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「はい、ちゅうもーく!」
キースさんの声が響く。
「今更な感じやけど、皆さんにお知らせがありまーす。
今日から、ハイキング同好会に新しいメンバーが入りました。
凌君です、はい、拍手ーーー!」
「凌です。
皆さん、どうぞよろしくお願いします!」
凌君は立ち上がり、深く頭を下げた。
あれから、さゆみと凌君はいつの間にか仲良くなって、お付き合いを始めた。
凌君はバンドを始め、さゆみは彼のバンドをメジャーデビューさせるという大きな目標を手に入れた。
「それにしても、皆、いつの間にかええお相手みつけて何やのん。
僕だけはみごやんか。」
「何言ってるんですか。
キースさんなら、彼女さんなんてすぐにでも出来るじゃないですか。
選り好みし過ぎなんじゃないですか?」
「そうかなぁ…?」
さゆみは何も知らない。
『ロンリーハート』がキースさんの作った曲だってことを…
いつも明るいキースさんだけど、大阪にいた頃、彼女さんと死別したんだって。
だから、まだ次の恋にいけないんだよ。
私も、リクさんに教えてもらうまでは、そんなこと、まったく知らなかったけど…
「キースさん、早くお弁当にしましょうよ!
私、お腹ぺこぺこです!」
「あ、そうやな。今日のお弁当はどんなんかなあ?」
相変わらず、私はキースさんのお弁当係。
私とリクさんのことは、一部のファンには知られちゃってるみたい。
それでちょっとした意地悪をされることはあるけど、みんなが護ってくれるし、私も少しは強くなったから、もう泣いたりしない。
それに…
私、もうじきお姉ちゃんになるから…しっかりしないといけないんだもん。
それにしてもびっくりしたよ。
まさか、こんな年になってお姉ちゃんになるなんて、考えてもみなかった。
それは、瑠威も同じで…最近の瑠威は、ママに呆れられる程、ママのことを大事にしてる。
今から、子供が男の子だったら、バンドをさせるなんて言って、ママのお腹に向かって良く歌っているよ。
私とリクさんの仲は極めて順調…
ただ、私が原因でなかなか進展しないのが、悩みといえば悩みだけど…
リクさんは辛抱強く待ってくれてる。
「わぁ、今日のお弁当もおいしそう…」
「あーーー、望結、どういうことだ?
キースの弁当の方が豪勢じゃないか!」
「そんなことないってば!」
こういう子供っぽいことを言うのが玉にキズ。
でも…実は、そういうところも可愛いって思ってたりするんだけどね…
「あぁ、それにしても、今日もお天気で良かったなぁ…
やっぱり、日頃の行いがええからなんやろなぁ…」
キースさんに倣って、皆が空を見上げた。
私達の気持ちは、今日の空のように明るく澄み切っている。
~fin.
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