苧環が咲き誇れば

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自分でも馬鹿みたいに甘いこと言ってる自覚はある。ここで無理やり己の欲求を果たしてしまったほうが簡単じゃないか?だれだってそう思うだろう。でもここは高尾屋。吉原遊郭の中でもトップの店だ。そんな下品な行動をすぐ起こしてしまう客はここには来ない。言葉の駆け引きさえ間違わなければここは物わかりのいい、割と紳士な客しか来ないのだ。 そしてこれは最後のとどめだ。 「ここに来ていただける間、私たちは清らかな夫婦に。・・・それではだめですか?・・・私は、旦那様とお呼びしたいです。」 夫婦、旦那様。 この言葉で萩野宮さまの心をがっしりと掴んだ。きっと、萩野宮さま的にもこのやり方が一番いいのではないか?話を聞く限り、まだ御両親は健在で、まだ正式に店を継いだわけでもない。それなのに私を見請けする金なんてあるわけないし、無理やり金を作ろうと思うなら店は潰れるし、生涯かけて払うとしても払いきれなかったら店は差し押さえだ。いいところなんてない。だからここで逢瀬するぐらいがちょうどいい。
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