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「そういう事じゃなくて、なんていうかこう……」
「つまり、本や漫画で見るような恋をしたいと」
「そう! はぁ、そんな運命的な恋……したいなぁ」
「………」
そう言って、今度は天井を見上げた。
「あら、それなら本とか漫画なら『幼なじみ』も結構あるわよね?」
自分の仕事は終わったのか、見ていた鏡から顔を上げてたずねたのは『書記』の女子生徒である。
「幼なじみ……」
彼女の言葉に、さっきまで冷たい対応をしていた副会長の方を向いた。
実は、この二人。小さい頃から顔見知りの『幼なじみ』でなおかつご近所さんである。家族ぐるみの付き合いもあり、学年や性別も違っていたが、昔は仲良くしていた。
「そうそう」
「……」
「そこまで無理して恋をする必要はないと思います。そもそも学生の本分は『勉強』です。色恋に精を出すのは勝手ですが、頑張った結果成績を落とす……という事だけはさけてください」
「うっ、分かっていますよ!」
副会長の言葉に会長はすねたのか、顔をふくらませながら扉の方へとズンズンと大またで進んだ。
「どうされたのですか?」
「担任の先生に呼ばれているから先に行きます! 最後の人は電気を消して、鍵をかけてく先生に渡してください!」
会長はそのまま扉を勢いよく開け……。
「……っと」
「あっ、ごめんなさい」
――そのまま進もうとしたところで、会長は『会計』の男子生徒にぶつかりそうになった。
「すっ、すみません。担任の話が長くなって遅くなりました」
敬語になったのは、遅れてしまった事に対してだろう。しかし、別に会長は『それ』に対して怒っているのではない。
「そっ、そっか。後の事は『あの人』に聞いて。私も先生に呼ばれているから」
男子生徒は『あの人』と呼ばれた『副会長』の方を見ている間に、会長はそのまま生徒会室を出て行った。
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