Chapter1. 春沢菜乃という女の子。(菜乃side)

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「や、やっと終わった……」 授業が終わると、私は机に突っ伏す。 部活、行かないと。 「樹ー、カラオケ行かね?」 「依織が一緒なら良いよ」 「はぁ? 俺は帰って新曲作りを……」 「今日はバン練無いんでしょー? 樹くんとも遊んでよ、依織」 「面倒くさい」 「あはは。付き合ってやれよ、依織。俺と依織が樹と遊べるのなんて限られてるし」 「愁が女呼ばないなら付き合う」 「えー! 女の子いないとやる気起きないんだけど!」 また白石くん達が騒がしいな。本当に仲が良いみたい。 「は、春沢さん!」 突然、立花くんが私の元へ。 「た、立花くん?」 「これ、あげる。お腹、空いてるんだよね?」 立花くんは私に小さなポテトのスナックの袋を渡す。 「け、けど……こんなに……」 「ぶ、部活……行くんでしょ? 何か食べないと」 「あ、ありがとう……」 「う、うん!」 「そ、それじゃあ」 「ま、また明日ね! 春沢さん!」 私は軽く会釈する。 立花くんって良い人だなぁ。一見派手な雰囲気で近寄りがたいけど。 ポテトスナックを頬張りながら何とか部活を乗り切った。 立花くんに何かお礼をあげたいけど、自分からは話しかけにくいなぁ。 いない隙を狙って机にお菓子置くとか? 「ん?」 昇降口に着くと、下駄箱に封筒が入っている事に気付いた。 「手紙?」 私は恐る恐る中身を取り出す。 『春沢さんへ。僕は貴方の事が気になって気になって仕方がありません。貴方の描く絵、貴方のその可憐な出で立ち、その可愛らしい声、優しいところ全てに惹かれています。貴方の全てを愛します! だから、僕の事を愛してみてもらえませんか? I.T』 一見、内容はラブレターみたいな感じだけど……ちょっと怖い! 誰かのイタズラ? 名前書いてないし。 I.Tってイニシャルかな? 謎のワード! 「す、ストーカー?」 でも、私みたいな地味な女子に? 「ただいま」 「菜乃、おかえり」 帰宅すると、母がテレビを見ていた。 「何見てるの?」 「本当にあった事件について取り上げてる番組! この女の子、大変なのよ! ストーカーに監禁されて!」 「へ、へぇ……」 「あぁ、良かった! 殺される寸前で警察が来て。菜乃も気をつけてね? 部活で遅くなる日とか」 「う、うん……」 母に話すべきか。ストーカーに遭ってるって。 いや、ただのイタズラかも? 「菜乃? どうしたの?」 「き、着替えてくるね」 なんか余計怖くなってきたかも……。 どうしたら良いんだろう!?
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