時は流れて…

2/2
前へ
/380ページ
次へ
* 「はい、ちゅうもーく!」 キースさんの声が響く。 「今更な感じやけど、皆さんにお知らせがありまーす。 今日から、ハイキング同好会に新しいメンバーが入りました。 凌君です、はい、拍手ーーー!」 「凌です。 皆さん、どうぞよろしくお願いします!」 凌君は立ち上がり、深く頭を下げた。 あれから、さゆみと凌君はいつの間にか仲良くなって、お付き合いを始めた。 凌君はバンドを始め、さゆみは彼のバンドをメジャーデビューさせるという大きな目標を手に入れた。 「それにしても、皆、いつの間にかええお相手みつけて何やのん。 僕だけはみごやんか。」 「何言ってるんですか。 キースさんなら、彼女さんなんてすぐにでも出来るじゃないですか。 選り好みし過ぎなんじゃないですか?」 「そうかなぁ…?」 さゆみは何も知らない。 『ロンリーハート』がキースさんの作った曲だってことを… いつも明るいキースさんだけど、大阪にいた頃、彼女さんと死別したんだって。 だから、まだ次の恋にいけないんだよ。 私も、リクさんに教えてもらうまでは、そんなこと、まったく知らなかったけど… 「キースさん、早くお弁当にしましょうよ! 私、お腹ぺこぺこです!」 「あ、そうやな。今日のお弁当はどんなんかなあ?」 相変わらず、私はキースさんのお弁当係。 私とリクさんのことは、一部のファンには知られちゃってるみたい。 それでちょっとした意地悪をされることはあるけど、みんなが護ってくれるし、私も少しは強くなったから、もう泣いたりしない。 それに… 私、もうじきお姉ちゃんになるから…しっかりしないといけないんだもん。 それにしてもびっくりしたよ。 まさか、こんな年になってお姉ちゃんになるなんて、考えてもみなかった。 それは、瑠威も同じで…最近の瑠威は、ママに呆れられる程、ママのことを大事にしてる。 今から、子供が男の子だったら、バンドをさせるなんて言って、ママのお腹に向かって良く歌っているよ。 私とリクさんの仲は極めて順調… ただ、私が原因でなかなか進展しないのが、悩みといえば悩みだけど… リクさんは辛抱強く待ってくれてる。 「わぁ、今日のお弁当もおいしそう…」 「あーーー、望結、どういうことだ? キースの弁当の方が豪勢じゃないか!」 「そんなことないってば!」 こういう子供っぽいことを言うのが玉にキズ。 でも…実は、そういうところも可愛いって思ってたりするんだけどね… 「あぁ、それにしても、今日もお天気で良かったなぁ… やっぱり、日頃の行いがええからなんやろなぁ…」 キースさんに倣って、皆が空を見上げた。 私達の気持ちは、今日の空のように明るく澄み切っている。 ~fin.
/380ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加