胡蝶蘭

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「……もし、俺が死んだら、後はよろしくな」 「……そんなに悪いの?」  急に深刻そうな声でそう言った。あたしは痛む心を静めながら、彼と静態して話を聞いた。 「次心臓が止まったら、息を吹き返す保証はないんだってさ」 「そうなの。でも死ぬのはダメだからね。譜和にはあなたが必要なんだよ」 「いや、父親は他にいるさ。俺はダメな夫で父親だった。結局、蘭にも譜和にも何もしてやれなかった」 「そんなことない」  あたしは耐えられなくなり、涙を抑えながら彼の細い手を握った。久しぶりに握る手は以前よりも細く生気がない。  けど、温かい。彼が生きようと努力していることを証明している。
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