番組収録当時

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番組収録当時

「里穂遅いなぁー、電車間に合わなくなるよ。」 何度も時計を見ながら待つ。 (電話してみようかな、時間忘れてるのかもしれないし、昨日メールで確認したら大丈夫だって言ってたのに、どうしたのかな?)  ちょっと不安になって電話をかけてみる。 「もしもし、里穂?」 「.....」 「里穂どうしたの?大丈夫?」 「....、美穂、ごめん。」 「えっ、どうしたの?」 「今日の為に、張り切って治そうと思って、色々試して、喉は、治ったけど、今度は、お腹が。」 「えっ、」 「さっきから、トイレ行ったり来たりで今もトイレの中、収録1時間は無理。」 「えー、そんな。」 「後で埋め合わせする、本当ごめん美穂。無念。」 ガチャ、一方的に電話を切られた。 「ちょっと、もしもし、里穂、里穂ー。」  はぁー、大きなため息をつく。 (どうしよう、当日ドタキャンなんてありえないよ。)  後ろで電車の音が聞こえた。 (あー、もう、仕方ない、だめもとでもう行くしかない。番組観覧は、無理でもせめて、河村さんに会って、じいじの話しが出来れば良しとしよう。)  そんな、軽い気持ちで電車に乗った。  この後、予想もつかない事が起こるとは、 想像もせず、電車は、東京へと向かった。  東京までは、おおよそ1時間で到着、そこから、テレビ局までバスで移動する。 (うん、けっこう遅い時間までバスありそう)  バス停により、時間を確認して、少し背伸びをする。 (さて、どうしようかな?まだ時間あるし、少しこの辺りを見てまわるかな)  私は、歩いて周辺を散策、雑貨屋を見たり、古本屋で本を見たり、カフェで軽食とったりと、ゆっくりとした時間を過ごして、バス停へと向かう。 (久しぶりの東京良いなぁー。空気感も地元と全然違って、新鮮に感じる。)  そんな事を思いながら、バスに乗ってテレビ局に向かう。  テレビ局に着くと、番組のジャンパーを着たスタッフが「どうぶつ学園」観覧者と書いてあるプラカードを持っていた。私もとりあえずその最後尾に並ぶ。 (それにしても、女性の観客多いなぁー、中には、戸葉って書いてあるうちわを持っている人も居る。思わずコンサートかって、1人つっこみしたくなる。)  「はい、観客の皆さん、中に入って下さい。」  ディレクターの人が誘導する。 (初めて、テレビ局に入った、芸能人になった気分)  わくわくしながら中に入る。 (観覧出来るか分からないけど、入れただけ満足かも)  「えー、皆さんには、スタジオに入ってもらう前に注意事項をいくつか言います。まず、皆さんのお目当ては、分かってますが、本番中にキャーキャーと黄色い声や名前を呼ばないように。」っとディレクターが言うと、 「えー、なんで、いいじゃねぇー。」  女性達のブーイングが飛んで、辺りがざわつき出す。それに動じずディレクターは、  「続いて、スタッフの出すカンペの指示通りきちんと行って下さい。」っと言うと、  「なんか、あのディレクター、偉そうだよね、誰のファンのお蔭で、番組続いてると思うだよね。」  女性のブーイングが聞こえた私は、思わず (それは、あなた達の身勝手な声を我慢強く聞いている。スタッフの人達の力で成り立っている)っとまた1人つっこみをしてしまった。  「それでは、2人1組で入ってもらいます。」っとディレクターが先導する。  チケットを、見せながら1組ずつ入って行く、私の番が来て、  「あれ?君1人?1人では入れないよ、連れは?」っと聞かれ  「すみません、一緒に来る予定の人、当日無理になって。」っと答えると、  「あっ、そう、じゃあ、帰って、はい、次の方。」っとまったく理由を聞かないディレクターに私は、  「あのー、どうしても会いたい人が居るんです、少しでもその人にお話させて頂けないでしょうか?」  そう言うと呆れ顔で私を見て  (また、戸葉君狙いの娘か、もう最近多いんだよね、勘弁して欲しいよなぁー)っとディレクターが思い  「はい、はい、駄目なものは、駄目なの帰って。」っと私を手で追い払う仕草をする。  「少しで良いんです。どうかお願いします。」っと頼むが  「警備員、この娘連れてって。」っと近くの警備員に言うと、  警備員が来て私の腕を掴む。  あまりにも、このディレクターの横暴な行動に腹がたった私は、思わず大きな声で、 「私、河村じゅんさんに会ってお話ししたい事があるんです!!」っと叫んでしまった。  その瞬間、周りの空気が止まった?って言うか、私の腕を掴んでた警備員の手も止まってる。  (なに、この娘、普通この位の歳の娘って、戸葉君狙いに来てるんだよね、なのに河村さんに会いに来たの?もしかして、年上好き??)っと思い、ディレクターも警備員も変な顔で見ている。  その時だった。 「なに、なに、うるさくて、ミーティング出来ないんだけど。」  河村さんが楽屋から顔を出した。  「あっ、すみません、この娘が。」っとディレクターが言うと、  私は、チャンスと思い、警備員の腕を振り払い、河村さんに近づく。  「あの、私前に、おじいちゃんと一緒の時、河村さんに会って、その時、おじいちゃんが今度一緒に飲もうって言って撮った写真なんですが、この番組もおじいちゃん好きで、観覧も一緒に行こうって言ってて、でもその前におじいちゃん亡くなって、今回どうしてもおじいちゃんが観たかったこの番組で河村さんを見たくて来たんです。」  思わず興奮してた私は、生麦生米生卵並みの早口言葉で、話してしまった。  ふと、後ろを見ると、戸葉君らしき人がこちらを心配そうに見ていた。  私は、さすがにひいてるだろうと思い、河村さんを見ると、私が出した写真を、じーっと見ていた。  そして一言 「あー、あの時の。」 「えっ、」 「いやー、なんかべっぴんさんになってたから、分からなかったよ。」  河村さんは、私に、何回もウィンクしてた。 (合わせろって事かな?) 「そうか、おじいちゃん亡くなったのか、風の噂では、聞いてたけど、一緒に来れなくて、残念だったね。今度、線香上げに行くからね。」 「あっ、はい、ありがとうございます。」  「あのー、河村さんお知り合いですか?」っとディレクターが聞く。 「そうだよ、俺の知り合いだよ。」っと河村さんが答える。  「でも、今日は、生放送だし、1人だと席の間隔とか色々考えないと。」っとディレクターが困った顔をしながら言う。  「なに、なに、ディレクターちゃん、俺の知り合いは、入れたくないんだ。」っと河村さんが言うと、  「いえ、そう言う事では、無いですけど。」っと困ってるディレクターを見て私は、もういいんですって言おうとしたら、仕方なさそうに私に  「君、こっちに来て。」  私をスタジオに案内した。それを見た河村さんは、何事も無かったように。 「さて、ミーティング再開するか。」っと言って、楽屋のドアを閉めた。  私は、その楽屋に一礼して、スタジオへと入った。   楽屋にて。  「ねぇ、河村さん、さっきの娘知り合いだったの?」っと戸葉君が聞く。  「いや、知らん。」っとそっけなく河村さんが言う。  ガターン、戸葉君は、椅子ごとこけた。  「戸葉ちゃん、そのこけ方は、まだまだだなぁー。」  椅子を元に戻し、座り直して。  「じゃあ、なんで、あんな事言ったの?」っと戸葉君が聞く。  「だって、あんなに必死になって頼んでるのに、可哀想だなぁーって思って。」 「それだけ?」っと戸葉君が聞くと、  少しニヤーっとした顔を戸葉君に向けて  「それに、俺に会いたいって言ったんだよ、今や観客は、ほぼ戸葉ちゃん狙いなのに、あんな若い娘が俺のファンって嬉しいでしょう、やっぱり、ファンは、大事にしないとね。」  「あのー、お言葉をはさんで、申し訳ないが、河村さん、今や人気急上昇中のスカイハイの戸葉君と張り合っても勝ち目無いと思うけど。」っと村瀬さんが呆れながら言う。  「あれ?ゆみちゃん、やきもちかな?俺が若い娘としゃべってたから。」っと河村さんが聞くと、  「なんで、私が河村さんにやきもちやかないといけないのよー。」っと怒りながら村瀬さんが河村さんに言う。  楽しそうに話す2人のやりとりを笑いながら見てた。戸葉君は、ふっと、さっき見えてた娘を思い出す。  (凄い迫力の娘だったなぁー、河村さんの気持ちを動かすなんて、なかなか居ないと思うよ。たぶん俺と変わらない歳なのに。)  「どうぶつ学園の皆さん、そろそろ本番入りますよ。」っとディレクターが声を掛ける。  「それでは、皆さん、今日は、1時間生放送気合い入れて頑張りましょう。」っと河村さんが声を掛けると  「はい!!」っと全員で言う。   スタジオ観客席にて  「じゃあ、君ここに座って。」っとディレクターが言うと  私は、一番端の席に座った。 まだ、納得してないディレクターは、 「まったく、河村さんは、何を考えてるのか、若い娘を見ると、すぐ肩をもつ、もしかして、愛人の娘か?」などと、ぶつぶつ言いながら歩いて行く、そんな後ろ姿を見て、私は、(ディレクター、ぼやきがだだもれだよ) と思いながら、しまい忘れた椅子の上にじいじの写真を置き「じいじ一緒に観ようね。」と声をかけ、本番を待つ。   本番中 スタッフ「それでは、本番始まります、観客の皆さんも準備お願いします。3、2、1スタート。」 パチパチ、パチパチ観客が拍手する中 河村「はい、始まりました、どうぶつ学園生放送です。私理事長の河村じゅんです。宜しくお願いします。」 パチパチ。 戸葉「生徒会長の戸葉圭介です。」 ワー、パチパチパチパチ。 戸葉君の番になると、ひときわ拍手が大きくなる。 村瀬「副生徒会長の村瀬ゆみです。」 パチパチ。また拍手が小さくなる。 戸葉「今日も動物好きのゲストの皆さんと1時間生放送でお送り致します。」 ゲストを、紹介しようとすると 河村「生徒会長1人いや1匹忘れてるぞ。」 戸葉「あっ、すみません、今日は、校長のお猿のダイ君も居ました。ダイ君宜しくお願いします。」 ダイ君「ウッキキー。」 スーツ姿のダイ君を紹介すると、観客から、  「可愛いいー。」っと カンペ通りの声を上げる。 本番前、さんざんブーイングしてた、女性客が本番に入ったら、カンペ通りの指示を大人しく行っていた。 河村「それでは、本日も3人と1匹で、どうぶつ学園開園です。」  番組の初盤は、順調に進み、ゲストの話しや動物達との触れ合いのVTRが流れたりした。  そして、番組も中盤にさしかかった頃、生徒会長の戸葉君がキャスター付きの檻を運んで来て、 戸葉「今日は、生放送っと言う事で、たくさんの小動物さんにゲストに来てもらいました。」っと言った瞬間 ガターンっとまさかの檻のドアが外れて、中に居た、小動物達が、観客に向かって行く。 ワー、キャー何これ、やだー 観客は、パニック状態。 D「CM入れ!」 スタッフ「はい!CM入ります。」  「戸葉何やってんだ、早く捕まえろ。」っとディレクターの怒号が飛ぶ。  「はい!!理事長すみません、檻直しておいて下さい。」っと河村さんに言い、  「おう、分かった。」っと返事をする。  「ゲストの皆さんもすみませんが動物居たら捕まえておいて下さい。」っとゲストに頭を下げて戸葉君が言い、  戸葉君は、観客席に下りた。とたんに、さっきの悲鳴とは、うらはらの黄色い声。 「キャー、戸葉君。」すかさず、副生徒会長の村瀬さんが  「観客席の動物は、私が捕まえるから、戸葉君は、遠くに行った動物達を捕まえて。」っと網を投げる。  「ありがとう、村瀬さん。」っと網を受け取り戸葉君が言う。  とたんに女性客が、ブーイング 「なによ、あの女一緒にやってるからっていい気になってんじゃないよ。」そんな声にも慣れてるのか、村瀬さんは無視して、  「はい、はい、あなた達も動物居たら捕まえてよ、本番始まるから。」っと言うと、 「偉そうに、なんで私が」って凄い目で睨んでる客も居る。 (今日のお客さんは、喜怒哀楽が激しいなぁー)っと思いながら、私は、足元に居た。ハムスターを拾い、村瀬さんに渡す。 「はい、村瀬さん、どうぞ。」 「ありがとう、助かるわ。」 (うわー、間近で見ると、超綺麗な人) 私に、ニコッと微笑みまた探し始めた。  「おい、戸葉、そろそろCM終わるから、捕まえた動物だけ戻せ。」っとディレクターが言う。  「はい!!」っと戸葉君が返事をする。  「檻は、なんとか大丈夫かな?っとダイ君?」っと河村さんが言うと、その時校長のダイ君が私の元に走って来た。 「えっ、」ダイ君は、私が椅子に置いてた、写真をどかして、その椅子に座った。  私は、周りを見て助けを求めようとしたが、誰1人私から目を反らした。 (どうしよう。)  「おい、生徒会長ダイ君がそっちに行った。」動物を置きに戻った、戸葉君に声をかける河村さん。  「えっ、理事長、ちゃんとダイ君見てて下さいよ。」っと戸葉君が言うと、  「しょうがねぇだろ、こっち直してたんだから。」っとぼやくように河村さんが言い     戸葉君は、しぶしぶこっちに向かってきたっとその時。    「CMそろそろ終わります。」っとスタッフの声が  「うわ、やばい。」っと言い、ダイ君の元に駆け寄る戸葉君  「ダイ君戻ろう、すみませんね。」私に謝りながら、ダイ君を連れ戻そうとする戸葉君。  でもダイ君は、首を横にふってイヤイヤする。 「戸葉君、そろそろ戻って。」っとスタッフが急かす。  「はい、ほらダイ君、理事長の所に戻ろう」っとダイ君の腕を戸葉君が掴むと、ダイ君は、何故か、私の腕をがしっと掴む。  「フーフー」っと歯を剥き出しに威嚇を始めたダイ君。  (やばいぞ、これ以上無理やり連れ出したら、暴れるかも)そんな焦る戸葉君に私は、小声で、 「戸葉さん、私は、大丈夫だから、このまま戻って下さい。」戸葉君の目を見て、真剣に言った。  (あれ?この娘、本番前に理事長と話してた娘だよね。)っと戸葉君は思う。  「戸葉君、本番始まるよ。」っとスタッフが声を掛ける。 「すみませんが、ダイ君宜しくお願いします。」っと戸葉君が言うと、私は、コクッと頷く。 「大丈夫だからね」っと腕を掴んでた手を擦りながら、笑顔でなだめた。すると、すっかり威嚇を辞め、元の穏やかな顔に戻った。  ギリギリセーフで戻った戸葉君。 戸葉「いやー、すみませんね、まさかのハプニングで観客やゲストの皆さんにご迷惑かけてすみませんね。」 観客やゲストの皆さんに頭を下げる。 村瀬「本当に、びっくりしましたよ、しっかりして下さいよ、生徒会長さんって、あれ?理事長、校長のダイ君は?」 河村「あれ?そういえば校長何処行ったのかな?」キョロキョロする理事長に。 戸葉「あそこ」って、観客席を指す。 河村「わぉ、なんでこんな可愛い娘ちゃんの隣に居るのかな、僕もそこに行きたい。」っと言う理事長。 戸葉「駄目です、誰が番組進行するんですか?」 河村「それは、生徒会長と副生徒会長。」 戸葉、村瀬「無理です。」 河村「同時に言わないでよ、仕方ないなぁー、ダイ君。」理事長がダイ君に話しかける。カメラがこっちを向いたので、私は、顔を伏せた。 (さすがに、サービス業だから顔写ったら大変な事になる。) 横目で見ると、ダイ君は、嬉しそうに手を上げる。 戸葉(凄いな、あの娘あんな少しの時間でダイ君を冷静に戻すなんて) 河村「なんか、ダイ君大丈夫そうだから、そのままあそこに座らせて置きますか、飽きたら帰って来るだろうし、すみませんね、お客さん、ダイ君宜しくお願いしますね。」 私は、顔を伏せたまま、コクッコクッと頷く。 戸葉「それにしても、女性の横に座って、ご機嫌なんて、理事長と一緒に居るから、似ちゃったんですかね、女好き。」 河村「何失礼な事言ってるんだか。」 バシッ、観客がキャーっと騒いだ。 戸葉「イテッ、台本で殴らないで下さいよ。」 ワハハワハハ、笑いがスタジオを包み、さっきあった緊張が解けていく。 (さすが、プロだな、アドリブでここまで出来るなんて。) カメラが向こう向いたのを確認して、私は、顔上げて思った。 河村「じゃあ、気を取り直して、番組行きますか、えっと、時間が無いので、まずVTRから行きましょう。」  番組が再開された、隣のダイ君は、まだ腕を掴んでる。ちょっと痛くなってきたので、ダイ君に 「ちょっと緩めて。」っと手を触ると、びっくりしたようにこっちを見たが、素直に緩めてくれた。ふと視線を感じると、戸葉君がこっちを見てた。  (あっ、心配でダイ君を見てるのか、優しいなぁー、戸葉君は。) 隣の女性客が 「なんか猿臭くない?」っと私に聞こえる声で言った。 (あなた達も猿の進化系でしょ、ご先祖様に失礼だよ、だいたい私は、あなたの厚化粧の匂いが臭いわ)っとまた1人つっこみしてしまった。 「ねぇ、ダイ君。」っと小声で話した。 スタッフ「CM入ります。」  番組も終盤になってきた。 ふと、私の腕を掴んでるダイ君の服が捲れてるのに気づいて、そっと、腕を触ろうとすると、腕に無数の傷が。 (これは、もしかして、) 腕に触るのを嫌がるダイ君、その傷の1つに血が出てるのに気づく、私は、持っていた絆創膏を取り出し、小声でダイ君に話しかける。 「ねぇ、ダイ君、私も小さい時に、こういう行為をしたくなる時期があったの、ダイ君の気持ち分かるよ、痛かったよね、苦しかったよね、でも、今は、傷を治さないと、いつか、私みたいに笑顔になれないから。」そう言うと、ダイ君の血をそっと、ハンカチで拭い絆創膏を貼り、そっと、服を直した。それを見たダイ君は、掴んでた腕を外し、血のついたハンカチをずっと見てる。 「ダイ君、このハンカチ欲しいの?」 頷くと、素早くポケットに入れた。 「もう、しょうがないぁー、ダイ君は。」 ダイ君は、ニカッと笑った。   一方スタジオの方は。  「ダイ君大丈夫そうか、なんか全然離れる気配無いが。」っと心配そうに河村さんが言う。  「今のところ問題ないみたいだけど、あの娘、理事長と本番前に話してた娘なんですよ。」っと戸葉君が言うと、  「あー、大声で俺の名前を叫んだ娘ね。」っと河村さんが言う。 ゲスト1「それにしても、ダイ君が女性客の横に行くのって、珍しくない?あの事件以来ダイ君女性のそば行かなくなったから。」 ゲスト2「おい、バカ、それ禁句だよ。」 ゲスト1「あ、わりー、戸葉君」    「いや、大丈夫ですよ。」 (あれ?なんか、あの娘、ダイ君と何かしてる、遠くて、見えないけど) スタッフ「CM終わります。」  結局、ダイ君は、番組が終わるまで私の横に居て、ずっと手を繋いで居た。しわしわのダイ君の手は、じいじの手みたいで、何故か安心出来た。 河村「番組がエンディングに近づいてきましたが、校長が戻って来ない。」 戸葉「いや、むしろ、くつろいでますよ、校長。」 河村「校長、起きろー。」 又カメラがこっちを向いたので、私は、顔を伏せた。 ダイ君は、また嬉しそうに手を上げる。 河村「校長今日は、ギャラなしだからな。」 ワハハ、観客やゲストが笑いだした。 戸葉「前代未聞ですよ、オープニングは出てエンディングには出ない出演者って。」 河村「おい、校長そのまま、そのお客さんの家に行くか?」 私は、顔伏せたまま手を左右に振った。 河村「お客さんに無理だって言われたぞ、ほら帰って来い。」 ダイ君は、横に首を振った。 戸葉「どうしますか、理事長、このままエンディング行きますか?」 河村「仕方ない、奥の手だ、生徒会長あれを持って来い。」戸葉君が持って来たのは、ダイ君が不在の時に使う、ダイ君等身大パネル スタッフ「そろそろ、エンディング入ります。」 河村「今日の生放送は、突然のハプニングがありましたが、何とか、エンディングを迎える事出来ましたが、今日は、1時間が長く感じましたね、どうでしたか?副生徒会長」 村瀬「今日、私もね、動物捕まえにスタジオ内を走り回る事になると思いもしませんでしたが、それは、それはで生放送ならではで楽しかったですけど、どうでしたか?生徒会長」 戸葉「いやー、今日は、僕の点検ミスで、皆さんにご迷惑おかけして、申し訳なかったですが、1時間内容をほぼ変えずなんとか乗り切れて、良かったです。ゲストの皆さんは、どうでしたか?」 ゲスト1「生放送ハプニング楽しかったです。」 ゲスト2「そこか、ハプニング大賞じゃないぞ」 ゲスト3「でも、沢山の動物や色々な物語も見れて楽しい1時間でした。」 戸葉「心づかいの言葉ありがとうございます。では、理事長最後の締めの言葉お願いします。」 河村「本日、生放送どうぶつ学園3人と1匹?でお送りしました。これにて閉園です。」 パチパチ拍手が聞こえて、無事番組が終了しました。 スタッフ「はい、Okです、お疲れ様です。」 「お疲れ様です。」ゲストの皆さんが挨拶しながら、後ろへ戻る。 女性のお客さんが「戸葉くーん」って手を振っていた。それを見たディレクターが  「はい、観客の皆さん、速やかに、出口へ向かって下さい。」っと阻止する。 「えー、もう行くの?」っとぼやいていた。 (最後位静かに帰れば良いのに)っと思いながら、ダイ君に、 「ダイ君終わったから河村さんの所に帰ろうね。」っと言うと、ダイ君が椅子に立ち両手広げて、抱っこの仕草を見せる。 「もう、しょうがない甘えん坊だね。」  「河村さん、観客帰ったら、ダイ君迎えに行きますね。」っと戸葉君が言う。  河村さんは、ゲスト1人1人に挨拶しながら、見送りながら  「ああ、頼むな。」っと返事をする。 ふいにスタジオがざわついた。 「おい、嘘だろ、ダイ君あの事件以来、戸葉君か河村さんにしかなついて無かったのに、何者だよ、あの女。」  (俺も直驚いた、まさか俺か河村さん以外にダイ君を抱っこ出来る人居るなんて。)っと戸葉君が思う。 「ほら、ダイ君、首締めすぎ、緩めて、もうすぐ河村さんの所に着くよ。」 ふと、スタジオのスタッフがざわついてて、戸葉君も河村さんも呆然と私の方を見ていた。後ろで楽屋に戻ろうと思ってた、村瀬さんも足を止めていた。 「ほら、到着だよ、ダイ君、下りて。」 嫌がるダイ君を無理やり下ろす。 「河村さん、ダイ君連れて来ましたよ。」 私の言葉で、ハッと我にかえって、 「あ、あ、ありがとう、えっと。」 「先ほどは、本番前に、すみません。早口でしゃべって、名前も名乗らずに、私、佐川美穂って言います。」  「ああ、戸葉ちゃん、あれ渡して。」 やっと河村さんの言葉で戸葉君も我にかえり、  「あっ、えっと、佐川さん、これをどうぞ。」 私に除菌用のウエットティッシュを戸葉君が渡す。 「ありがとうございます。」っと受けとる。 私は、とりあえず、手とダイ君が触った首筋を拭こうと髪をかきあげた。  (うなじ、色っぽい、やばい)っと河村さんと戸葉君が思うと、それを後ろで見てた、村瀬さんは、「ゴッホン」と咳ばらいして、(まったく男どもは、何処に見とれてるだから)っと思い楽屋に戻る。  「あのー、佐川さん、服汚れてませんか?」っと戸葉君が聞く。 「いーえ、ダイ君綺麗ですから、あっ、でも腕に血が出てたから、絆創膏貼っておきましたよ、どうしたんですか?あの無数の引っ掻き傷?」  「あっ、それは、その。」っと戸葉君が 河村さんの顔を見てお互い困った顔をしてたので私は、 「別に無理して言わなくて良いですよ、人も動物も同じ、事情は違えど、色々あって当たり前ですよね。」 戸葉君は、ほっとした顔でダイ君の手や足を除菌用ウエットティッシュで拭き始めた。  「そういえば、美穂ちゃん、本番前に、俺に見せた写真ある?」っと河村さんが聞く。  (初対面で名前呼びって、さすが河村さんです。)っと戸葉君が思う。 「あっ、はい、ありますよ。」 (初対面で名前呼びって、びっくりした、さすが河村さんだわ。)  「うーん?これ、美穂ちゃん?若いよね?」高校生の私を指して河村さんが聞く。 「はい、ちょうど高校生の夏じいじの家に行った時に、河村さんがロケで来て、じいじの家古い家で蔵があって、それを見に、じいじの家を訪ねて。」  「うーん、おじいちゃんの家って何処?」っと河村さんが聞く。 「茨城県です。」  「茨城は、何回か、行ってるけど、思い出さないなぁー、。」っと河村さんが考えてると、 「無理に思い出さなくても、良いですよ、じいじは、前から河村さんのファンで、酒豪って言うのも聞いてたから、一緒に飲めたら良いなぁー、なんて言ってて、それが本人が来たから、舞い上がって、約束の証にって写真まで撮ってたのに、結局果たさないまま、亡くなって、私のせいもあるのかな。」  私は、写真を見ながら懐かしむように、悲しく言った。  私は、ハッと我にかえり 「あ、ごめんなさい、なんか暗くなっちゃいましたね、でも、今日じいじも生で観たかったこの番組観れたので、じいじも私も満足です。」  「河村さん、トレーナー来るから、ダイ君楽屋に連れて行くね。」  後ろでダイ君と遊んでいた、戸葉君が言う。  「おう、頼むな。なぁー、美穂ちゃん提案なんだけど、せっかく縁あって俺と会ったんだし、おじいちゃんの代わりに美穂ちゃんが俺とお酒飲むってどう?美穂ちゃんお酒飲めるよね。」っと河村さんが聞く。 「はい、飲めますよ。」  「おじさんと2人きりが嫌なら、これも連れて行くから。」っと河村さんが後ろを差す。  「えーーー。」っと同時に戸葉君と私が言うと、  (おー、息ぴったり)っと河村さんが思い、  戸葉君が何か言おうとして、私が先に。 「駄目ですよ、戸葉君今仕事忙しいのに、お酒なんて飲んだら、疲れちゃって、仕事にならなくなっちゃいますよ。」ふと、後ろの戸葉君と目が合い、慌てて目を反らす。  その様子を見てた河村は、  (いやー、いいなぁー、若い者は、ういういしくて、俺があと何十年若かったらなぁー、)と思い。  またまた戸葉君が何か言うのを遮り  「いーのー、いーのー、戸葉ちゃんは、俺の誘い断らないから。」っと河村さんが  やっと戸葉君が  「勝手な事言わないで下さいよ、俺にだって都合ってものがありますからね。」っと言うと、 「えー、何、戸葉ちゃん、俺の誘い断るの。じゅんちゃん寂しい。」っと河村さんが。  「げっ、河村さん、気持ち悪いですよ。」っと戸葉君が言う  そんな2人のやりとりを見てた私は、クスックスッっと笑って、 「なんか、仲良いですね、漫才コンビみたいですよ」  (美穂ちゃん、佐川さんって笑顔可愛いいー)と河村さんと戸葉君が見とれてて、その様子に。 「どうかしましたか?」  「いや、いや、っと言う事で番号教えて、美穂ちゃん。」ポケットから河村さんは、携帯電話を取り出した。  (携帯持って、仕事してたの、用意周到だな。さすが河村さん。)戸葉君と私が思い。 「はい、では、090」っと教えて、すぐにかけてきて。  「これ、俺の番号だから、登録してね。」っと河村さんが言う。 「はい。あっ、じゃあ、私これで、あんまり遅くなると、バスも電車も無くなるので。」 私は、スタジオにあった時計を見て言った。  「あれ?美穂ちゃん何処から来てるの?」っと河村さんが聞く。 「隣県の茨城ですよ、今日は、本当にありがとうございました。河村さんのおかげで楽しい時間が過ごせました。」  「いえ、いえ、こちらこそ、ダイ君最後まで見てくれて、ありがとうございます。飲みの日取り決まったら、連絡するので。」っと河村さんが 「はい、楽しみにしてます、戸葉さんもお疲れ様です。」 「お疲れ様です。」っと戸葉君がそっけなく返事する。 「ダイ君バイバイ。」っと言うと、 ダイ君は、ふりかえって手を振ってくれた。  私は、再び一礼して、スタジオを後にした。   楽屋にて。  「ねぇー、彼女帰ったの?」っと村瀬さんが聞く。  「うん、あっ、トレーナー、ダイ君又傷悪化したって絆創膏貼ってあるみたい。」っと戸葉君が言う。  ダイ君は、トレーナーの元にすぐ走って行った。  「ダイ君おかえり。戸葉君ダイ君の傷触ったの?」っとトレーナーが聞く。  「俺じゃないよ、佐川さんって言う女性の方。」っと言いながら、戸葉君は、カーテンを閉め着替えを始めた。  「おや、本当ですね、血がにじんでますね。」っとトレーナーは、ダイ君の袖を捲り言う。  「ねぇー、トレーナー、今まで、まったく女性の隣に行きたがらなかったダイ君が、ほぼ30分以上、そばに居るってありえる事?」って村瀬さんが聞く。  「あり得ない事では、無いですね、シンクロです。」ってトレーナーが答える。  「シンクロ?」って村瀬さんが聞く。  「ざっくり言えば、飼い犬が飼い主に似るのと一緒で、彼女がダイ君と同じ心の傷を抱えてて、気持ちが通えば、その可能性は、ありますよ、まして、ダイ君は男の子ですからね。あれ?このハンカチ、その娘のかな?」っと言いながら、トレーナーは、ダイ君のポケットに入ってた、ハンカチを取り出すと、バッって素早くダイ君が取り返し、ギューと抱きしめた。  「大丈夫だよ、取ったりしないよ、ダイ君、今日は、良かったな、ちゃんとダイ君を理解してくれる人に出会えて。」トレーナーが言うと、ダイ君は、ニカーっと笑った。  (新しいハンカチ買って渡さないと)ダイ君の頭を撫でて、トレーナーは思う。  「心の傷ね、あの娘がそういう風には、見えないけど。」っと村瀬さんが  「あっ、でも美穂ちゃん、おじいちゃんの話しをしてた時、一瞬、悲しそうの表情を見せたから、何か訳ありかもね、あっ、戸葉ちゃん、今日車で来てるの?」っと河村さんが聞く。  「何ですか?急に、来てますよ。」  戸葉君は、着替えが終わりカーテンを開けて言う。  「戸葉ちゃん、美穂ちゃん車で駅まで送って行け。」っと河村さんが。  「はぁ、なんで俺が?今から反省会あるんですよ。」嫌そうに言う戸葉君に、  河村さんは、村瀬さんを見て何か悟ったように頷く。  「そっ、今から反省会、戸葉ちゃん、今日ヘマしたでしょう、確かに小道具さんのミスだけど、確認しなかった、お前も悪い、今日は、ディレクターと監督にみっちり朝まで説教だぞ。」っと戸葉君を見て河村さんが言う。  「えー、朝までは、お肌に良く無い。」っと村瀬さんが、  「俺も、この歳で朝まで説教は、辛い」っと河村さんも  「えー、俺が悪いみたいな言い方ですね、前にミスは、連帯責任って言いませんでしたか?」っと戸葉君が反論する。  「確かに、言ったよ、ただ戸葉ちゃんが抜けてくれれば、説教短くなると思うんだよね、ほら、ディレクターって戸葉ちゃんの事あんまり好きじゃないみたいだし、今、美穂ちゃんを車で送って行けば、俺らがうまくごまかすから、さあ、戸葉ちゃん、美穂ちゃんを駅まで送るか、朝まで説教か?どっちにする。」っと河村さんが聞く。  「それ、究極の選択ですよ、俺には。」っと戸葉君が言うのを聞き、 「それ、何気に美穂ちゃんに失礼だぞ。」っと河村さんが言う。  「本当にごまかしてくれます?」っと戸葉君が不信そうに河村さんに聞く。  「もちろん、戸葉ちゃんは、これからお腹が痛くて、トイレから、出れないって事にするから、ねぇ、ゆみちゃん。」っと河村さんが                   「大丈夫よ、戸葉君、うまくやっとくから、早く行かないとあの娘帰っちゃうよ。」っと村瀬さんが  「なんか、あんまり嫌なごまかし方ですが、本当に大丈夫ですかね、それで。」っと戸葉君が言うと、  「戸葉ちゃんの演技次第だ、ほら、ディレクター来るぞ、演技しろ。」っと河村さんが言うと、  「お願いしますよ、河村さん、あっ、イタイタタ、腹が、痛い。」  戸葉君は、うずくまって、お腹を抑えた。  「おい、戸葉ちゃんどうした?しっかりしろ。」っと河村さんが、心配そうに言ってると、そこへディレクターが来て  「すみません、ディレクター、トイレ行って来ます。」戸葉君は、お腹抑えながら、ふらふらしながら出て行く。 (よし、なかなかの演技力だ。戸葉ちゃん)っと河村さんが思ってると、  「どうした?戸葉いきなりトイレって。」っとディレクターが聞くと、  「なんか、今日の反省会何言われるか緊張して、お腹痛くなったみたいですよ。」っと河村さんが  「戸葉君、意外と繊細な所あるからなぁー。」っと村瀬さんが  「おい、本当か?」全員を見回してディレクターが聞くと、 全員がコクッと頷く、まだ居たダイ君まで頷いていた。  「まったく戸葉のやつ今日は、朝まで説教してやろうと思ったのに、こんな時に腹なんか痛くなりやがって。」っとディレクターが悔しそうに言うと  (やっぱりか。)っと河村さん、村瀬さんが思う。  佐川さん、佐川さん、誰かが、小さな声で呼んでる声がする、振り返ると。 (えっ、戸葉君) 「あー、良かった、まだ帰ってなくって。」 「はい?どうしたんですか?そんなに息切らして走って。」 「いや、あの、その、俺今日車で来てるので、佐川さん、駅まで送らせて下さい。」 「えっ、けっこうです、今から何かあるんですよね?」 「はい、ありますよ反省会が。ただ俺今日大きなミスしましたよね、だから、朝まで、みっちり怒られるですよ、俺。」 (それは、そうだろうね、あれだけの事したんだから) 「ただ、俺が佐川さんを送って行くって言うなら、河村さんや他の方もごまかしてくれるって言うので。」 (私は、逃げの口実か) 「お願いします。佐川さん、俺明日朝早くの仕事があるんです、これで朝まで説教されたら絶対遅刻します。」 (アイドルに拝まられたら、嫌とは、言えないでしょう普通) 「分かりました。お願いします、あのー、さっきから気になったんですが、なんで小声なの?」 「ディレクターが聞いてるかもしれないので。」 「本当に大丈夫ですか?」 「任して下さい、俺の演技力で、何とかなりますから、では、裏口で待ってて下さい、車回して来ますから。では、行って来ます。」 そう言うとお腹を抑えながら、大きな声で、  「うわー、やばい、お腹痛い、う○こが出るー。」 (ちょっと待て戸葉君、アイドルがそんな汚い言葉使ったら、ファンが幻滅するよ。) 作(お食事の方が読んでたら、すみません) 「わぁー、出ちゃうよー。」 (まだ、戸葉君言ってるし、ってそういえば、裏口で待ってて、言ったよね、裏口って何処ー?)  私は、近くの警備員に裏口の場所を聞いた。  「裏口はね、ここ真っ直ぐ行って、それから右に行って。」っと警備員が言うのを聞き、 (やばい、私は、究極の方向おんち無事に裏口に着くかな?)  何とか、非常口のマークを、頼りに裏口へと着いた私 「遅いなー、戸葉君やっぱり無理だったのかな?」そんな一人言の様に呟いてると。 「すみません、遅くなって、少しだけディレクターに捕まりまして、待ちましたか?」   黒の高級車のような車で戸葉君が来た。  私は、ボーっと見とれてると、 「佐川さん?」戸葉君の言葉で我にかえり。 「いえ。全然待ってませんから大丈夫です。」 「良かったです、どうぞ」っと言うと、私は、迷わず後部座席に乗った。 「失礼します。」その様子に戸葉君が 「えっ、」っと驚いた顔をした。 「はい?」 「いや、俺が言うのも変だけど、普通女子って「きゃー、スカイハイの戸葉君の車だ、助手席乗っちゃおう♪」って言うのかなっと思ったから。」 「言いませんよ、それに彼女に悪いですから。」 「俺、彼女いませんから。」きっぱりと否定。 「それに、知ってる人や芸能関係の人に見られても、後部座席に乗ってれば、仕事の関係の人って言い訳出来るし。」少し意外そうな顔して、 「佐川さん、俺への気遣いありがとうございます。」 「いえ、いえ、」 「じゃ、行きますね。」そう言うと車が動きだした。    会議室での反省会  「なぁー、戸葉ちゃん、ちゃんと美穂ちゃん送って行けたかな?」と河村さんが隣の村瀬さんに声をかける。  「大丈夫だと思うよ、戸葉君もあの事件の事を少しでも、忘れて、若い娘としゃべった方が良いって、あの娘は、良い娘そうだし。」っと村瀬さんが答える。  「そう、そう、戸葉ちゃん若いから、今から女性嫌いになったら先行き暗いからなぁー。」っと河村さんが言うと、  「そう、そう、河村さんみたいに一生独身じゃ、可哀想だよ。」っと村瀬さんが  「なにぉー、俺は、まだ結婚出来るぞ。」っと河村さんが反発すると、  「まだ、結婚する気あったの?」っと村瀬さんが言った。  「こら、そこ、反省会中にしゃべってるな。」っとディレクターが言うと  「はーい。」っと河村さんと村瀬さんが返事する。    戸葉君車の中 (なんか、久しぶりに男の人の車に乗ったなぁー、なんか、良い匂い、戸葉君の香りかな) 後部座席でキョロキョロしてると、戸葉君が 「佐川さん、今日は、本番中ダイ君見ててくれて、ありがとうございました。」  「いえ、私ダイ君隣に居てくれて、楽しかったですから。」 「そう言ってくれて、ダイ君も喜んでくれてますよ、あっ、でも猿臭くなっかたですか?」 「あんまり私は、気にならなかったですよ、隣の女性は、そんな事言ってたけど、それって、ご先祖様に失礼ですよね、だって私達も猿の進化系なんですから。」それを聞いた戸葉君は、プッ、ワハハワハハってまさかの爆笑。 「確かに、俺らって猿の進化系だよね。」 「えっ、そんなに笑うところですか?」  「いや、いや、だってあんまりそんな事言う人居なかったから、つい、ごめん。佐川さんって面白い人だね。」 「えー、それって、褒め言葉ですか。」 「一応、褒めたつもりだよ。」  それから、しばらく沈黙が続いた後、ずっと窓の外を見てた後、ふっと戸葉君を見ると信号待ちに、首の運動や、ため息をついてるのが見えた。 (あれ?この行動、確か、本番中も見た気が。)私がおそるおそる聞いて見た。 「あのー、戸葉君?」 「何?」バックミラー越しに私を見た。 「違ってたら、ごめんなさい、戸葉君疲れてます?」 「えっ、何で?」 「いえ、今日の本番中もCMやVTRの合間に首の運動したり、ため息ついてる事があったから、もしかしたらっと思って。」 「クスッ、意外と俺の事見てたんだ、佐川さん。」 「いや、あの、たまたま目に入ったけで。」 「そうなの、残念。」 (えっ、残念ってどう意味?) 「確かに、俺疲れてるかも、ライブやったり、レコーディングがあったり、スカイハイの番組に出たり、今度、俺の主演ドラマ始まるし、一気に疲れきてるかもな。」 「そうなんですね。」 「でも、秀ちゃんに比べたら、俺の疲れなんてまだまだだよ。」 「秀ちゃん?」 「佐川さん、本当にスカイハイに興味無いんだね。」 「そうかも、お昼の番組の芸能話しに出てきたり、CMで見たりする程度かな、あっ、最近私のお母さんがスカイハイの話題を良く目にするようになって、スカイハイ好きなったみたいで、その中でも戸葉君のファンみたいで、歌もダンスも上手なのよって言ってたけど。」 はぁー、ってため息がついて、 「お母さんにありがとうって伝えて下さい。じゃなくて、もう、秀ちゃんって言うのは、スカイハイのサブリーダーの高井秀一。」 「ふーん。」続けて戸葉君は、 「秀ちゃんは、両親がエリートで、秀ちゃんも幼い頃から色々な教育を受けてて、アイドルやる傍ら有名大学に通ってたんだ。」 「アイドルと大学の両立って大変じゃない?そんなに、アイドルやりたかったの?」 「いや、元々は、アイドルは、すぐに辞めるつもりだったんだけど、最初のスカイハイのコンサートで、ファンの温かさや喜んでくれてる姿に感動して続ける事を決意したんだけど、もちろん両親は、反対して、アイドルを続ける代わりに大学もきちんと卒業する事を条件に承諾したんだ」 「それって、凄く大変だったんじゃない。」 「それは、もう大変って言葉じゃ、言い表せ無い位、もう、秀ちゃん空き時間があれば、ずっと勉強してて、本当に寝る間も惜しんで頑張ってる姿を俺もメンバーも見てて、きっと疲れなんて相当だと思うよ。」 「戸葉君は、そんな秀ちゃんの事尊敬してるんだね、聞いてて、そんな思いが伝わったよ。」 「あっ、ごめん、なんか熱く語ってしまって。」少し照れた様子の戸葉君に。 「でも、秀ちゃんが秀ちゃんな様に、戸葉君って言う存在も代わりは居ない、人を思いやり、尊敬する気持ちは大切だけど、自分も大切にして、休む時は、休まないと、戸葉君が倒れたりしたら、悲しむファンたくさん居ると思うよ。」 「佐川さん。」 「あっ、ごめんなさい、なんか説教なんかしちゃって。」 「ううん、凄く嬉しいよ、なんかこう言う風に言ってくれる人ってなかなか居ないから、ありがとう佐川さん。」 「いーえ。」満面の笑顔で言われて恥ずかしくて、顔を伏せた。 「あっ、もうすぐ着くよ、降ろす所何処でも大丈夫?」 「ええ、どこもから乗っても線路は繋がってますし。」 「プッ、やっぱり佐川さんって面白い。」 「えっ?」 「あっ、そうだ、今日のお礼にスカイハイのCDプレゼントするよ、ちょうど10周年のベスト盤出たばっかりだし。スカイハイの事知ってもらいたいし。」 「えっ、いいですよ、自分で買いますよ。」 「いーから、いーから。もう着くよ佐川さん。」 「はい。ありがとうございます。」 (長いようで、あっという間に着いたなぁー、)私は、車から降りて 「今日は、お疲れのところ、駅まで送ってくれて、ありがとうございます。」 「いえ、いえ、こちらこそ、佐川さんのおかげで、明日遅刻しないで、済みました。」 「運転気をつけて、帰って下さい。お疲れ様でした。」 「佐川さんも、夜なんで気をつけて帰って下さいね、お疲れ様。」最初のお疲れ様よりも優しい感じに話してくれて、少し嬉しかった。私は、戸葉君の車を見送り、改札口へと向かった。   戸葉君車の中 (なんか、久しぶりに女性と話して楽しかったなぁー、佐川美穂さんか、また話してみたいな、俺の事とか、スカイハイの事色々話してみたい、今日、家に帰ったら、早めに休もう、もっと自分を大事にしないとな。)  戸葉君は、車を運転しながら、温かい気持ちで、家路と向かった。   美穂電車の中 (なんか、今日は、色々あった1日だったけど、楽しかったなぁー、まさか、あんなに気さくに戸葉君とお話出来ると思わなかった、また色々お話したいなぁー、少しだけ、スカイハイに興味持てたし、また会えると良いな) そんな事を思い、最寄り駅に着いた。   車に乗り家路へと向かう。 「ただいま」  「美穂、お帰り、早かったのね。」  そう、戸葉君が駅まで送ってくれたので、早い電車に乗れたから、予定より早く家に着いた。 「うん、お母さんまだ起きてたんだね。」 「そうよ、美穂の事待ってたのよ、お腹空いてない?お土産にリゾット買って来たの、食べる?」(そういえば、東京着いて、軽く食べたきりだった) 「うん、食べる。今手洗って来る。」 「じゃあ、温めるわね。」 なんか、お父さんとのデート楽しかったみたいで、いつもよりテンション高めな感じがした。 「では、いただきます。お父さんとデート楽しかったの?お母さん」 「久しぶりだったから、つい、はしゃいじゃって色々見て歩いたり、夕飯もお父さんったら奮発して、高級レストランで食べて、そのリゾットもそこのお土産なの。」  (どうりで、普通のお店より美味しいはずたわ、お父さんにしては、頑張ったんだね。) 「良かったね、お母さん。」 「うん、美穂どうだったの?生放送番組、河村さんに、会えたの?私まだ観て無いのよね、録画はしたけど。」  私は、今日あった出来事をお母さんに話した。里穂が当日ドタキャンで1人で行った事、テレビ局で大きな声で河村さんの名前を叫んでしまった事、河村さんのおかげで生放送観覧出来たけど、途中ハプニングで校長のダイ君が私の隣に居た事、そして、最後に、戸葉君の車で駅まで送ってくれた事、お母さんは、私の話しに、頷き、目をキラキラさせながら、聞いて、私も美味しいリゾットを食べながら、夜遅くまで話しこんだ。
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