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古びた船の上を歩く度、床に使われている木がギィときしんだ。
ふうと息を吐いて自分をなだめる。もう今更どうしようもない事だった。
それにしても、ここはどこなのだろう。
幽霊船に来てからしばらく経つが、一向に夜が明けない。腹もすかなければ、喉もかわかない。
異世界で使えていたスキルも、試したが使えなくなっていた。
少なくとも今分かっていることは、俺はこれから、この幽霊船の「主」と対峙する必要がある、ということだ。幽霊船には、そこにいざなわれた人以外に、どこかに、「主」なるものがいるのだという。
さっきから幽霊船内を探しているが、一向に見つからない。
こんな暗い場所に一人でいるせいか、やはり、制しても制しても、暗い考えばかりが頭に浮かぶ。
異世界は好きじゃない。勇者をやってもう3年になるが、ラフィのことがあってからは、俺はずっと一人だった。もう誰も、目の前で失いたくはなかった。というか、人望もあったラフィを見殺しにした男と、だれが一緒に旅をしたいかという話だが。
ふと足が止まった。そこは、広めの操縦室だった。床の部分に錆びた鉄製の取っ手がついていた。あけてみると、木製の古びた梯子がある。下は暗くてよく見えない。
地下へつながっているのだろうか。そこに主がいるのだろうか。しかし、嫌な予感がした。背筋には冷たい汗が染みついている。。ドクンドクンと脈打つ、心臓。今でもはっきりと思い出せる、あの時のこと。
暗闇の中にカラカラと響く乾いた骸骨の音と、ラフィの悲鳴、もう思い出したくもないのに、こびりついて離れない。ガガガガガガとうなり声が脳内にこだまする。関係ない、今は、俺はこの幽霊船から出て、魔王を倒す使命を全うするのだ。おれは、恐怖をかみ殺して、はしごに足をかける。
暗闇の中で、はしごが不気味にきしみつづけた。
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