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哀れなる異形に向かいし姫
「ありがとうございます。興味深いお話でした。……でも、わたしは諦めません。この旧校舎から、何があっても先生を連れ出します」
わたしがそう言って扉の方を向こうとした、その時だった。轟音とともに扉が吹き飛び、異様な生物が姿を現した。
爬虫類のような脚の間から不気味な顔を覗かせたその生き物は、巨大な爪のついた長い腕を振り回しながらわたしの方へ迫ってきた。
「お願い、そこを通して。……通せんぼする気なら、悪いけど容赦しないわ」
わたしはそう言い放つと、両方の拳をぎゅっと握りしめた。
――どうにかしてこの怪物の動きを封じないと、この部屋から出られないわ。
わたしは相手との距離を保ちつつ、壁際へと移動を始めた。万が一、攻撃されたら電撃でひるませ、一気に外へ飛びだすつもりだった。
……だが、怪物が次に取った行動は、わたしの予想を完全に覆すものだった。怪物の腕が一瞬、視界から消えたかと思うと、わたしのすぐ近くに振り降ろされたのだった。
咄嗟に飛びのくことで難を逃れたわたしは、大きな爪でかぎ裂きにされた左の袖を見て戦慄を覚えた。
――こうなったら少々、強引なやり方で突破する以外にない。
わたしは覚悟を決めると、わざと大きな身振りで相手を惹きつけながら移動を始めた。
怪物が出口を背にしたのを見極めたわたしは、爪のついた腕が振り上げられた瞬間、身を屈めて相手の股座へと突進していった。
「があっ!」
身体が脚の間を抜け、向こう側に出たと思った、その時だった。突然、長い物体が首に巻きつきわたしの勢いを止めた。
「くっ……!」
もがきながら振り返ったわたしが見たものは、相手の股間から覗く顔と口から伸びた長い舌だった。
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