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幽霊船
夜の闇が濃かった。波は物音一つ立てず、静かだった。ところどころちぎれた船の帆が、冷たい風に吹かれて時折物音をたてている。
気づいたら、俺は幽霊船に乗っていたんだ。
俺は勇者として異世界に転生した。そこで魔王を倒す旅を続けている時、この幽霊船の話を聞いたことがある。
なんの前触れもなく不気味な船の上に飛ばされるんだと。その町でも伝説じみた感じで本気にするような話じゃないと思っていたが、今この幽霊船にいるといことはそういうことだろう。話によれば、この幽霊船はあの世とこの世が繋がっている場所なんだとか。
そしてそこには、その人にとって大事な人がいるんだという。
その話を聞いた時、真っ先に俺の頭をよぎったのは、転生されてまもない頃に出会った剣使いのラフィだった。ポニーテールで縛った紫色の髪、普段は大人びて見えるのに、笑うとすっごくあどけないところまで、鮮明に思い出せる。
ラフィは、転生して間もない頃、剣の技術を俺に教えてくれた、大事な仲間だった。俺が勇者で、魔王討伐の旅をすると知った時は、危険なことをわかっているはずなのに、迷う素振りもなく、私も行くと言ってくれた。それが、その時の俺にはどんなに嬉しかったか、、、。
でも、今は、その時ラフィを連れていく決断をした自分が、酷く憎い。
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