エピローグ~2人の想い~

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エピローグ~2人の想い~

 延期になったスカイハイxバトル収録  ゲスト控え室 コン、コン控え室のドアを叩く。 ゲスト「はーい。」 戸葉「お疲れ様です。」 ゲスト「あっ、戸葉君、調子はどう?」 戸葉「はい、もうすっかり調子は元に戻りました。先週は、僕の都合で延期してしまって申し訳けございませんでした。」ゲストさんに深々と頭を下げる。 ゲスト「気にしなくて良いよ、あんな事があったら、調子も悪くなるって。でも、今日は、手加減無しでガンガン行って、スカイハイグループ倒すからね。」 戸葉「お手柔らかにお願いします、では、本番又よろしくお願いします。」 ゲスト「よろしくね。」   俺は、一礼してから控え室のドアを閉めた。  そう、俺は今、先週スカイハイバトルに出演予定だった、ゲストさんの控え室を訪れ、謝りに行ってる所だった。 (さすがに首疲れる)最後のゲストさんの控え室を後にし、メンバーが待つ控え室へと向かう。  スカイハイメンバー控え室  「お疲れ様です。」っと俺が控え室ドアを開けるとメンバー全員が揃っていた。  「お疲れ、戸葉君、出演者に先週の事謝ってきたのか?」っと沢本君が聞く。  「ちゃんと謝って来ましたよ。」  「お疲れ様、圭ちゃん。」っと麻宮君が言う。  「これで、今日は、思う存分戦えそうだな。あっ、そういえば、ずっと気になってる事あるんだけど、戸葉君には、余計なお世話かも知れないけど、言って良い?」っと秀ちゃんが聞く。  「なあに?秀ちゃん。」  「戸葉君さあ、今居る部屋に、今の彼女を連れて行けるの?確かに、横田さんとは、何も無かったとはいえ、彼女以外の女性と2人きりになった部屋に、招待するのは、どうかと。」っと秀ちゃんが言う。  「秀ちゃん、それ俺も実はどうしようか考えてて、引っ越しするにも、部屋探す時間無いし、それに今居る所、立地条件が良いから住んでるし、悩んでたんだよ。」  「戸葉君住んでるマンションって今、他の部屋空いてないの?管理人さんに事情を適当に言って、移動させてもらったら、どうよ。」  「秀ちゃん、その手があったか、さすがです。」  「秀ちゃん、もしかして、その手で、もう1部屋借りて、彼女以外の女性連れ込んでたりして」っと沢本君が言う。  「はぁ?俺そんな事しないよ、俺は、彼女一筋なんだから。」っと秀ちゃんが反発する。  「そうだよな。悪かったな、変な事言って。」っと沢本君が謝る。  (沢本君は、たまにドキッとすることを言うよな。)  そんな、秀ちゃんと沢本君の会話を聞いてると、スマホからメールが入って来た。  (あっ、注文した物届いたみたい、意外と早かったな)嬉しそうに俺がメールを見てると  「何見てるの?圭ちゃん。」っと麻宮君が聞く。  「うん。ネットで注文した物届いたみたいで今日、帰りコンビニに取りに行こうと思って。」  「何買ったの?圭ちゃん。」っと麻宮君が聞く。  「これだよ。」っと画面を見せる。  「それ、彼女に?」っと麻宮君が  「うん、なかなか一緒に居られないから、こうゆうのも良いかな?っと思って。」  「うん。良いんじゃない。お互いにイニシャルが入って、女性ってこうゆうの好きだし、やっぱり圭ちゃんセンス良いよ。彼女さん喜ぶと思うよ。」 「何、何っ」と沢本君が覗きこんできた。 「沢本君には、見せない。」っと画面を伏せた。  「なんだよ、戸葉君冷たいなぁ、何もしかして俺が戸葉君に当たって砕けろって言ったの、まだ怒ってるの」っと沢本君が言う。  「そんな事、怒ってないよ。」  「そういえば、圭ちゃん、もし、部屋移る時、何か手伝える事あったら言って、俺手伝いに行くから。」っと麻宮君が言う。 「ありがとう麻宮君、その時は宜しくな。」っと俺が言うと 「俺も暇だったら手伝いに行ってやるよ。」っと沢本君も言う。 「沢本君は、忙しいから無理でしょ。」っと俺が言うと 「良く分かったな。」っと沢本君が言う。 「絶対、手伝う気無かったな。」っと俺が呟く。 「スカイハイの皆さん、セットが完了しましたので、スタジオに来て下さい。」っとスタッフが声を掛ける。  「おっしゃ、では、今日も暴れまくりましょってリーダー居る?さっきから声しないんだけど。」っと秀ちゃんが聞く。  「居るよ。秀ちゃん。」っとリーダーが返事をする。  「あっ、居たな、では、リーダー宜しく。」っと秀ちゃんが言い、  「今日も皆さんでゲストさんを倒しましょう。」っとリーダーが言うと、 全員で「おう。」っと返事をする。  メンバーは、揃ってスタジオに向かう。 11月最初の週末の朝、美穂の家 今日は、朝から大掃除、お母さんは、キッチン周りの掃除と片付け、お父さんは、リビング周りの片付け、そして、私は、2階の自分の部屋の片付けと掃除をしている。まるで1ヶ月早い大掃除をしていたのは、そう、今日、夕方、圭介君がご挨拶に来るからなのです。  「ねぇ、美穂今日戸葉君、午前中は、仕事なのよね?」  「うん。今朝ラインで、そう言ってたよ。仕事終わったら、又ラインするって。」  「戸葉君、電車で来るんだよね?」  「うん。お父さんとお酒飲みたいからって電車で来るみたいだから、私が駅まで迎えに行くよ。」  「そう、なんかお母さん今日朝からドキドキしっぱなしだよ。」  「まだ、時間あるんだから、落ち着きなよって、お父さん、新聞逆さまだよ。」片付け終わったかな?っとリビングを見た、お父さんまでが落ち着きが無いみたい。  「ごほっん」っと咳払いして、元に戻して、新聞を読み始めた。  「美穂と違って、生戸葉君初めてだから緊張するわよ」  「そうだよね、私だって家に来るって事で緊張してるんだから。」変な緊張感のある空気が漂いながら、私は、2階の自分の部屋に戻る。  お昼を久しぶりに3人で軽く食べ、自分の部屋に戻ると、携帯にラインが入ってた。 (あっ、圭介君からだ。)  「美穂、お仕事終わったから、今から自宅戻って、支度して、美穂の家に向かうね。早く美穂に逢いたいなぁ。」 (もう、圭介君ったら、嬉しいなぁ)  「圭介君、お仕事お疲れ様。駅に着く時間分かったら、又ラインしてね。私も圭介君に逢えるのを楽しみにしてるね。」 (圭介君に逢えるのは、良いけど、緊張してきたな、あっ、服何着て行こう?)    その後、圭介君から、再度ラインが来て、夕方4時近くに駅に着くみたいで、楽しみにしてる、親友の里穂にもラインをした。  「里穂、こんにちは。戸葉君、夕方4時過ぎには来るみたいだよ。」  すぐに返事がピコーンと来て  「いよいよだね、美穂。私も生戸葉君に逢えるのを楽しみにしてるよ。」 っと返ってきた。  時間も近づいて来て、下に降り、リビングにお父さんと一緒に居た、お母さんに、  「お母さん、戸葉君、そろそろ来るから、迎えに行くね。」っと伝える。  「分かったわ、気をつけていってらっしゃい。」  「いってきます。」  車に乗り、駅へと向かい、いつものコインパーキングに停め、駅構内の待ち合い室に向かう。 (そろそろ、電車来るな、この電車に乗ってるのかな?)駅の改札口の方を向く。  電車がホームに入り、圭介君らしき、帽子とマスクをした男性が、 (今日は、ブラウスにパンツスタイル、圭介君って何着ても格好いい)っと彼女バカみたいな事を思ってると、私に気付き近づいて来た。  「圭介君」って笑顔で声を掛けると、改札口を通り、私の方に来て  「美穂、逢いたかった。」っとまさかのハグをした。  「ちょっと、圭介君、誰かに見られたら大変だよ。」慌てる私に、  「大丈夫、大丈夫誰も見てないから。」っと全然平気に言う。  「もう、圭介君ったら。」呆れて言う。私から離れ、恋人繋ぎをし、コインパーキングに向かう。  「美穂、いつもの所に車停めたの?小銭ある?」  「今日は、ちゃんと持ってきましたよ、この間の分返す?」  「いーよ、あれは、美穂にあげたんだから。」  そんな話しをしながら、車に乗ると、助手席に乗り、マスクを外して、私の手に手を置いて、  「俺、美穂に逢えて嬉しい」っといい、  「私も嬉しいよ」っと返すと、そのままキスをした。  コインパーキングを出て、車を走らせる。  「ねぇ、美穂家ってここから何分位の所にあるの?」  「10分位だから、頑張れば、徒歩でも行ける距離だよ。」  「ふーん、比較的近いんだね。」  私家が見えて来た、家の前には、里穂の車が。 (もう、里穂来てるんだな。)そう思い。  「圭介君、ここ私家だよ。」っと言う。  「本当、車だと近いねって誰か来てるの?」家の前に停めてあった車を見て言う。  「親友の里穂だよ」っと言いながら、バックで、お父さんの車の横に停めるっと、私の車の音に気づいた、里穂が、家から出て来て  「美穂、おかえり。」  「ただいま、里穂、もう来てたの?」  「それは、そうでしょ、生戸葉君に会えるんだから。」そんな会話してると、助手席から圭介君が出て来た。すかさず、里穂が  「初めまして、私美穂の親友の田村里穂って言います。気軽に里穂って呼んでいいですから。」っと圭介君にお辞儀をすると。  「初めまして、戸葉圭介です。美穂から里穂ちゃんの事を聞いてたから、お会い出来て嬉しいよ。」っと笑顔で返すと、里穂は、私を揺すりながら、  「美穂、戸葉君、格好良すぎでしょ、いいなぁ。」  「ちょっと、里穂、興奮し過ぎ。」  「それで、さっそくなんだけど、戸葉君、私スカイハイの麻宮君が推しメンなんだけど、今度サイン貰って良いかな?」  「えっ?」里穂のまさかの言葉にびっくりして、  「何言ってるの?里穂、圭介君に失礼でしょ」っと言うと。  「だって、親友がスカイハイの戸葉君と付き合ってたら言うでしょ。」  「だからって、初対面でそんな事」っと私が言うと、圭介君が。  「良いよ、里穂ちゃん、今度、麻宮君に頼んでおくから。」っと笑顔で言うと。  「戸葉君、優し過ぎ、普通、そこは、美穂の友達っていきなりそんな事言って失礼だなっと怒る所でしょ。」っと里穂が言う。  「えっ?」私は、分けが分からず驚いていると、圭介君が、  「怒らないよ、俺、俺がスカイハイのメンバーって知って付き合ってくる女性とか居たし、そうゆう事を平気で言ってくる人見てるから、里穂ちゃんは、その人達と言い方が違う、まるで俺を試すような言い方だったし、それに。」圭介君は、私の方を見て、  「美穂が大事にしてる親友だから、里穂ちゃんが悪い娘じゃないのは、分かるから。」っと言うと、  「あー、あー、さすが、戸葉君だわ、確かに戸葉君歳上だから、色々な女性と付き合ってるから分かっちゃうのよね、試すような事言って申し訳ございませんでした。」っと里穂が圭介君に頭を下げる。それを見た私は、  「里穂、何考えてるのよ、初対面で圭介君を試すような事をして。」っと少し強く言う。  「だって、美穂、私は、美穂と違って、スカイハイの戸葉君しか知らないのよ、テレビの中でニコニコして穏やかな戸葉君とコンサートでは、ファンに愛想振り撒いてる戸葉君しか知らないのよ、素の戸葉君が実際どんな性格の男の人かは、知らないんだから。」   「だからって、初対面でする事じゃないでしょ?それに圭介君の事は、友達付き合いしてる時に、ちゃんと報告してたでしょ。圭介君がどんな性格か知った上で、付き合いを後押ししてたんじゃないの?」  「美穂、甘いわね、男なんて、友達付き合いしてる時には、良い顔してても、いざ彼女になったら、豹変するのは、美穂も身をもって分かってるはずでしょ。」 「うっ。」(確かに、圭介君私と付き合い始めてから豹変したかも、接近率が高くなった事は、悪い事じゃないけど。)私が何も言わず黙ってると、  「美穂は、男運悪いんだから、戸葉君だって例外じゃないでしょ。」  「圭介君を前の最低男と一緒にしないでよ。」っと私が言うと、ずっと黙って聞いてた圭介君が、  「美穂、里穂ちゃんを責めないで、俺の軽はずみな行動で週刊誌に載って、美穂を悲しませた事は、事実だし、その事で里穂ちゃんは、美穂の事を心配してるんだから。」そう私に言うと、里穂は、はぁーっとため息をついて。  「本当に戸葉君は、美穂の事が好きなんだよね?」っと改めて聞く。  「ええ、もちろん、好きですよ。」っと正直に答える。  「これは、本物だな。」っと1人事のように呟き、  「戸葉君、私の大事な美穂をどうぞ宜しくお願いします。今度泣かせたら、承知しないからね。」っと半分諦め声で言う。  「もちろん、美穂の事は、大事にさせて頂きますよ、里穂ちゃん。」  「じゃあ、私帰るわ、おじさん、おばさん家で待ってるし、あー、あー、女の友情も本気で惚れた男には、かなわないよね。」っと言いながら車に向かう。  「ちょっと、里穂、本人が居る前でそんな恥ずかしい事言わないでよ。」っと言うと、   (本気で惚れた男って、美穂、俺嬉しすぎる)っと赤面してる圭介君を見ないふりして、  「でも、本当の事でしょ。でも、安心したわ、素の戸葉君も良い人で。美穂も大事にしなよ。」っと優しい顔で言う。  「うん。なんかさっきは、ごめん。強く言い過ぎた。」  「はい、はい、いつもの事だから、分かってるよ、あっ、そうそう、戸葉君、美穂のお父さんは、てごわいからね。」  「えっ。」っと圭介君が驚いた声を出す。  「ちょっと、里穂、圭介君に変なプレッシャー与えないでよ。」  「あはは、ごめん、ごめん、じゃあね、美穂今度は、のろけ話し聞かせてね。」っと車に乗ろうとすると、圭介君が   「里穂ちゃん、今回迷惑かけたお詫びに、麻宮君のサイン貰っておくから。」っと言う。  「ありがとう。戸葉君。」っと運転席に乗り手を振り、車を走らせた。  里穂を見送り、圭介君に  「ごめんね、里穂が失礼な事ばっかり言って嫌な思いしたでしょう?」っと謝ると、  「ううん、なんか俺の事で美穂が怒ってくれて、嬉しかったよ。でも俺、友達多いけど、真剣に叱って心配してくれる友達っていないから、美穂が羨ましいよ。美穂、これからも里穂ちゃんと仲良くしてね。」っと言われ、  「うん。」っと素直に頷いた。  「それにしても、美穂の前の男ってどんな男だったの?」  「聞かないで、思いだしたくもない、最低男だから。」っと言い、玄関のドアを開ける。   「ただいま、お母さん、戸葉君連れて来たよ。」  「おかえり。美穂、初めまして、戸葉君。美穂の母です。美穂がいつもお世話になってます。」っと頭を下げる。 (ん?お母さん、いつもより厚化粧な気が?気合い入り過ぎ)っと思ってると、圭介君が、  「初めまして、戸葉圭介です。これ、僕の地元の名産のお菓子です。皆さんでどうぞ。」っと持ってた、紙袋を渡した。  「わざわざ、ありがとうございます。さあ、どうぞ、上がって。」スリッパを出す。  「ありがとうございます。」スリッパを履き上がる。  「あっ、美穂、里穂ちゃんとお話したの?」  「ちょっと、お母さん聞いてよ、里穂ったら、圭介君を試すような事を言って、困らせてたんだから。」っと言うと、  「うん。だって、里穂ちゃん言ってたわよ、美穂を泣かした罪は大きい、戸葉君に意地悪してやるって。」  「もう、里穂ったら、何考えてるのよ。」  「本当に、美穂と里穂ちゃんって仲良いんですね、おばさん。」  「それは、そうよ、戸葉君、小さい頃一緒だし、私も里穂ちゃんは、家族みたいな者だからね。あっ、美穂、手洗いに、戸葉君洗面所に案内して。」  「うん。圭介君こっち。」っと私がキッチンの前を通ると、お母さんが、  「ちょっと、お父さん、戸葉君来たわよ、挨拶して。」キッチンのダイイニンクテーブルの椅子に座ってた、お父さんに  「初めまして、戸葉圭介です。」っと頭を下げると、お父さんは、椅子から立ち上がり  「初めまして、美穂の父だ。」っと仏頂面に挨拶をした。私と圭介君は、洗面所に向かう。  「なぁ、お母さん、戸葉君、テレビよりもかっこよく無いか、本当に美穂の彼氏なのか、なんか騙されてないか?」  「本当に、戸葉君ってテレビで見るよりかっこいいわね、びっくりしちゃった。でも娘が選んだ彼氏なんだから。間違いないわよ。」  私は、圭介君と洗面所で手洗い中  「なあ、美穂家って、いつも外から帰って来たら、手洗いの習慣があるの?」  「うん。ほら、私中2の頃、重い肺炎にかかってからは、風邪ひくと、肺炎にかかりやすいからって言われてからは、家に帰ってからは、手洗いうがいが習慣になったのよ。」 (あれ?圭介君、袖捲らないで大丈夫かな)  「そういえば、俺もまだスカイハイに入ったばかりの頃に、重い肺の病気にかかってからは、医師に手洗いうがいはするように言われたな。」っと手を洗い言う。  「はい、どうぞ、圭介君も肺の病気になった事あったんだね、でも、今は、大丈夫だよね?」タオルを渡しながら聞く。  「ありがとう。今は、肺に負担かからないように、色々な人のアドバイスや呼吸法を学んで、日常生活もダンスも普通に出来るようになったんだよ」っとそんな話しをしながら、キッチンへ行く。  キッチンへ行くと、ダイイニンクテーブルにホットプレートがあり、お父さんの前には、いつもより値段の高いビールが。  「戸葉君、どうぞ、そこ座って。」っと私の席の横を座る。  「お仕事終わりだから、お腹空いたでしょ、戸葉君。色々お話あると思うけど、まずは、ご飯にしましょう。美穂、戸葉君にお皿出して。」  「はーい。」食器棚から、焼き肉専用の皿を出して、テーブルに並べる。  「戸葉君、タレ好きなの使って。」お母さんが言い、  「はい、ありがとうございます。美穂はどれ?」  「私これと、お母さん、タン塩買って来たよね?」  「あるから、大丈夫よ、美穂、焼き始めて。」  「はーい。」私は、トングを持ちお肉を焼き始めると、圭介君の前に居た、お父さんがビールを勧めた。  「ありがとうございます。」っとグラスを傾け、圭介君もお父さんにビールを注いだ。  それを見たお母さんが、  「美穂は、お母さんと一緒のウーロン茶で良いよね。」っとグラスを渡す。  「うん。良いよ。」ウーロン茶を注ぐ。  「美穂、お母さんは、お酒飲め無いの?」  「ううん、まったくでは無いよね、お母さん。」  「そうね、多少は、飲めるけど、今は、ほとんど飲まないわね。」  「じいじが酒豪過ぎて、お母さん嫌になっちゃったんでしょうね。」  「そうね、子供の頃から、お父さんお酒ばっかり飲んでたからね。」そんな話しをしてると、肉が焼けてきた。  「圭介君、お肉焼けてきたよ、お父さんも。」  「頂きます。」っと圭介君が先に頂く。  「うん。美味しい。」  「あら、本当?良かったわ、たくさんあるから、いっぱい食べてね。」   「ありがとうございます。」  「ねぇ、お母さん、この肉近所のお肉屋さんで買って来たの?」  「そうよ、美穂、塊で買った方が安いし、今日、娘が彼氏連れて来るって行ったら、おまけしてくれたしね。」   「又、お母さんったら、余計な事を。」  「商店街って良いですよね、俺の地元も下町みたいな所で、今日持って来た菓子も、俺が良く子供の頃行ってた、古くからやってる老舗菓子店で、彼女の所のご両親にご挨拶に行くって行ったら、お勧めのお菓子詰めてくれたので、間違いないっと思いますよ。」  「あら、本当に、美穂楽しみね。」そんな会話を和気あいあいと話してるのに、お父さんは、一言も喋らず、お肉とビールを飲み食いしていた。そんな様子をため息つきながら、私が見てたのを、お母さんが気付き、  「お父さん、戸葉君に何か聞きたい事あったんじゃないの?」っと助け船を出した。  「うむ、大した事じゃないが、戸葉君は、いくつから芸能界に入ってるんだ。」やっとお父さんが喋った。その問いに圭介君は、  「俺は、10代の頃からですね。」  「他にやりたい事は無かったのか?」  「ありましたよ、ただ俺の姉が勝手に今の事務所のオーディションに応募してしまって、何故か、あっさりっと合格してしまったので、最初は、嫌々やってた頃もありましたが、スカイハイが結成された頃には、この仕事も楽しくて、今も続けている感じなんです。」 (その話しは、確か里穂に聞いたな私も)  「そうか。」お父さんが納得した感じで頷いた。それからは、又お父さんは、喋らなくなり、私とお母さんと圭介君で楽しくお話しをし、気がつけば、だいぶお腹が一杯になった私は、絞めにいつもの  「お母さん、ご飯と韓国海苔ある?」  「はい、はい、あるわよ」っとご飯を渡す、それに私は、韓国海苔とタレを付けたお肉を乗せる。それを横で見てた圭介君は、  「美穂、それ、美味しそう。」っと言うとお母さんが  「戸葉君、ビールの後だけど、ご飯食べるの?」っと聞く。  「はい。俺ビール後でも食べますけど、ご飯あります?」  「やっぱり、若い人は違うわね、お父さんなんて、ビール後は、ご飯食べないから、はい。戸葉君」っとお茶碗を渡す。  「ありがとうございます。美穂、韓国海苔ちょうだい。」  「はい。どうぞ。」っと韓国海苔を渡す。  「いただきます。あっ、美味しいね、この組み合わせ良いかも。」  「でしょ。いつも焼き肉の最後は、これだから。」っとそんな感じで、焼き肉夕飯が終わり、片付けをお母さんと一緒に、お父さんは、リビングに、圭介君も一緒に片付けを手伝ってると、  「美穂、ここは、もう良いから、戸葉君と美穂の部屋に行って良いわよ。」  「うん。あっ、お母さん、圭介君に今日の為に買ったコーヒー豆あるけど、入れられる?」  「任せなさい。今日は、お母さんが戸葉君の為に美味しいコーヒー入れるわよ。」  「じゃあ、お願いね、圭介君、2階の私の部屋行こう」っと言い、圭介君と一緒に階段を上がる、ふと、リビングを見ると、飲み過ぎたのか、お父さんが横になっていた。  2階へ上がり、私の部屋へ  「どうぞ、圭介君、適当に座って。」っと言うと、何故かキョロキョロしてた。  「どうしたの?圭介君。」  「うん。女性の部屋って久しぶりだから、なんか落ちつかなくて。」   「そうなんだ。とりあえず、座ったら。」っと私が言うと、ベットを背に座る。  「そういえば、美穂、左腕治った?」  「うん。もう大丈夫だよ、ハンカチ返すね」私は、左腕を見せ言う。  「ううん、俺が美穂が傷つけた事を忘れない為にも、美穂が持ってて。」  「そんなに、深刻になる事でも無いのに、じゃあ、お預かりしときますね。」  「うん。美穂、渡したい物があるんだけど。」っとポケットから小さな紙袋を取り出した。  「何?これ?」っと私は、受け取った紙袋を見る。  「開けてみて」っと言われ、中には、皮の編み込み模様のブレスレットに銀のチャームには英語のKが。  「これって、もしかして。」  「そう。これ俺のイニシャルのKだよ、ちなみに俺は、美穂のイニシャルのMのブレスレットをしているんだ。」っと右腕を見せる。(だから、さっき手洗う時、袖捲らなかったのね)っと私が思ってると、  「いつも、一緒に居る事が出来ないから、このブレスレットを俺だと思って欲しくて。」(あれ?美穂、無反応、駄目だったか)っと思ってたら、ブレスレットをじーっと見て、  「嬉しい、圭介君とお揃いのブレスレット、それもイニシャル入りなんて嬉しすぎる、なんかカップルみたいだよ。」  (ん?美穂待て、俺達、恋人同士だよな、やっぱりまだ自覚無いんだな、美穂は)嬉しそうに、利き腕にブレスレットを付ける美穂を見て、  「美穂は、俺の彼女だよ。」っと美穂の顔を見て言うと、少し照れて  「うん。」っと頷いた。そんな美穂を見て  「俺がいないからって、他の男について行くなよ。」っと冗談まじりで言うと  「圭介君より中身も外見も良い男の人なんていないから大丈夫だよ。」って笑顔で言うから、(美穂って嬉しすぎだよ)っと思い、思わず抱きしめ、  「美穂、ありがとう。」っと言った。そんな良い雰囲気の中、コン、コンっとドアを叩く音が聞こえ、圭介君は、バッと私から離れた。  「美穂、戸葉君入って良い?コーヒー持って来たわよ。」っとお母さんだった。  「はーい、今開けるよ」ってドアを開け、コーヒーを受けとる。  「ありがとう、お母さん。」  「うん、戸葉君が持って来たお菓子もあるから、食べてね。それと、お父さん、1時間後には、起きると思うから、お話しがあるならその時にね、戸葉君。それまで、美穂とゆっくりしててね」  「はい。分かりました。ありがとうございます。」圭介君が言う。  「じゃあ、ごゆっくり。」っとお母さんが部屋から出て行く。  「圭介君、このコーヒー、今日の為に買ったコーヒーなの、飲んでみて。」っと言う。  「うん、いただきます。美穂。」っとコーヒーを口に運ぶと  「おっ、なんかすっきりして、美味しいね、このコーヒー。」っと驚きながら言う。  「でしょう、焼き肉とか、こってりした食べ物の後には、良いでしょ、いつも行くコーヒー豆専門店で、すっきりしたコーヒー豆聞いたら、これ勧められたの、味見したら、美味しかったから、圭介君にも飲んでもらおうっと思って。」っと嬉しそうに話すと、  「美味しい、俺気にいったよ。」っと言ってくれて、  「じゃあ、私は、圭介君のお土産のお菓子いただきます。」っとお菓子を手に取り食べる。  「あっ、美味しい、甘さ控えめでちょうど良い。」っと言うと  「良かった、美穂美味しいって言ってくれて、俺も子供の頃は、良く食べてたんだよ、懐かしい味だよ。」圭介君もお菓子を食べしみじみと言った。  「そういえば、美穂、机に写真がいっぱい並べてあるけど、なんで1つだけ、何も入ってない写真立てがあるの?」っとベットの脇の勉強用机を見て言う。  「それね、里穂がゴールデンウィークに九州に、旅行行った時のお土産で、里穂ったら、戸葉君の写真でも入れなさいって渡すだもん。」っと写真立てを見ながら言う。  「じゃあ、美穂、俺と初デートした時に写真撮って入れよう、俺も美穂との写真部屋に置くから。」っと笑顔で言ってくれた、圭介君に、私も  「うん、ありがとう。」っと笑顔で返した。 そんな、のんびりした1時間を過ごしてた。  「じゃあ、圭介君そろそろ、お父さんの所行きますか。」  「うー、その前に、美穂、俺に勇気を与えて」っとキスをした。  「よし、じゃあ、行きますか。」っと私と圭介君は、1階のリビングに居た、お父さんの所に、お父さんは、最近はまり始めた、ゴルフの雑誌を見ていた。 私は、圭介君の顔を見た、私を見て頷いたので、  「お父さん、戸葉君がお話しがあるって。」っと話しかけた。  「なんだ。美穂。」読んでた、ゴルフ雑誌を下ろした。私と圭介君は、正座をして、お父さんに向き合った。そして、圭介君が、  「お父さん、この度は、僕の軽率な行動によって、週刊誌に載った事で、娘の美穂さん、ならびにご両親に、多大な迷惑と心配をかけて、申し訳けございませんでした。」正座をしたまま、頭を下げる。  「これからは、このような事が無いように身を引き締めて、行動しますので、娘の美穂さんとの交際を認めて下さい。」っと頭を下げる圭介君。しばらくの沈黙の後。お父さんが、  「戸葉君、娘の美穂に精神疾患があるのは、知っているのか?」  「はい、知っています。」  「美穂には、私達、親の不仲のせいで、心の傷を背負う事になってしまい、大変申し訳なく思っている、今親として出来る事は、娘の幸せを願う事だ。だから、美穂には、きちんと規則正しいお仕事を持った男性とのお付き合いを望んでいる。」  「お父さん。」私は、初めて聞くお父さんの本音に胸が熱くなった。  「お母さんに、聞いたがスカイハイのグループは、ツアーやコンサートがあり、美穂と会う時間は取れないし、何かあっても側に居てやる事も出来ない、それでも、美穂を悲しませないと言う自信はあるのか、戸葉君。」  「あります。もちろん絶対とは、言いませんが、俺、あの週刊誌の事件の時、美穂と連絡が取れない時、分かったんです。俺には、美穂が側に居ないと駄目なんだって、会えなくても、美穂と連絡が無いと、俺が駄目なんです、その位、美穂の存在は、大きいんです。だから、どんなに会えなくても、連絡は、毎日取るつもりです。俺が今の仕事を頑張れるのは、美穂が居るからなんですから。」っと隣の私を見ながら話す圭介君に、私は、嬉しすぎて、涙が出てきそうになった。 それを聞いたお父さんが美穂に、  「美穂、お前は、本当に戸葉君で良いのか?芸能人っと付き合う事は、苦労もある、ちゃんと、その覚悟はあるのか?」  「あります。圭介君が私を必要としてくれるなら、私は、圭介君の側に居たい。確かに好きと言う気持ちだけでは、超えられない事も辛い事もあるかもしれない。それでも、圭介君と一緒に乗りきっていきたいと思う。」私の力強い言葉に、お父さんは、  「そうか、美穂がそこまで言うのなら、認めよう。但し、今回みたいな、美穂を泣かせるような行為をした場合は、2度と美穂に会えない事を覚悟して、付き合え。良いな戸葉君。娘のあんな姿は、親として見たくないからな。」  「お父さん。ありがとう。」私は、完全に涙目になってお父さんを見た。  「ありがとうございます。」っと圭介君が言うと。  「それと、戸葉君、君にお父さんと呼ばれるのは、100年早い、良いか、お母さんの事も絶対、お母さんと呼ぶな。」  「すいません。」っと平謝りする圭介君に、お母さん来て、    「何、お父さん、娘の彼氏に焼きもち焼いてるの?美穂良かったね。」  「うるさい、お母さん、お茶入れ直してくれ。」  「はい、はい、まったくもう。」っとキッチンに行くお母さんっと隣を見ると、圭介君の様子がおかしい?  「圭介君、どうしたの?」聞くと、  「み、美穂、足が痺れた。」っと倒れた。  「えー、圭介君大丈夫?座布団っと」私は、直ぐ立ち上がる。  「情けないな、戸葉君、少しは、美穂を見習え、佐川家の娘を貰う気なら、正座位まともに出来るようにしろ、美穂ちゃんと、しつけとけ。」っとお父さんに言われ、  「すみません、美穂、足全然大丈夫なの?」っと声が変なまま聞く。  「私は、じいじにしつけられてるから平気よ、はい、座布団上に足乗っけて、少しは、楽になるから。」  「ありがとう、美穂、痺れて痛い。」  「まったく、あんなアクロバティックなダンスをしてると思えんな、情けない。」  「ん?お父さんスカイハイの歌番組観てるの?」  「なっ、わけないだろう、お母さんが観てるから、仕方なく観てるだけだ。」  「また、お父さんったら、なんだかだん言って私が観てると、釘づけで観てるくせに。」  「余計な事言うな。部屋に戻る。あっ、戸葉君、お土産のお菓子美味しかった。君のご両親に会う事があったら、宜しく伝えておいてくれ。」  「ありがとうございます。」ようやく声が戻った圭介君が嬉しそうに言う。  「娘は、つまらん。直ぐに好きな男の事ばかりになる。」そう、ぼやくお父さんに、  「おじさん、俺で良かったら、又一緒にお酒飲みましょう。付き合いますので。」っと圭介君が言うと  「そうか、楽しみにしてる。」っとどこか嬉しそうにお父さんが言い、部屋と戻る。  「お父さん、お茶、お茶。」っとお母さんが後に続いて入ってく。  その様子を見てから、私は、圭介君に、  「圭介君、ありがとう、お父さんの事。」と言うと  「俺の方こそ、ありがとう。美穂の気持ち嬉しかった。」  「ううん、私、圭介君を好きになった時から、ちゃんと覚悟は、出来てるから。」  「うん。でも俺、絶対美穂には、苦労なんてかけないから。だから、これからも一緒にいような。」  「うん。ありがとう。圭介君。」っと見つめ合ってるとっと隣の部屋から、  「あの、美穂良い雰囲気の所悪いんだけど、時間大丈夫?」っとお母さんが。時計を見ると夜7時過ぎていた。  「そろそろ、圭介君送らないと駄目だね。」っと言うと、  「そうでしょう。」っとお母さんが部屋から出て来た。  「圭介君、足大丈夫?」  「なんとか、大丈夫そう。」っと立ち上がる。  「そう。良かった、じゃあ帰れるね。」っと言い。  「お父さん、戸葉君帰るよ。」っと部屋に声を掛ける。  「そうか、戸葉君帰るのか。」っと部屋から出て来た。  お母さんとお父さんは、玄関で、戸葉君を見送る。  「今日は、どうもご馳走様でした。お肉美味しかったです。」っと圭介君。  「いえ、今日は、戸葉君とお話ししながら食事出来てとても楽しかったわ。お菓子ご馳走様。」っとお母さん。  「帰り気をつけて帰るんだよ。戸葉君。」っとお父さん。  「ありがとうございます、おじさん、おばさん、来年、正月過ぎになりますが、新年のご挨拶に伺いますので、その時、又、おじさんと一緒に飲みたいと思ってますので。」  「そうか、まっ、楽しみにしとる。戸葉君は、何でも飲めるのか?」  「はい、何でも飲めますよ。」  「お父さん、圭介君に、あんまり飲まさせ過ぎないでよ。」  「分かってるよ。」っとお父さん。  「では、失礼します。お邪魔しました。」っと圭介君が頭を下げる。  「じゃあ、私、圭介君送って行くね。」っと言うと。   「美穂、安全運転で行ってね。」  「はい、はい、行ってきます。」っと圭介君と玄関を出て、私の車に乗る。  エンジンをかけて、駅へと走りだす。  「はぁ、やっと緊張がとけた。疲れた。」っと圭介君が助手席で言う。  「圭介君、ご苦労様。」っと運転しながら言う。  駅に着くと、終電間際で、周辺は、空いていたので、駅のロータリーの車を停める場所に車を停めた。  「さすがに、終電近いから人少ないね。」っと私が言う。  「うん。今日は、ありがとう美穂。」  「こちらこそ、時間作って、私の両親に挨拶に来てくれて、本当にありがとう。一緒に焼き肉食べれて良かったよ。」  「うん。焼き肉凄く美味しかったよ。美穂、改めて、これからどうぞ宜しく。」  「うん。こちらこそ、宜しく。これ、休みの日しか着けられないけど、圭介君だと思って大事にするね」っとブレスレットを見せる。  「俺もプライベートしか着けられないけど、美穂だと思って大事にするよ。もちろん美穂も」っと言い、長いキスをする。  電車が来て、圭介君を改札口近くまで見送る。  「またな。美穂。」  「またね、圭介君。」手を振り、見送る。 私は、車へと戻る途中、空を見上げる。そこには、満天の星空が。  (無限に広がるこの空の下、圭介君に出逢えて、本当に良かった。)そう思い、車に乗り家と向かう。                  fin
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