくても簡単に分かることだった。もちろん、見た目でとやかく言われたくないし、美人になって今までのことは謝ってほしい。けどどうすれば見た目が良くなるかなんてわからない。
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