それぞれの思い

1/1
前へ
/12ページ
次へ

それぞれの思い

 楽しかった休日の夜、お風呂に入った後、里穂にもメールをした。 「里穂。もう寝てるかな?今日は、戸葉君と漫喫行って、ラーメン一緒に食べて帰って来たよ。なんか、久しぶりに男の人と休日一緒に過ごして、楽しかったよ♪それでは、今日は私も、もう寝ます。いい夢見られそうだよ。おやすみ。」っと送信。  ざっくりした内容で送ったら、まだ起きてたみたいで、 「美穂、報告遅い。もう、寝そうになったよ、なんか楽しかったみたいで、明日じっくり聞くから、覚悟しとけよ、では、おやすみ。」って返って来た。 (やれ、やれ、明日は、長電話になりそうだな。)私は、部屋の電気を消し、お布団に入った。    そして、次の日の夜、休み明けで、少しだるい感じでお仕事終え、家に帰り、夕飯を食べ、2階の自分の部屋に戻り、ゆっくりしてると、  プルルー、プルルー、里穂から電話が来た。 「はい、もしもし里穂?」 「お疲れ様、美穂、昨日は、楽しかったみたいだね、まさか、漫画喫茶デートとは、そういえば戸葉君、漫画読むって聞いた事あるけど、美穂、部屋は一緒よね。」 「デートでは、無いよ。付き合ってる訳じゃないんだから、部屋は一緒にしたよ。」 「おっ、美穂にしては上出来じゃん、それで、部屋で何してたの?」 「何って漫画読んでたに決まってるでしょ。」 「えー、それだけ?何か他に無かったの?」 「あったといえば、あったけど。」 「何、何、何があったのよ、もったいぶらないで聞かせてよ。」 「もう、里穂ったら、何を期待してるのか、戸葉君ちょっと眠かったみたいだから、1時間位寝かしてあげた時に、お願いされたから、少しだけ、膝枕してあげたのよ。」 「えー、いいなぁー、戸葉君に膝枕なんて、羨ましい、で、髪触ったの?」 「うん、戸葉君に内緒で少し髪撫でちゃったら、さらさらして女性の髪みたいだったの、きゃー。」 「美穂、いきなり積極的になったね。」 「だって、あの状況だったら、触りたくなるって。」 「そうだね、私だったら、ほっぺにチューするかも。」 「それは、止めた方が良いよ。戸葉君に嫌われるから。」 「でも、いいなぁー、戸葉君の寝顔間近で見られて、役得じゃん、美穂。」 「本当だよ、1時間幸せな気分だったよ。」 「ねぇ、美穂、写真撮って無いの?」 「残念ながらありませんよ。」 「もう、つまんない、それで、漫喫の後にラーメン食べに行ったんだ。」 「うん、軽くって言ったのに、戸葉君大盛頼んだから、びっくりしたよ。」 「まあ、男の人は、けっこう食べるよ、戸葉君の仕事は、体力使うしね。それで食べ終わった後は、どうしたの?」 「そのまま、2人で駅までおしゃべりしながら、歩いて駅で別れたけど。」 「美穂、次の約束は?」 「してないよ。」 「またなの。ちゃんと約束しないと、次、会えないでしょ。」 「そうは言っても、戸葉君は、忙しいし、会う時は、メールで約束すれば良いだろうし。」 「そんな、のんきな事言ってると一生会えなくなるよ。」 「そんな、里穂大げさだよ、それに、今戸葉君と友達として、メールしてるだけで充分だから。」 「もう、美穂ったら、せっかく戸葉君が美穂には、心許してるんだから、もっと距離縮めても良いと思うけどなぁー。」 「私は、今の距離で良いよ、それ以上は、望まないよ。」 「美穂がいいなら、良いけど、なんか私は、すっきりしないなぁー、美穂には、好きな人と幸せになってもらいたいし。」 「それは、私も里穂と同じ気持ちだよ。」 「とりあえず、次の報告楽しみにしてるね。」 「うん、分かったよ、じゃあ、またね里穂。」 「うん、またね美穂。」  (それにしても美穂なんで恋愛に消極的なんだろう、戸葉君、美穂とお似合いだと思うけど。) そんな事を思い、美穂との電話を切る里穂。  それから、1ヶ月位は、戸葉君とたまにメールのやりとりをする感じで過ぎ、梅雨に入り、じめーっとする毎日が続く、月末の日中戸葉君からメールが入っていた。 (あれ?戸葉君珍しく日中にメール入ってる。) 「お疲れ様です。美穂ちゃん。戸葉です。今日は、お仕事かな?お休みかな?ちょっと美穂ちゃんにお願い事があってメールしたんだんだけど。」 (お願い事なんだろう?) 「お疲れ様です。戸葉君。美穂です。今日は、お休みでした。戸葉君お仕事中?お願い事って何ですか?」 「お休みだったんですね、俺は、午後から仕事です。実は、この間「どうぶつ学園」の収録あったんですが、ここ1ヶ月位、ダイ君お休みしてて、トレーナーの話しだと、体調良く無いみたいで、最近では、食欲も無く、部屋から出ない日が続いてて、それで、美穂ちゃんに会えば元気になるんじゃないかって話しになって、こっちの勝手な話しで申し訳ないんですが。」 「そういえば、最近、ダイ君テレビに出て無くて、私も心配してたんです。そういう事だったんですね、私で良ければ、ダイ君に会いに行きますよ。久しぶりに会いたかったし。」 「美穂ちゃん、ありがとう。じゃあ、トレーナーの名刺、写真撮って送るから、電話宜しくお願いします。」 「分かりました。戸葉君今から仕事頑張って下さいね。」 「はい。又メールします。」  送られて来た、写真を見ると (小川龍二さん、うわぁー、すごい良い名前、どんな人なんだろう、えーと、住所は、千葉県の銚子市?海の近くなんだ。千葉の海も好きなんだよね。お昼頃電話すれば、お昼休みで出るかな?)    そして、お昼過ぎ。 (うー、緊張する、では、いざ掛けます。) プルルー、プルルー、 「はい、小川動物トレーナー事務所です。」 「あっ、あの私、佐川美穂って言います。戸葉君のお友達の。」 「ああー、佐川さんですか、戸葉君から連絡来たんですね、初めまして、私、ダイ君のトレーナーをしてます、小川龍二と言います、わざわざお電話ありがとうございます。」 (なんか、物腰の落ち着いた感じの人、何歳なんだろう?) 「いえ、初めまして、佐川美穂です。ダイ君体調どうですか?」 「実は、今日も食欲が無く、引きこもり状態で、トレーナーとして、お恥ずかしい話しですが、どうしたら良いか困っていて、今月は、収録も生放送もお休みしていて、視聴者の方も心配してて、来月には、元気な姿を見せたいんですが。」本当に困ってる声で話しをする。 「ダイ君、もしかして又精神状態が不安定に?」 「いえ、そっちは、大丈夫なんですが、ダイ君は、年齢もいってますから、この梅雨の気温で体が参ってるのかな?っと少し寂しくて、元気が無いのかなと。」 「ダイ君、そんなお歳なんですか、少し寂しいって?どうゆう事ですか?」 「ダイ君は、人間で言えば、おじいちゃん位の歳ですが、ダイ君は、伴侶を持たず、ここで生活してますから、その、佐川さんには、迷惑な話しですが、どうも、佐川さんに会えなくて、寂しがってるみたいで、佐川さんのハンカチを肌身離さず持っていて。」 (私って、やっぱり歳上に好かれるみたい、よりによってダイ君がそんなお歳とは。) 私がしばらく沈黙してると。 「あっ、すみません佐川さん、迷惑な話しをしてしまって。」っと慌てた様子で。  「あっ、いえ、すみません、なんかびっくりしちゃって、迷惑じゃないですよ、全然、ダイ君がどんなに歳上でも、私ダイ君好きですから。」 「お噂には、聞いてましたが、佐川さんは、お優しい人ですね、あの戸葉君とメールのやりとりをしてる事には、驚きましたが、きっと彼も佐川さんの優しさに惹かれたんでしょうね。」 (えっ、どんな噂になってるの私?もう、小川さんって、さらっと照れる事を言うなぁー) 「あのー、それで、私、ダイ君に会いに行きたいんですが、住所、千葉の銚子市みたいですが、どの辺りですか?」 「場所は、銚子駅から、海岸方面なんですが、佐川さんは、どちらから来ますか?」 「茨城です。」 「茨城でしたか、車で来ますか?それとも電車で来ますか?」 「そうですね、途中まで車で来てから、電車で行こうかなっと思ってます。」 「それでは、銚子駅に着いたら、お迎えに行きますので、何日にいらっしゃいますか?」 「そうですね、来月の第2水曜と木曜日が連休なので、水曜日にでも行きたいんですけど、大丈夫ですか?」カレンダーを見ながら話す。 「ええ、大丈夫ですよ、電車が着く時間分かりましたら、名刺にメルアドが載ってますから、そちらに送って下さい。」 「はい。分かりました。では、水曜日に。」 「当日、ダイ君も私も佐川さんにお会いできるのを楽しみにしてます。今日は、わざわざお電話ありがとうございました。」 「こちらこそ、楽しみにしてます。それでは、失礼します。」 「はい。では、また。」私は、相手が切るのを待ち、電話を切った。 (はぁー、緊張した。小川さんって、どんな方なんだろう?ドキドキした。あっ、そうだ。)私は、部屋をガサガサ探し始めて、 「あった。」押し入れから手芸道具を出した。 (フェルトまだ、残ってた、これで、ダイ君寂しくないように、私の人形作ろう)  私は、夕方まで、慣れない人形作りに悪戦苦闘しながら、顔の部分まで作ると、 「美穂、夕飯もうすぐ出来るわよ、入るわよ。」お母さんが美穂の部屋に入って来た。 「あら、今日は、部屋にこもってると思ったら、何作ってたの?」 「うん、ダイ君が元気無いから、今度会いに行くんだけど、寂しくないようにっと私の人形作ってるんだけど、どうかな?」  「ねぇ、美穂、この顔の目可愛い過ぎ無い?少女マンガの目みたいで、美穂じゃないみたいだよ。」 「いーのよ、私に似ない方が、この目の方が可愛いくて良いと思うけど。」 「そう、じゃあ、胴体には、美穂の髪でも入れて美穂らしくする?」 「いや、それじゃあ、呪いの藁人気になっちゃうでしょ、私ダイ君に呪われたくないよ。」 「クスックスッ、確かに、ダイ君が何かするたびに、美穂あっちこっち痛くなっちゃうね。」 「それは、絶対に嫌。」 「それで、ダイ君の所には、いつ行くの?」  「来月の第2水曜日、場所、千葉の銚子だから、連休の方が良いと思って。」 「そうね、近いようで遠いからね。戸葉君と一緒に行くの?」 「ううん、1人で行くから、途中まで車で行って、後は、電車で行こうと思って。」 「そうなんだ。でも、戸葉君には、言ってから行くんでしょう?」 「うん、戸葉君から頼まれたから、ちゃんと報告してから行くよ。」 「そっかー。戸葉君一緒じゃないんだね、あっ、美穂、ご飯出来るから、一旦手を止めて、下に降りて来てね。」がっかりした声で美穂の部屋を出る。 (母よ、何を期待してたのか、やれ、やれ、)と思いながら、人形の顔を机に置いて、下に降りた。  夕飯を食べて、部屋に戻り、戸葉君にメールをした。 「お仕事お疲れ様です。美穂です。小川さんに、電話しました。来月の第2水曜日に行く事にしました。時間は、まだ未定ですが、お昼過ぎにでも行けたらっと思ってます。今からダイ君に会えるのを楽しみにしてます。今日は、連絡してくれてありがとう。」っと送信。 (さて、さて胴体も作るか、洋服は、後にして、体だけ作ろう。)  しばらく胴体作りに専念してると、いつの間にか夜も9時過ぎになり、戸葉君からメールが入って来た。   「美穂ちゃん、お休みのところ、こんばんわ戸葉です。先ほど、小川トレーナーからのメールで美穂ちゃんから電話をしてくれたのを聞きました。早々の連絡ありがとう、その日は、俺は、お仕事なので、行けないかもしれませんが、ダイ君の事宜しくお願いしますね。」 (あーあ、やっぱり戸葉君仕事かって私何期待してるんだろう) 「戸葉君お仕事終わりのメールありがとう。当日いっぱいダイ君と遊んで来るね、今日もお疲れでしょうから、ゆっくり休んで下さいね。」っと送信 「美穂ちゃんも明日から又仕事でしょうから、ゆっくり休んでね。」 (胴体も仕上がって来たし、後は、次の休みに洋服作ろう)  そして、約束の第2水曜日。 (うー、暑い。もう、梅雨明け間近かな)  お昼を軽く食べて、出掛ける準備をしてる(あっ、そういえば、あれ、持っていかないと)タンスから、取り出し、準備して降りると、下から甘い香りが。 「あっ、美穂支度出来たの?カップケーキ焼いたから、差し入れに持って行きなさい。ダイ君のは、甘さ控えめだから、カップの色違うから気をつけてね。」  「お母さん、珍しいね、お菓子作るの。」 「なんか、最近お菓子作り楽しくて、色々作ってるのよ。あっ、美穂今日夕飯どうする?」 (昔は、私の方が料理出来たのに、最近は、逆転したな。) 「ありがとうお母さん。夕飯は、分からないから電話するよ。」 「分かったわ、なるべく早く電話してね、それと、今日は遠いから、気をつけて行くのよ。小川さんに失礼のないようにね。」 「はい、はい。分かってるよ、それでは、行って来ます。」 「いってらっしゃい、美穂。」  私は、車で銚子駅に行きやすい、大洗駅まで行き、車から電車に乗り換える。 (えっと、ここからだと、何時に着くだろう) 時刻表を見て何時に着くか、確認して、小川さんに、メールをした。 (そういえば、小川さん、私の事分かるのかな?私は、初対面だから、どんな方か、緊張するな)  私は、途中銚子方面に向かう電車に乗り換える、近くなって来ると窓から入る風が少し冷たくなって来た。 (あっ、海が近いなぁ、もうそろそろ着く。ドキドキして来た。)  銚子駅に到着。 (さて、私の事分かるのかな?)私がキョロキョロしてると、 「佐川さん」っと男の声がした。 「はい。」と声の方を向くと、長身でしっかりとした体つきの方が、ワゴン車の近くで立って居た。 「佐川さんですよね、初めまして、私、小川動物トレーナーの小川龍二です。」 「初めまして、佐川美穂ですって私の事、良く分かりましたね。」 「ええ、佐川さんが観に行った生放送の観覧の時裏から、お見かけしてましたから、さあ、どうぞ。」っとワゴン車の助手席のドアを開ける。 「ありがとうございます。失礼します。」 「会社の車ですみませんね。」 (そういえば。ワゴン車に小川動物トレーナーって書いてあった) 「いえ、わざわざお迎えありがとうございます。それと、前に、ハンカチ新しいのを、わざわざありがとうございます。素敵なデザインで気に入りました。」私は、ポケットから、ハンカチを出す。  「それは、良かったです、喜んでくれて、わざわざ選んだかいがありました。」嬉しそうに話す。                           「ここから、どの位かかるんですか? 」      「そうですね、車だと10分か15分で歩くと30分かかりますね。」走ってると、海が見えて来た。 「良いですね、海の近くにあるんですね、私銚子の海も好きで、たまにドライブしに来るんです。これからの季節は、観光客も多くなりますよね。」 「そうですね、これからは、人がたくさん来ますね、私の事務所は、海岸からそんなに遠く無いので、良く散歩で利用しますが、これからの時期は、人がいっぱいで、散歩も大変です。そろそろ見えて来ますよ。あそこです。」指さす方を見ると、動物園位の広さの敷地が見えて来た。 「けっこう、広いですね、動物何匹いらっしゃるんですか?」 「動物は、20から30匹で広さの割りには、少ないですが、ここは、ロケとして使われたりするので、そういう施設がいくつかあり、動物を番組やCMに貸し出したりと、動物タレントみたいな事もしてるんですよ。」 「へぇー、そうなんですね、飼育員さんは、何人働いてるんですか?」 「今は、10人で「どうぶつ学園」のスタッフの兼任してる方も居ます。」 「動物よりも飼育員の方の方が少ないんですね、あれ?ダイ君」外を見ると、飼育員の方と手をつないで立って居るダイ君が居た。 「今日は、朝から、ずっと出なかった部屋を出て、そわそわしてたんですよ、まるで佐川さんが来るのを分かってたみたいに。」  「そうなんですね、なんか嬉しいです。」私は、車を降り、 「ダイ君」って呼んでハイタッチをした。 「こちら、ここの飼育員長の松河陽子さんです。」ダイ君と手をつないでいた、飼育員を紹介する。 「初めまして、佐川美穂です。」 「初めまして、松河陽子ですって言っても初めましてじゃないんです私、佐川さんが観に行った生放送の時スタッフとして、居たので、お会いするの楽しみにしてました、だってダイ君を抱っこした奇跡の女性ですから。」 (奇跡の女性って何処かで聞いて気がする) 「そんな、ありがとうございます、あっ、これ、母が作った、カップケーキです。皆さんでどうぞ。ダイ君のだけ、甘さ控えめなので、カップの色違うので、間違って食べないように気をつけて下さい。」 「わぁー、ありがとう、私甘いの大好きなんです。今日のおやつに食べますね、小川さん食堂に置いておきますね。」 「はい、お願いしますね、佐川さん、お母様にお気遣いありがとうございますっとお伝えしておいて下さい。」そんな会話をしてると、ダイ君が私を見て、両手を上げて抱っこしての仕草をする。 「もう、ダイ君ったら、私より歳上なのに仕方ないなぁー。」私がダイ君を抱っこしようとすると、松河さんが 「あっ、佐川さん、エプロンしなくて大丈夫ですか?汚れますよ。」 「大丈夫ですよ、汚れても平気な服ですから。」 「思ってた以上に佐川さんって優しい方ですね、小川さん。」 「ええ、だから、ダイ君もなついてるんでしょうね。」 「よいっしょっと、あれ?ダイ君軽いよ、ちゃんとご飯食べてるの?こら、首締めすぎるよ。」  「ダイ君の愛情表現なんですよ。」 「そうなんですね、でも少し緩めて、ダイ君。」 「良かったら、園内ご案内しますよ。色々な動物も居ますから。佐川さん動物好きですよね?」 「はい、大好きです、じゃあ、ダイ君降りて、手を繋ごう、いやいやしないの、後でまた抱っこしてあげるから。」仕方なく降りたダイ君の手を繋ぎ、小川さんと一緒に園内を見て歩く。  しばらく見て歩いてると、見た事ある風景があった。 「あれ?ここって、もしかして。」私が聞くと小川さんが 「ええ、ここは、「どうぶつ学園」で使われてる部屋です、いきもの係と言うコーナーで、タレントさんとがさまざまな動物をお世話をするんですが、今もこちらで捨て犬のお世話をしてます。」 「ええ、先週テレビで観ました。確かお世話してる女優さんから名前を取ってエミちゃんって名前の犬ですよね。」  「キャッ、何のよ、もう、全然ごはんひっくり返して食べないのよ、私無理、松河さんお願いね。」っと飼育員が言うと部屋を出て行く。  「ちょっと勝手な事言わないでよ、私もこの子は、無理なんだから。」っと松河さんが叫んだ。 「どうしましたか?」っと小川さんが声を掛ける。 「小川さん、助けて下さいよ、いつも女優さんと一緒に飼育してる田所さん休みだから、全然朝からご飯あげても、ひっくり返して困ってるんですよ。」 「そうなんですよね、今日は、急に田所さん熱があると言って休んでしまったので、ご飯食べないのは、困りますね。」 ふと、私とエミちゃんの目があった。何故かこっちをじーっと見てる。それを見てた、小川さんが、 「松河さん、佐川さんに、その軍手を渡して下さい。」 「えっ、あっ、はい。」 「佐川さん、すみませんが、エミちゃんに、その餌入れ渡してあげてくれませんか?」 「えっ、私がですか?大丈夫かな?」松河さんに渡された軍手をして、餌入れを持った。 「小川さん、佐川さんは、素人ですよ、何かあったら、大問題ですよ。」 「たぶん、佐川さんなら、大丈夫だと思います。」私は、恐る恐るエミちゃんの近くに行った。 (じいじが言ってた、人も動物も目を見て話しかければ、心が通じ合う)私は、じいじの言葉を思いだし、エミちゃんの目を見ながら、 「大丈夫だよ、誰もエミちゃんを傷つけたりしないから、ご飯食べて元気になろうね。」そう言って檻に、餌入れを入れようとしたら、私の手にいくつかドックフードが落ちた。エミちゃんは、手に落ちたドックフードを食べ、それから、餌入れの方に顔を向けた。 「えー、嘘でしょ、まだ田所さんや女優さんでさえ、手から餌やり出来ないのに、さすが奇跡の女性だわ。」松河さんは、びっくりした声で私に向かって言った。 エミちゃんは、よほどお腹が空いてたのか、ガッツガッツと餌を食べ始めた。 「ご苦労様です。佐川さん。」小川さんが言う。 「いえ、エミちゃんご飯食べて良かったですね。」私は、松河さんに、軍手を返し言う。 「ええ、本当に、佐川さんのおかげです。ありがとうございます、では、私達も手を洗ってティータイムにしましょうか。」 「ウキキー」ダイ君も嬉しそうに言う。 「じゃあ、私は、違う動物のお世話しに戻りますね。」松河さんは、そう言うとエミちゃんの居る部屋を後にした。  私とダイ君と小川さんは、食堂のある方へと向かった。    一方、戸葉君仕事現場  「お疲れ様でした。」っと俺は現場のスタッフに挨拶をする。  (思ったより、早く終わったな、今から高速道路使えば、夕方には銚子に行けるな、美穂ちゃんまだ居るかな?)  「戸葉君、お疲れ様。ねぇ、今から時間空いてたら、食事でも行かない?これからドラマの共演者として、親睦を深めたいな。」そう言うと横田さんは、戸葉君の腕に絡み、体を密着させた。 (うわぁー、俺こういう女性苦手なんだ。)  「すみません、俺これから用事がありますので、お疲れ様でした。」俺は、横田さんの腕からすり抜けた。  「えー、そんな、戸葉君。」っと横田さんが言うと、  「さすがに、横田さんも、女性が苦手な、戸葉君を落とせないよな。」っとスタッフが小声で言う、そんな声に睨みつけてると。  「そんな、怖い顔してると、清純派女優が台無しだよ。」っと監督が近づいて言う。  「監督なんで、今度のドラマに戸葉君を起用したのよ。」っと横田さんが監督の側に来て言うと、  「スカイハイのメンバーとしての人気があるし、まだまだ演技は、粗削りだけど、光る原石の俳優として使えると思ってな、それより、真理子嬢、戸葉君の代わりに、私と食事でも行こうか、今後の話しもしたいし。」っと監督が横田さんを見て言う。  「もう、監督ったら、何処で何の話しをするんですか?」  そう言いながら、監督と腕を組ながら歩いて行った。  「まったく、何が清純派女優だよ、名ばかりだよ、横田さんは。」  「本当だよなぁー、。」っとスタッフが愚痴をこぼす。  一方、美穂、小川動物トレーナー事務所 「なんか、すみませんね、佐川さんにお手伝いしてもらって。」小川さんが申し訳なく言う。 「いえ、大丈夫ですよ、動物よりも飼育員が少ないんじゃ大変ですよね。」 「そうなんですよ、せっかく働きに来ても、仕事内容がきつかったり、動物の排尿で汚かったり、生き物を扱ってるので、覚える事が厳しかったりで、いわゆる飼育員は、3Kで理想と現実で辞める人が多くて、今居るスタッフは、ほとんどベテランの方ばかりなんです。」 「そうなんですね、やっぱり大変な仕事なんですね。」 「ええ、あっ、美穂さんって呼んでよろしいですか?せっかく一緒にお仕事してるので、敬語は、止めて頂けたら。」 「はい。良いですよ。」私を笑顔で返す。 「ありがとう。でも今日は、美穂さんが手伝ってくれたので、たまには、飼育員も早く帰しますか、田所さんみたいに、熱を出して休まれたら大変ですから、今、松河さんに内線しますので。」 「もしもし、小川です、松河さんですか?」小川さんが内線してる間、私は、ダイ君に。 「ダイ君、これ、みほちゃん人形だよ。私が作ったんだよ。」一生懸命作った人形を渡す。 「ウキキー?ウッキー。」嬉しそうに受けとる。内線を終えた小川さんが 「おや、ダイ君可愛い人形ですね、美穂さんお作りになったんですか?」 「はい、毎日ダイ君に会うのは、無理なので、その代わりにっと思って、気にいってくれたみたいですね。」 「ウッキー、ウッキー、ウキキー。」 「良かったですね、ダイ君宝物が増えましたね。」ダイ君は、コクコクと頷く。  そして、夕方4時になり、飼育員が帰って行く。  「お先に失礼しますね、小川さん、それと佐川さんカップケーキごちそう様です。まだ何個か残ってますので、食べて下さいね。今日は、お手伝いありがとうございます、おかげで久しぶりに早く帰れます。」っと松河さんが 「いえ、帰ってゆっくり休んで下さい。」  「はい、帰り田所さんの所に寄って行きますね。」私の母が作ったカップケーキを持って小川さんに言う。 「ええ、お願いしますね、お疲れ様でした。松河さん。」松河さんは、車に乗り、事務所を後にした。 「美穂さん、カップケーキ残ったみたいなので、後で食べましょうか。」 「たぶん、私の母が戸葉君来るかもって、多めに作ったんでしょうね。お母さん、戸葉君のファンだから。」呆れた様子で話す。 「そうだったんですね、それでは、すみませんが動物達の夕飯の準備を手伝ってもらって良いですか?」 「良いですよ、ダイ君も一緒に行こう。」私達は、飼育室に行き、さまざま動物達の夕飯を餌入れに入れた。 (さすがに、これは、3Kだわ、きつい。) 「よし、これで最後ですね。」小川さんが最後の餌入れに餌を入れる。 「美穂さん、大丈夫ですか?」 「はい、何とか、さすがにこれだけの動物が居ると餌やりだけで大変ですね。」 「そうなんですよ、今日は、美穂さんが居てくれたから早く終わりましたが、1人で、やったら夕飯に間に合わない時もありますからね。」 「本当に、飼育員さんには、頭が上がりませよ。」 「本当に、ありがとう美穂さん、ここまで手伝ってくれて無償で帰すのも申し訳ないので、良かったら、夕飯食べて行きませんか?私、美穂さんの為に美味しいご飯作りますから、あっ、それとも家で作って待ってますか?」 「いえ、今日は、夕飯保留にしてますから。」そんな話しをしてると、ダイ君がそわそわし始めた。 「どうしましたか?ダイ君。」外から車の音が聞こえた。 「おや、誰かいらっしゃたみたいですね。」外を見る。(あの車は、もしかして。) 「美穂さん、お母様の予想が当たりましたね。」私を見て言う。 (えっ、もしかして戸葉君来たの?)   「お疲れ様です。戸葉君、こんな時間に珍しいですね。」っと小川さんが、  「トレーナーお疲れ様です。今日の仕事早く終わったので、ダイ君の様子を見に来たんです。」っと戸葉君が 「お疲れ様です、戸葉君。」私が笑顔で言う。  (まだ、美穂ちゃん居たんだ、来て良かった、やっぱり美穂ちゃんの笑顔は癒される)  そんな様子を見てた、小川さんは  (やっぱりダイ君じゃなくて、美穂さんに会いたかったんですね、今の顔を見ればすぐに分かるのに、本当に戸葉君は、素直じゃないですね。)少し呆れ顔で思う。 「ウッキー、ウキキー。」ダイ君は、すぐに戸葉君に駆け寄り抱っこしてもらう。  「おー、ダイ君元気そうだな、んっ、これ何だ?」ダイ君が持ってた、みほちゃん人形を見て言う。 「私がダイ君に作ったの、毎日会いに来れない代わりに。」そう言うと、ぼそっと  「俺も、これ欲しい。」 「えっ、戸葉君、そんな趣味があったの?」私一歩引いて言う。 「ちがーう、それにしてもこの人形の目、少女マンガの目みたいで美穂ちゃんにしては、可愛い過ぎる、もしかして、体には、美穂ちゃんの髪が入ってたりして。」 「やだー、お母さんと同じ事言わないでよ、私まだダイ君に呪われたくない。」 「ダイ君、試しにガブッとかじって見て。」 「ちょっと、やめてよ、戸葉君、ひどーい。」 「わはは、ごめん、ごめん怒んないでよ、美穂ちゃん冗談だよ。」  (おや、おや、戸葉君が女性と大笑いする光景が見られるとは、これは、河村さんが思う以上に、もしかしたらこの2人)っと小川さんが思う。 「もう、久しぶりに会うのに、これなんだから、戸葉君は。」 「ごめんね。美穂ちゃん。」 「あのー、2人も盛り上がってるところ恐縮ですが、先ほどの話しですが、美穂さん、戸葉君も来たので、一緒に夕飯食べましょうか?戸葉君も仕事終わりでお腹空いてるでしょうから。」 「はい。では、お言葉に甘えて、ご馳走になります、今からお母さんに電話しますね。」  「ええ、では、美穂さんの為に美味しい夕飯を作るので、その間、ダイ君よろしくお願いしますね。」  (なんか、トレーナーの言い方って嫌な言い方だな、俺嫌われてるのか。) 「あっ、お母さん、私美穂だけど、夕飯、小川さんの所で食べて来るから。」 「そう。分かったわ、ねぇ、美穂、戸葉君来てるんでしょ?」 「えっ、なんで分かるの?」 「だって、美穂の声のテンション上がってるんだもん、まっ、頑張りなさい。じゃあ、帰り気をつけて帰って来るのよ。」ガチャっと母の電話が切れた後 (私は、毎回、一体何を頑張るんだろう)っと頭をかしげた。  私は、ダイ君と遊んでる戸葉君の元に行った。 「ダイ君、元気になったね、これなら、来週の生放送は、ダイ君出演出来そうだね。」 「そうだな。」そう言った戸葉君の顔が何故か暗かったのは、気のせいかな? 「ここ来るの戸葉君久しぶりなの?」 「そうだな。最初の頃は、俺も、いきもの係やってて何回も来てたけど、最近は、スカイハイの仕事や俺自身の仕事も忙しくて、今は、このロケの教室も、美穂ちゃんも知ってと思うけど、捨て犬だったエミちゃんしか居ないからな。」私達は、歩きながら、エミちゃんの居る教室のセットと反対側の食堂に近い教室のセットに入る。 「懐かしいなぁー、俺ここで色々な動物のお世話して、動物の生態の勉強して、俺さぁー、もし、今この仕事して無かったら、獣医師さんになりたかったんだ、小さい頃から動物好きで、だから「どうぶつ学園」の仕事をもらった時は、どんな形でも動物触れあえる事が出来るから、すごーく、嬉しかったんた。でも、だんだんスカイハイの人気が出て、忙しくなって、それは、嬉しい事だけど、その上にあんな事が。」戸葉君は、一気にしゃべって、ため息をついて、私の方を見て、 「美穂ちゃん、知ってるんだろう?「どうぶつ学園」であった事件の事、この前の河村さんとの飲み会で立ち聞きした時、そんな雰囲気だったから。」 「うん。女性観客乱闘流血事件の事だよね。」 「美穂ちゃん、名付けないで、そう、その事件で、なんか俺自信無くなちゃって、誰も俺を責めないし、連帯責任だからって言うし、俺、今自分がどうしたいか分からないんだ。」 「戸葉君、「どうぶつ学園」辞めたいの?」 「それも、分からない、たまに本番中に、思い出す事もあって、俺ここに居て良いのかなっと思ったりして、なんか情けないよな、あの事件から、ずいぶん経つのに、まだ立ち直れ無いなんて。」 「でも、大型連休中の番組には、トラブル無く普通に進行してたよね。」 「ああ、あれは、サクラだよ、元々指名する人を決めて、俺が指名したように進行しただけディレクターが俺に気遣って、そういう感じにしたんだ。」 (あの、ディレクターがねぇー。) 「でも観てる側としては、何も違和感は無かったけど。」 「確かに、視聴者の声は良かったよ、だけど、俺は、納得して無くて、本当は、初回のように、お客さん一体形に戻して番組をやりたいし、いきもの係もやりたいけど、気持ちばっかり焦って進めなくて、それが今は、辛くて。」戸葉君の本音を聞いた私は意を決心、話した。 「戸葉君、焦らなくても、良いんだよ、出来る事から、少しずつやれば。」 「えっ、」戸葉君の顔を上げて私の方を見る。 「私の通ってた。カウンセリングの先生が言った言葉なんだけど、私が、小学生と中学生の頃、親が不仲でじいじ子だったのは、飲み会の時聞いたよね?」 「ああ、でも、その後、高校生の頃には、仲良くなったんだよね。」 「うん、確かに、その後が私は、大変だったの念願の高校には入ったけど、元々内向的で、一緒に入学した、親友の里穂は、社交的で数週間で友達が出来たのに、私は、なかなか馴染めず、人間関係で悩んでて、その上に親が急に仲良くなった事で、逆に苛立って、どうしたらいいか分からず、ある日の朝、起きたら、両腕を無意識にかきむしったみたいで、指も腕も血だらけで、あれには、自分もびっくりした。さすがに私も止めなきゃと思ってたんだけど、それが逆にストレスになって、今度は、部屋中の物を投げるわ、親に罵声浴びせるわで、感情の行き場が分からなくなって、まっ、一種の遅い反抗期だったんでしょうね、今思えば。」一息ついて、続ける。 「そんな私を見かねて、親が精神科のカウンセリングに連れて行ったの、その時先生が「親を許せない気持ちもかきむしってしまう駄目な自分も一度に直そうとせず、許せる事を自分の心と向き合って許し、かきむしりも、かきたいならかいても良い、自分自身が気が付いたら、止めれば良いんです、少しずつやれば良いんです。その内すべてを許せる日が来るんです。佐川さんは、1人では、ありません。これからは、私達が支えてあげますから。」あの言葉は、私の人生の中でも今でも大切な言葉として、残ってるんです、おかげで時間は、かかったけど、高校も無事卒業し、成人式を迎える頃には、ほぼ完治し、多少の傷後は、残るものも、今は、薬も飲まず、普通の生活が出来るんです、だから、戸葉君、事情は、違えど、今は、辛いと思う事も、少しずつ、やれる事をやりましょう、戸葉君も、1人では無いんです、河村さんも村瀬さんも小川さんも、たくさんのスタッフさんが居るんです。元々あの事件で戸葉君を責めなかったのも、戸葉君が誰より動物が好きで、どんなに忙しくても動物と向き合ってるのを知ってるかだと思いますよ。」ダイ君が心配そうに、戸葉君の膝に手を置く。 「あっ、ダイ君も戸葉君大好きだもんね。」 コクコクと頷く。 「美穂ちゃん、ありがとう。俺泣きそう。」 「えっー、ごめんなさい、なんか長々と説教しちゃたみたいで。」慌てて言う私に。 「ううん、俺の為になんか辛い事思い出さちゃって、本当にごめんね。」戸葉君は、私の手に手を置いて言う。 (戸葉君の手温かいなんかドキドキする。) 「辛い事じゃないよ、戸葉君。私が高校卒業する頃には、ほとんど良くなってて、その時先生が、君が体験した事は、これからの人生に大切な経験だから、もし君の近くの人が苦しんでたり、辛い思いをしてたら、君が今度は、その人の力になってあげるんだよっと言われたの。だから、戸葉君辛い思いをしてるならって。」 「美穂ちゃん、ありがとう。」私の手を強く握って言う。 (えー、戸葉君、手、手やばいよ)焦る私。 「俺、すげー、嬉しいよ、俺少しずつ頑張るから。」少し涙声で言う。 「うん、私も戸葉君の頑張りちゃんと見てるからね。」 「美穂ちゃん、出来たら、俺の、その俺の。」何か言おうとした時で、食堂の方でガシャンっと物が落ちる音がした。  「すみません、食器落としまして。」っと小川さんが 「大丈夫ですか?小川さん。」 「はい、プラスチックなので割れてませんから、すみません良いところで邪魔して。」っと小川さんが言うのを聞き、  (まさか、トレーナー俺達の話し聞いて無いよな?)っと不安になる戸葉君。 「いえ、大丈夫なら良いんですけど。それで、戸葉君さっきの話しの続きだけど。」 「ごめん、後で良い?今は、ちょっと無理だから。」 「えー。気になるよ、戸葉君。」 「ちゃんと後で話すから。」 「美穂さん、戸葉君とダイ君夕飯出来たので、食べましょう。」っと小川さんが声を掛ける。 「はーい。」私は、戸葉君から手を離し、ダイ君と手を洗いに行く。 「ウキキー。」っとダイ君も返事をする。  (何だろう俺、こんな気持ち初めてかも、もっと美穂ちゃんの側に居たい、俺が美穂ちゃんの支えになりたい。もしかして本気で美穂ちゃんの事) 「戸葉君、どうしたの?」っと聞くと 「ごめん。今行くよ。」  食堂に行くと、いい匂いがした。 「うわぁー、美味しそう。ダイ君一緒に手洗おう。」 「ウキキー。」手を洗って、戸葉君に代わる 「どうぞ、戸葉君。」 「うん、ありがとう。」 「美穂さん、良かったら、私の所にお嫁に来ませんか?」っと小川さんが急に私に向かって言う。  「はぁ?」手を洗ってた戸葉君が変な声を出す。私も、びっくりして、「へ?」っと変な声を出した。  「いえ、美穂さんは、動物も好きだし、ダイ君とも仲良しなので、お嫁に来てくれたら嬉しいなぁっと思って。」  (小川トレーナーって実は河村さんより手が早いのか?)っと戸葉君が思い。 「いや、あの、とても嬉しい事ですが、私今の仕事好きなので辞められませので、すみません。」  「そうですか、残念ですね。」っとがっかりした様子で小川さんが言う。  そんな話しをしてると、ダイ君がつまみ食いをしようとしてた、それを見た私は、ついダイ君の手をペシッと叩き 「いけない、ダイ君、ちゃと、いただきますをしてたから、食べないと、悪い子になっちゃうよ、ダイ君は、良い子でしょ」と叱ってしまった、ダイ君は、素直にコクコクと頷いた。その様子を驚きながら、じっーと見てた2人に、ハッと気づき 「ごめんなさい、つい、じいじのしつけが厳しかったもんで。」っと慌てて、謝る。 「いえ、謝らなくても良いんですよ、美穂さんは、良いお母さんになりますね、やっぱり私と結婚しませんか?」っと又小川さんが言うを聞き、私が戸惑ってると、戸葉君が  「トレーナーって河村さん並みに女好きなんですね。」っと言うと、  「河村さんとは、違いますよ、私は、欲しい物は、直ぐにでも手に入れたい性格なんですよ。」  「美穂ちゃんは、物じゃないよー。」  「おや、戸葉君何か機嫌悪いですね、さっき良い所で邪魔されたから、怒っているのかな?」っと2人言い合いが止まらないので、私が。 「2人ともそろそろご飯食べませんか?又ダイ君つまみ食いしちゃいますよ。」  「はーい。」っと小川さんと戸葉君が言う。 「いただきます。」「ウキキキー。」 「うん、美味しい、小川さん料理上手ですね、料理が出来る男の人って素敵ですよね。」  「ありがとう、美穂さん、ですって戸葉君。」  「俺だって自炊位しますよ。」そんなやりとりの中夕飯を楽しく食べ終え、食器洗いを手伝いながら、  「そういえば美穂さん、デザートに、美穂さんのお母さんが作った、カップケーキを食べましょうか?美味しいコーヒーを入れますよ。」っと小川さんが言う。 「戸葉君、甘い物大丈夫?私のお母さんが作ったカップケーキ食べる?」  「俺、全然甘い物好きだよ、美穂ちゃんのお母さんお菓子作りするんだね。」 「最近、はまってるみたいだよ。」   「へぇー、そうなんだ、美穂ちゃんは、お菓子作りするの?」 「私もお菓子作りはするけど。」  「今度食べたいなぁー、美穂ちゃんが作ったお菓子。」 「しょうがないなぁー、今度作ってあげるよ、何でも良いの?」  「やったー、何でも良いよ、美穂ちゃんが作ったお菓子なら食べるから。」そんな会話をしてると、小川さんがコーヒーを持って来て、  「良いですね、私も美穂さんのお菓子食べたいですね。」「ウキキー。」 「はい、はい、小川さんもダイ君も今度来た時にね。いただきます。」っとコーヒーを口にすると、 「あれ?このコーヒー、豆から入れてますか?香りも口あたりも違うので。」   「おや?美穂さんコーヒー好きですか?」  「はい、私コーヒー大好きで、最近は、豆から挽くコーヒーにはまってて、このコーヒー美味しいですね。どんな豆使ってます?」  「嬉しいですね、私もコーヒーが好きなんで、やっぱり私と美穂さんは、相性が良いですね、良かったら、豆少し分けますよ。」 「わぁー、ありがとうございます、嬉しい。」  「俺だって、コーヒー好きなんだけど。」っとボソッと戸葉君が言う。  「何1人でいじけてるんですか、はい、どうぞ、カップケーキ、美穂さんは、私と半分ずつにしましょう。」 「ありがとう。」「ウッキー、ウッキー。」 「ダイ君は、食べれないでしょう。」 「少しなら、大丈夫でしょう、やっぱりダイ君も皆と同じ物食べたいんでしょう。」っと、小川さん、少しダイ君にあげた。  楽しいお食事の時間も過ぎ、帰る時間に。 「今日は、美穂さんありがとうございま。おかげでダイ君も元気になり、来週からは、番組も出演出来そうです。」っと小川さんが言う。ダイ君は、眠くなり部屋で入って寝てる。 「いえ、なかなか体験出来ない動物の飼育が出来て、とても楽しかったです。こちらこそ、ありがとうございます。」  「又いつでも遊びに来て下さい、ダイ君も私も待ってますから、これ、お土産です。後お母様にもご馳走様とお伝えして下さい。」っと小川さんが言い、お土産に、コーヒー豆をもらった。 「コーヒー豆ありがとうございます。」  「いえ、戸葉君、美穂さんを寄り道しないで駅まで送って下さいよ。」  「はい、はい、分かってますよ。」戸葉君は、車に乗ろうとしながら言う。 「では、小川さん、お休みなさい。」っと言い後部座席に乗ろうとすると、  「あれ?美穂さん、戸葉君の車は、後部座席に乗るんですね、私の車は、助手席に乗ったのに。」 「それは、小川さんが助手席のドアを開けたからです。」っと言うと戸葉君が小さな声で        「その手があったか。」っと言う。  「素敵な女性をエスコートするのは、当然ですよ、ねっ、戸葉君。」もう、運転席に座った戸葉君に言うと、戸葉君が面白なさそうに、  「美穂ちゃん。帰るよ。」っと声をかける。  「美穂さんも帰り運転気をつけて下さい。お休みなさい。」私は、小川さんに頭を下げたと同時に戸葉君の車は、走りだした。 「ねぇ、美穂ちゃん、なんで俺の車の助手席座らないの?」まだ気にしてるのか、戸葉君が聞いて来た。 「私、男の人の車の助手席は、彼氏以外は、乗らない主義なんだよね、小川さんの車は、社用車だったし。」 「じゃあ、俺が彼氏になればよいのか。」っと小さな声で言う。 「えっ、なんか言った?戸葉君。」 「なんにも、で美穂ちゃん車何処の駅に停めたの?」 「大洗駅」私が言うとナビで検索して、セットする。 「なんか、ごめんね、遠回りさせちゃって、戸葉君帰るのが遅くなっちゃうね。」 「大丈夫だよ、東京には、高速道路で帰るし、気にしなくて、良いよ、美穂ちゃんとお話し出来るのは、嬉しいし。」 「ありがとう、戸葉君。」 「でも、後ろだと、しゃべりづらいよなぁー、俺、目見てしゃべった方が良いほうだから。」 「あっ、じゃあ、電話苦手なの?」 「そうだな、テレビ電話の方が良いなぁー、。」 「ふぅーん。じゃあ、少し戸葉君の近くに寄る?」 「いや、それは、それで心臓に良く無い、運転操作が危ないから、止めて。」 「クスックスッ、冗談だよ。そんな事しないよ。」 「ねぇ、今日、美穂ちゃん、トレーナーの所で、何してたの?」私は、戸葉君に今日、小川さんの所であった出来事を話したり、戸葉君の今日のお仕事を話したりしてるとあっという間に駅に着いた。 「美穂ちゃん家の最寄り駅ってここなの?」 「違うよ、今日は、銚子駅から行きやすいから停めただけで、もっと上の那珂湊って所だよ。」 「けっこう遠いの?」 「ううん。30分位かな?」 「ふぅーん、じゃあ、気をつけて帰ってね。」 「戸葉君も、夜だからって高速道路飛ばし過ぎないでよ、危ないから。」 「分かってるよ、帰ったら、メールするよ。」 「うん。じゃあ、戸葉君またね。」私は、戸葉君の車を降り手を振った。それに対し戸葉君は、軽くクラクションを鳴らし、走りだした。  「さて、私も帰るか。」私は、駐車場に向かい料金を払い、車に乗った。  赤から青に変わるシグナル 戻る事の出来ない旅の途中で明日を信じて進みたい        限られたこの時の中で 強く胸に刻み込んだ陽はまた昇ってゆく  夜だったから道路は空いていて、早めに自宅に着いた。     「ただいま。」っと玄関のドアを開ける。 「お帰り、美穂楽しかったかな?」っとお母さんが聞く。 「うん、楽しかったよ、小川さんや飼育員の方も感じの良い人多くて、カップケーキ美味しかった、ご馳走さまって言ってたよ。」 「あら、良かった、戸葉君は?」 「戸葉君も美味しかったって。」 「あら、嬉しい。」 (又、舞い上がってるわ。) 「ねぇ、今日美穂、戸葉君とどんな話しをしたの?」聞かれて、私は、サァーと血の気がひいた。 (そういえば、私、精神疾患が過去にあった事話しちゃったんだよね、戸葉君どう思ったんだろう) 「美穂どうしたの?」 「ごめん、お母さん、今日は疲れたから、お風呂入って寝るわ。」私は、暗い顔で2階に上がる。 「うん。お風呂沸かし直しておくね。」 (どうしたんだろう、美穂、戸葉君と何あったのかな?)  私がお風呂から上がり携帯を見ると、戸葉君からメールが入ってた。 「ただいま、美穂ちゃん、今家に帰って来たよ、夜は、高速道路空いてたから、早めに帰れたよ。美穂ちゃんは、お家にちゃんと帰れたかな?今日、少しの時間だけど、美穂ちゃんと会ってお話し出来て良かったよ。今日は、美穂ちゃんトレーナーの手伝いで疲れてるだろうから、ゆっくり休んでね」 (戸葉君、絶対、高速道路スピード出して、走ったんだろうね、あの車だったら、スピード出そうだし。) 「お帰りなさい、戸葉君。私もさっき帰ってお風呂入ったところです。今日、私も久しぶりに戸葉君と会えて良かったです。今日は、お仕事と車の運転ご苦労様です。今日は、さすがに疲れたので、休みますね。戸葉君もゆっくり休んでね。おやすみなさい。」っと送信。 (今のところ、今日の私の話し気にしてる感じは無いから大丈夫かな)っと思ってると、戸葉君から。 「美穂ちゃん。おやすみなさい。」っと返って来た。  私は、ベッドに横になり、今日の出来事を思いだしていた。 (動物達の飼育大変だったけど、楽しかったなぁー、なんか、昔、動物の施設で同じ事したのを思い出した。懐かしいなぁー、)そんな事を思い、私は、いつの間にか寝ていた。  そして、次の週の土曜日 (久々の土曜日休み、今夜は、「どうぶつ学園」の生放送観れる、後で戸葉君にメールしよう) 「おはよう、お母さん、お父さん。」 「おはよう、美穂、今日は、久しぶりに土曜日休みね、今夜は、一緒に「どうぶつ学園」観ようね。」 「うん、お父さん、今日は、出掛け無いの?」 「ああ、今日は、家に居る。」 「そう、では、いただきます。」  私は朝食を食べ、2階の自分の部屋に行くと戸葉君にメールした。 「おはよう。戸葉君。美穂です。今日は、久しぶりの土曜日休みなので、今夜は、「どうぶつ学園」生放送をお母さんと一緒に元気になったダイ君を観るから、戸葉君も頑張ってね。」っと送信。 (そういえば、生放送観に行った時から3カ月か、やっぱり戸葉君に、私の過去の話しをするの時期早々だったかな。)私は、又気持ちが暗くなってきた。 (いけない、いけない、暗くなっちゃだめだ) 「よし、今日は、部屋の掃除して、すっきりしよう」気持ちを切り替えた。   生放送前「どうぶつ学園」楽屋  「っと言う過去があったみたいですよ。美穂さん。」小川トレーナーは、先週美穂が戸葉君と話してた話しをしていた。  「えー、嘘でしょ、あんな優しい笑顔をしてる彼女にそんな過去が、あったなんて信じられない。だから、ダイ君がなついてたのね。」っと村瀬さんが驚いた声で言う。  「俺も、飲み会の時に美穂ちゃんが両親が不仲で、おじいちゃんっ子になった話しは聞いたが、まさか、その続きがあったとは、よくその話しトレーナーにしたな。」っと河村さんが聞くと、  「おはようございます。」少し遅れて戸葉君が来た。  「私に話しをしたんじゃないですよ、彼ですよ。」っと小川さんが戸葉君の方を見る。  「おはよう、戸葉ちゃん、何、先週トレーナーの所行ったのか?」っと河村さんが聞く。  「ええ、丁度、その時の仕事、ドラマの顔合わせと打ち合わせだけだったから、早く終わったから、ダイ君の様子を見に行ったんですよ。」  「ダイ君じゃなく、美穂さんに会いたかったんじゃないですか?あんな楽しそうに話す戸葉君は、なかなか見れませんから。」っと戸葉君に向かって言う。  「余計な事言うなよ。」っと言いながら、カーテンを閉め俺は、着替えを始める。  「おはよう、戸葉君、美穂ちゃんの事驚いたんじゃないの?」っと村瀬さんが聞く。  「正直驚いたよ。最初は、何不自由なく暮らしたお嬢様かと思ったのに、両親の不仲だけじゃなく、美穂ちゃん自身もそんな辛い経験をしてたなんて、でも逆に俺も美穂ちゃんが、その経験を乗りきったように、俺も頑張らないといけないって、勇気をもらった気がしますよ。」そんな話を聞いてると、村瀬さんが、小声で河村さんに、  「そういえば、戸葉君が出るドラマの予告観たけど、共演者に横田真理子さん出るみたいだけど、戸葉君、真理子様の噂知ってるよね?」  「まさか、戸葉ちゃんだって芸能人だよ、有名な話だし、知ってるでしょ。」  「でも、戸葉君って、けっこう無知だからね。」  「なに、2人でひそひそ話してるんですか?」戸葉君が着替えて出て聞く。  「いや、なに、今度、戸葉ちゃんが出るドラマの事なんだけど、横田真理子さん出るだろう。」っと河村さんが聞く。  「ええ、相手役として、出ますよ、そ、れが何か?」  「いや、まっ、女優さんには、気をつけろって事だ、綺麗な花にはトゲがあるからな。」っと河村さんが言うと、  「何言ってるんですか、そんなの分かってますよ。そういえばトレーナー聞きたい事があるんですけど。」  「何ですか?戸葉君。」  「美穂ちゃんの事なんだけど、精神疾患ってやっぱり繰り返すのかな?ほら、ダイ君みたいに。」  「そうですね、美穂さんの場合は、ダイ君の時と違い、確か今は、カウンセリングも薬も飲んで無いっと言う事でしたよね?」  「うん、そう言ってたよ。」  「でしたら、強いトレスでも無い限り繰り返す事は、無いと思いますよ。一番良いのは、その事を知ってる人がきちんと理解し、側に居る事が何より良い薬だと思いますよ。」っとトレーナーが言うと、全員が戸葉君の方を向く。  「なんだよ、なんで皆俺の方見るんだよ。」 「ウッキー、ウキキー。」っとダイ君が何か言う。  「おっ、ダイ君、今日みほちゃん人形持って来たのか、今日美穂ちゃん生放送観てるみたいだから、ポケットに入れておいたら喜ぶかもね。」っと俺が言うと  「なに、なに、その人形、美穂ちゃんが作ったの見せて。」っと村瀬さんが言い、ダイ君に近づこうとすると 「ウッキ、ウッキ。」ダイ君は、横に首を振って離れる。  「もう、なんで私には、なついてくれないの?最近は、女性のお客さんにも愛想良くなったのに。」  「ゆみちゃん、もしかして、化粧濃いんじゃない?ダイ君化粧の匂い嫌いだから。」  「あっ、じゃあ、私今度すっぴんでダイ君に近づこうかな?」っと村瀬さんが言うと  「げっ。」っと俺と河村さん同時に言い、  「村瀬さん、それは、止めた方が良いと思いますよ、ダイ君違う意味で逃げるから。」っと俺が言うと、  「なにー、私のすっぴんが怖いって言うのか、それは確かに美穂ちゃんみたいに若く無いが、こう見えて肌綺麗なのよ。」  「俺、そこまで、言って無いですよ。」   「最近、戸葉君、生意気なのよ、この口が」と戸葉君の口を引っ張る。  「本番前に顔引っ張らないで下さいよ、村瀬さん。ごめんなさい。」   「やれ、やれ、毎回毎回賑やかですね、ダイ君。」 「ウキキー、ウキキー。」   「「どうぶつ学園」の皆さん、観客入りましたから、準備お願いします。」っとディレクターが声を掛ける。  「では、今日は、久しぶりにダイ君復活でメンバー全員揃ったところで生放送頑張りましょう。」っと河村さんが言うと  「はい。」っと全員で言う。  「ねえ、戸葉君、美穂ちゃんに告白するの?」スタジオへと歩きながら村瀬さんが聞く。  「えっ、なんで分かるんですか?」  「さっきの話しの雰囲気から、なんとなく何年一緒に仕事してると思ってるのよ、ついでに言えば、戸葉君がいまだにあの例の事件引きずって悩んでる事も大型連休の生放送の事も納得して無いのも皆知ってるよ。ただ言わないだけ、戸葉君自身に乗り越えて欲しいと思ってるから。」          「村瀬さん。」 「それで、いつ告るの?」  「ドラマの撮影が終わったら、気持ち伝えるつもりだけど。」 「はぁ?戸葉君ずいぶん引っ張るね、その間に美穂ちゃん他の人に取られちゃうじゃない?」  「そんな、ひどいな。でもこのドラマの仕事は、ちゃんとやり遂げたいんだ。俺が本当にやりたかった仕事だから。」  「本当に、戸葉君は、くそ真面目なんだから、ちゃんと美穂ちゃんに、待っててもらえるように引き留めておきなよ。」  「うんって、さっきから、ひどい言葉の連続なんだけど村瀬さん。」  「さっきの仕返し、さて、本番始まるよ。」   (意外に、根にもつタイプなのね、村瀬さん。でも、美穂ちゃんの言う通りだった、こんな近くに俺の事を見てる人が居たなんて、近すぎて見えなかっただけで、これからは、皆を信じて、やっていこう。)っと俺が思ってると、  「ほら、戸葉君持ち場ついて皆待ってるよ。」  「はい。今行くよ。」っと俺は、村瀬さんの横に行く。   一方、美穂の家 夕方、今日は、早めに夕食を食べ「どうぶつ学園」が始まるまで2階の自分の部屋に居て、さっき入ってた、戸葉君のメールを見ていた。 「こんにちは。美穂ちゃん。戸葉です。今日休みだったんだね、これから「どうぶつ学園」の収録です。ダイ君もしかしたら、みほちゃん人形ポケットに入れてるかもしれないから、注目して観てね。俺も張り切って頑張って来るので、後で生放送の感想聞かせてね。」 (全然、この間の事触れて来ないし、いつも通りのメールなんだよね、まっ、里穂も言ってたけど、気にし過ぎかな?)  今日は、午前中部屋の掃除した後、里穂からメール来て、暇そうにしてたから、私も休みって聞いたら、午後家に来たんだよね。  小川さんのもらったコーヒー豆でコーヒー入れて、2階の私の部屋で先週の話ししてたんだけど。 「へぇ、そんな事あったんだ美穂、銚子の海も良いよね、来月一緒に千葉の海行くのも良いね。休み合えばだけど。」 「うん、なんか戸葉君悩んでたか、つい、私の過去の話ししちゃって、まだ知り合って3カ月で早過ぎたかなって、今さら後悔してて。」 「何言ってるの、だってあれから戸葉君何も言ってこないなら大丈夫でしょう、そんなに戸葉君心狭くないでしょう。」 「気にし過ぎなのかな、でもあの時、私の手を握って何を言おうとしたのかも気になるけど。」 「えっ、何美穂、戸葉君に手に握られたの?膝枕といい、戸葉君だんだん大胆になってくるね、これは、愛の告白でしょう?」 「えー、それは、無いでしょ、過去に精神疾患持ってた娘好きにならないでしょ。」 「美穂そんな事気にして、恋愛に消極的だったの?もっと自信持ちなよ、美穂は、それをきちんと克服したんだから、そんなに気になるなら、直接、戸葉君に聞けば良い事でしょう。」 「それも、そうだよね。」 「あっ、今夜「どうぶつ学園」生放送観るんでしょう。私も楽しみだな、戸葉君、週末の目の保養なんだから。」 「もう、里穂ったら。」 今日の出来事を思い出し、ふと時計を見ると、もう、時間だった、下からお母さんの声が 「美穂、「どうぶつ学園」始まるよ。」  「はーい。今行く。」  リビングに行くと、お父さんが面白くなさそうな顔で晩酌していた。 (久しぶりだな、生放送観るの) わくわくしてると、番組が始まった。  いつものように河村さんの言葉で始まり、生徒会長が紹介されると、大きな拍手と歓声が上がる。 (あれ?観客席とスタジオ近くないかな?気のせい?) それから、ダイ君が紹介されると、元気よく挨拶をした。 「ダイ君、元気になったみたいで良かったね、美穂」母は、テレビを観ながら言う。 「うん。あれ?お母さん、ダイ君のズボンのポケット見て。」 「あら、美穂が作った人形持って居るんだね、良かったね、美穂。」 「うん、嬉しい。」  そのうち観客の1人がポケットの人形に気付き、 「可愛いい。」っと言った。ダイ君は、嬉しそうに、人形を見せた。そして、河村さんが 「ダイ君のガールフレンドに貰ったんだよね。」言うと、ダイ君は、コクコクと頷き、 すかさず河村さんが 「俺もガールフレンド欲しいな」っと言うと 戸葉君と村瀬さんが「無理でしょ。」っと同時につっこみ、観客もスタジオも笑いに包まれた。 「相変わらず、良い感じの3人よね、いつも観てて楽しくて、話しによると、この最初のやり取りって、アドリブって聞くけど、息が合う事だから、出来る事だよね、それにしてもこの美穂の人形やっぱり可愛すぎだわ。」 「もう、お母さんったら、これでいいの。本当に、仲の良い3人だよね。」そんな会話をしながら、「どうぶつ学園」の番組を楽しみながら、最後まで観終えた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加