〈10〉友達の恋

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〈10〉友達の恋

まさの父親と会ってから数日が経った。あれからまさが家族の話をすることはなく、表面上はいつもと変りなく日々が過ぎていった。 何かあれば話してくれるだろうし、今は何も進展がないんだと思う。 今日も昼休みに教室を覗きに来たと思ったら、「放課後迎えにくるから、一緒に帰るぞ。」とだけ言い残して自分の教室に帰ってしまった。 そうして俺は今、放課後の人がまばらになった教室でまさを待っている。 ともは部活、れんはバイトでHRが終った途端に教室を出ていった。俺と同じく部活が休みのりょーただけが残っている。 普段りょーたと何話してたっけ?あまり二人きりになることがなくて、少し戸惑ってしまう。 初めて会った時の黒いオーラをまとってるという印象は、随分変わったと思う。 口数も少ないし、表情も豊かとは言えないけど、クールなだけだし、それに馴れ合わないとか言ってたけど、付き合いも良いほうだと思う。 何を見てるのか、自分の席に座ってぼーっと窓の外を眺めているりょーたに声をかけた。 「俺らだけって珍しいよね。」 「たしかに。」 りょーたが俺の方に向き、呟くように話す。 「・・・静かだな。」 「れんがいないからね。」 俺は苦笑した。 れんがいれば、きっと今頃あれしよーこれしよーと賑やかにしてるだろう。俺らはれんを中心に回ってる。 「まさ待ち?」 「うん。」 「ほんとに仲いいよな。」 りょーたがじっと見つめてくる。 えっ、何、おかしいこと言ったっけ?今までの会話を思い返してみるけど、変なことは言ってない。 妙な間があく。 「・・・というより、まさのこと好きだよな。」 りょーたの言葉が不意をついた。 自分でも驚くくらいに慌ててしまう。 「あっ・・・?えっ・・・?なんで?」 情けない返事しかできなかった。 俺の反応にりょーたが笑いをこらえている。 「見てたらわかる。バレバレ。」 「そっか・・・。」 別に隠してるつもりもなかったし、ばれても全然かまわない。恥ずかしいけど。 けど、何でりょーたはそんな話題を出すんだろ。
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