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「潤、これ何?」
助手席に乗せるような彼女ができた。その彼女が座席と背もたれの間に挟まっていたものを見ながら俺に聞いてきた。
「なんだろ、見せて」
彼女から受け取る。一枚のカードだった。
リナリア(姫金魚草)
花言葉:この恋に気づいて
小関が花屋でポケットにしまい込んだあのカードだろう。
気づいてほしかったのは、俺なのだろうか。俺の自惚れかもしれない。でも。
「まさかな」
俺はそのカードを胸ポケットにしまった。
「どうするの、それ」
「部員にあげる。こういうの好きそうじゃん。女子高生って」
そういうと彼女はクスクスと笑った。
「女子高生って言い方がなんかオヤジっぽい」
「他にどう呼べばいいんだよ」
赤信号で車を停車させる。目の前を若い男女が手を繋いで歩いていく。
その女のほうが、小関唯香に見えた。いや、小関だろう。少し大人になっていた彼女は、当時よりずっと綺麗だった。
その小関が、よく俺に見せていた表情を隣の男に向けていた。
少しだけ、胸の奥が疼いた。
正直、気づきたくなかった……
信号が青に変わって、俺はアクセルを踏んだ。
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