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「まさかストーカー認定されるとはね」
「やばいな、お前のラブレター。ストーカーにしか見えない文だわ」
愁と依織は呆れた表情で俺の書いた手紙の下書きを読む。
「想いが溢れて書いたんだよ! 依織だってラブソングで想い爆発させてるじゃん」
「お前と一緒にするな」
俺、立花樹は人生初めての告白に大失敗した。
「春沢さん、すごく怯えた表情してた……どうしよう!」
「逆にストーカーから守るって程で近付けるんじゃない?」
愁はにやりと笑う。
「だ、駄目! だって実際犯人は俺なんだし、騙すみたいで嫌だよ。いや、ストーカーではないんだけど」
「じゃあ良いの? 大好きな大好きな春沢ちゃんがずーっと怯えて生活するのを見ているだけで」
「えっ!」
「春沢ちゃん、部活もやってるし、帰りは遅いよ? 泣きながら帰ってるかも。お前のせいで。償わないとねぇ?」
「お、俺だって謝りに行く……」
愁に煽られ、俺はさらに落ち込む。
「けど、謝ったら距離は縮まるところか離れるぞ? まだ友達ですら無いのに」
「い、依織……」
「暴露するのは付き合ってから。今は守るって程で仲を縮める。それが得策だな」
「めっちゃリスキーだね」
「勝手に暴走した樹が悪いから」
「でも、俺……イニシャル書いたからバレる可能性あるよね?」
「大丈夫だろ。さっき、お前に話しかけられた時の春沢、嫌な顔してなかったし」
えっ!
「本当に本当?」
「ああ。安心したんじゃないか? 話聞いてもらえて」
「そ、そっか。良かった! 俺、まだ嫌われてない!」
依織の言葉に胸を撫で下ろす。
「とりあえず、今日こそ距離を縮めないとね? いーつき! 昨日失敗したし」
「だよね」
「誰も考えもしないだろうな。樹が童貞で女の子と話すのが苦手なんて」
「うっ。依織と愁がいないと女の子と遊びに行けないよ、俺。前に試しにデートしたらつまんない言われたし」
「高校デビューしたとはいえ、性格ばっかりはな」
そう、皆は俺を誤解している。
中学までの俺は黒髪に丸縁眼鏡でとにかく地味だった。昔ずーっと入院してたのもあり、人との付き合い方が分からなくて。
高校に入って思い切ってイメチェンして頑張って依織に話しかけてから交友関係が広がった。
「俺が中学生の時は女子皆、俺を気持ち悪がったくせに。今はやたらと絡んでくる。だから、女子は嫌なんだ」
「外見はチャラ男、中身はスーパーピュアボーイだもんな、樹は。依織もだけど」
「春沢さんだけ特別なんだ」
そう、彼女は俺の事を覚えていないようだけど。
俺はずっとずっと会いたかった。
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