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周囲には野次馬が集まっていた。さほど大きな村ではないが、朝市のあとということもあって、二十名ほどの人間が集まって兵士たちを見ている。その目は明らかに「酔っ払いがなにを喚いているんだ」と非難していた。
「わが軍は村人の協力によって、不自由なく行動できているのだからね。あまり迷惑をかけるようだと、君たちの処分を検討しなくてはならないよ」
「……ちっ。分かりましたよ。おい、行くぞ」
後半は仲間に呼びかけて、兵士たちはその場を歩み去った。
リカードは女性たちに向き直り、「大丈夫かい?」と声をかけた。彼女たちにはまだ緊張の名残があった。
リカードは袋から梨をひとつ取り出すと、アリーシャの後ろに隠れている少女に向かって差し出す。
「怖い思いをさせて悪かったね。これ、好きかい?」
少女がこっくりと頷いたので、その手に梨を握らせた。
リカードはその頭をやさしく撫でると、アリーシャに視線を戻した。
「君にも迷惑をかけてすまなかったね……ふふっ」
「なんで笑っているのかしら、マクラウド大尉」
「あ、いや失礼。ホットドッグは勘弁してくれ」
「……」
思い出してまたおかしくなり、リカードは結局声をあげて笑ってしまった。アリーシャは憮然としている。
「とにかく、助けていただいたことにはお礼を言うけれど、部下のしつけはきちんとしてほしいわ」
「あぁ、その通りだね。また困ったことがあったら、いつでも相談してくれ」
リカードは真面目な顔に戻って言い、「どうせ暇だしね」と付け加えた。
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