Chapter1. 春沢菜乃という女の子。(菜乃side)

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高校2年になって1ヶ月。 私、春沢菜乃は未だにクラスで孤立をしている。小さな頃から人見知りが激しく、大人しい性格だったから友達という友達がいた事はない。 いや、いた時期も無くは無かった。ただ、その人達とは本当の友達になれなかった。 そういう話。 「春沢さん、今度のコンクールも期待しているわよ」 「あ、ありがとうございます。上坂先生」 美術室でいつものようにデッサンをしていると、顧問の上坂先生が声をかけてきた。 美術室にいると、本当に落ち着く。先輩も同級生も大人しい人ばかりだし、人間関係に悩まされる心配も無い。 教室にいる時みたいな息苦しさは無い。 中学生の時から部活動だけはずっと続けていて。学校に行く理由付けにもなっている。 いつか、私の憧れの画家……成瀬琥珀さんみたいに素敵な絵を描ける人になりたくて。 この学校を選んだのも画材の豊富さと美術室の居心地の良さに感銘を受けたから。 「春沢さん、そろそろ教室に行った方が良いんじゃ無い? 昼休み、終わっちゃうわよ」 「あ、ありがとうございます」 私は先生に言われ、時計を見る。またお昼ご飯を食べ損ねてしまった。 一度夢中になると、食事を忘れてしまう癖だけは悩ましい。 憂鬱な気持ちを抱えながらも、私は教室へ向かう。 「やっぱ依織の作る曲最高だ!」 「あー、もう! 集中してんだからちょっとは黙れよ、樹」 「ごめん、ごめん! 新アルバム聴いたら感想を伝えずにはいられなくて」 「あはは。樹は本当依織ラブだよなー!」 「依織はラブソングの神様だし」 「童貞だけどなー!」 「黙れよ、愁」 教室に入ると、男子達がやたらと騒がしかった。 藤崎くんはうるさい二人に巻き込まれてるって感じだけど。 軽音部でギターボーカリストをやっている藤崎依織……クールな雰囲気だし、歌もギターもめちゃくちゃ上手いから女の子に人気があるけど、彼自身あまり女の子と話しているイメージが無い。 その隣にいる白石愁….…赤髪が目立つ藤崎くんと同じバンドのベーシスト。かなり女遊びが激しいという噂のある子。 そして、そのまた隣にいるのは……立花樹。パーマがかった金色の髪が白石くんに負けないくらい目立つ男子。一見チャラそうだよね、彼も。 彼は藤崎くん達とは違い、帰宅部だ。クラスで一番明るいし、懐っこい雰囲気だからバンドとか特別な事をしなくとも皆から好かれてるみたい。私を除いた皆に。 私はなんか苦手。自分とは全く別の世界にいるような雰囲気だし。 彼だって私には興味も無いだろう。三つ編みで校則通りに制服を着た地味な地味な私なんて。
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