一話

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一話

「詩織姉ちゃん」 重いランドセル背負った、憂鬱な朝の登校時間は、ある人のおかげで色づいたように見える。 規程のスカート丈をしっかり守られたセーラー服に身を包む少女が振り返る。「郁人君」 彼女は軽く手を上げて名前を呼んだ。 僕はそばまで駆け寄った。 「おはよう、今日も元気ね、郁人君」 「おはよ、姉ちゃんは今日も…えっと、朝早いな」 彼女はキョトンとして、でもまたすぐに笑顔に戻り、 「そうね、私立だから電車乗らなきゃ、郁人君は?」 「僕はサッカークラブの朝練」 郁人君は?にほぼ間髪を入れずに答えた。 六年生になり部長になった今、朝練は必須だ。正直面倒臭いが、詩織姉ちゃんと会えるなら、まあいいかと思えてしまう。 これは別に恋愛感情とかそんなんじゃ無い。 ただ、同じマンションに住んでいて、低学年の頃よくお世話になった、まあ姉弟みたいなものだからだ。だから別に恋愛感情なんて持ってないし、これからも持つつもりはない。てか迷惑だろうし。 そんなことを考えていると、あっというまに学校に着いた。 「それじゃ、サッカー頑張ってね」詩織は笑顔で手を振った。 「ああ、じゃーなー」 そのあとすぐに練習が始まったが、全くと言っていいほど身は入らなかった。詩織の笑顔が頭から離れなかったのだ。
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