苧環が咲き誇れば

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吉原遊郭に自ら足を踏み込んだ私だけど、本当はいつ売られてもおかしくない状態だった。そう、時間の問題だったのだ。けど売られる場所は分からないんだ。そしてこの高尾屋には絶対売れないだろうってことは分かっていた。自分にはそこまでの価値はあの時なかったからね。女将さんは自らここに飛び込んだことに興味深く私を受け入れてくれたのだから。本当だったら下級の妓楼に売り飛ばされ、死ぬまで妓楼の犬になってただろう。私はここぞという時を間違えなかったのだ。今でも過去の自分に褒めてやりたい。間違えてたらこの今の生活は送れなかったからね。それに宗助にこの高尾屋で再び会えた。仕事をしながら宗助を探す手間が省けたのだ。これはすごく大きい。だって遊郭に入り込めても本当にあの噂がデタラメだったら私は一生、ここにいながらも宗助に復讐はできなかった。憎い気持ちを抱えながら死んでいったと思う。 神様は私に味方したのかもしれない。そう思えたら頑張れた。この高尾屋の一番になってやろうと思った。そしたら女将さん以外、私に全員頭を下げる。私の言うことを何でも聞かなくてはならなくなる。その対象はもちろん宗助も入っている。私は宗助に屈辱を与えたかった。
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