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「や、やっと終わった……」
授業が終わると、私は机に突っ伏す。
部活、行かないと。
「樹ー、カラオケ行かね?」
「依織が一緒なら良いよ」
「はぁ? 俺は帰って新曲作りを……」
「今日はバン練無いんでしょー? 樹くんとも遊んでよ、依織」
「面倒くさい」
「あはは。付き合ってやれよ、依織。俺と依織が樹と遊べるのなんて限られてるし」
「愁が女呼ばないなら付き合う」
「えー! 女の子いないとやる気起きないんだけど!」
また白石くん達が騒がしいな。本当に仲が良いみたい。
「は、春沢さん!」
突然、立花くんが私の元へ。
「た、立花くん?」
「これ、あげる。お腹、空いてるんだよね?」
立花くんは私に小さなポテトのスナックの袋を渡す。
「け、けど……こんなに……」
「ぶ、部活……行くんでしょ? 何か食べないと」
「あ、ありがとう……」
「う、うん!」
「そ、それじゃあ」
「ま、また明日ね! 春沢さん!」
私は軽く会釈する。
立花くんって良い人だなぁ。一見派手な雰囲気で近寄りがたいけど。
ポテトスナックを頬張りながら何とか部活を乗り切った。
立花くんに何かお礼をあげたいけど、自分からは話しかけにくいなぁ。
いない隙を狙って机にお菓子置くとか?
「ん?」
昇降口に着くと、下駄箱に封筒が入っている事に気付いた。
「手紙?」
私は恐る恐る中身を取り出す。
『春沢さんへ。僕は貴方の事が気になって気になって仕方がありません。貴方の描く絵、貴方のその可憐な出で立ち、その可愛らしい声、優しいところ全てに惹かれています。貴方の全てを愛します! だから、僕の事を愛してみてもらえませんか? I.T』
一見、内容はラブレターみたいな感じだけど……ちょっと怖い!
誰かのイタズラ? 名前書いてないし。
I.Tってイニシャルかな?
謎のワード!
「す、ストーカー?」
でも、私みたいな地味な女子に?
「ただいま」
「菜乃、おかえり」
帰宅すると、母がテレビを見ていた。
「何見てるの?」
「本当にあった事件について取り上げてる番組! この女の子、大変なのよ! ストーカーに監禁されて!」
「へ、へぇ……」
「あぁ、良かった! 殺される寸前で警察が来て。菜乃も気をつけてね? 部活で遅くなる日とか」
「う、うん……」
母に話すべきか。ストーカーに遭ってるって。
いや、ただのイタズラかも?
「菜乃? どうしたの?」
「き、着替えてくるね」
なんか余計怖くなってきたかも……。
どうしたら良いんだろう!?
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