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「俺がいてよかったろ」
「ハイ、トッテモ」
「もうちょい心込めて言えよ」
僕は今、カキ研の二つ隣の病理研にいる。目の前には白衣を着た菅原。お互い第一希望が通ったお陰で、取引しやすくなったのである。
「いやでも菅原がいてくれてホントに助かったよ」
「お礼はお前の奢りで大盛りカレーの福神漬け抜き抜きな」
菅原が白衣のポケットから取り出した。採取した茶色い茎が入ったジップロックには『根株病』とサインペンで書かれている。
「富山で昔似たような症例があって、先輩が調べてくれたらこの病気だってさ。ペンシクロン水和剤、メプロニル水和剤、フルトラニル水和剤を株元に灌注すると発病を遅延できると」
さすがに薬品名を言われてもピンとは来ないけど、これでウェディングマーチの全損は免れるだろう。
「やっぱ、奢り辞めにしよっかな」と菅原が椅子に座り直す。
「その代わりお前が何でそこまでするのか気になっちゃうな〜。即決でカキ研にしてるしな〜」
ニヤニヤしてこっちを見る限り、もう色々とバレている気がする。僕はそっぽを向く。
「意地悪な質問して悪かったよ。ほれ、それ持ってって先輩に会ってこい」
ジップロックが僕の手のひらに載せられる。
「ありがとう、菅原」
「構わん構わん」と手を振った後、シッシと僕を追い返した。石野さんに何て言おう。
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