台風

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「サク、君は君の場所で幸せになってほしい。君はもしかしたら、私が死んだ後、神龍を継ぐのかもしれない。だが、このまま力が目覚めない可能性もある。 君が神龍の血族だということは、このまま秘密にしておけばいい。私たちは会わない方がいい。 もしもベリル領に来てくれたとしても、私は決して君には会わない。私はセンチネルだ。隠れんぼは得意だ。誰にも私を見つけることはできない。だから、私のことは忘れて、ご両親やアサヒやタクミと幸せになってほしい」  神龍の言葉が心に落ちた。神龍は、アオは、ルチルさんと僕との念話を聞いて、僕が幸せに暮らしていけるのかを確認したかったんだ。僕が周りの人から大切にされているのが分かったんだろう。  余りにも、優しくて、悲しくて、苦しい。何で君はそんなに人を思うんだろう。  僕は、君に自分自身をもっと大切にしていい。もっと我儘になって欲しい。   「いいんだ。神龍は民に尽くすものなんだ。  サクが最後の血族になるから、神龍に代々の伝わる話を聞いて欲しい。 最初の神龍は400年ほど前のアサギ国の王だったんだ。災害の多さを憂えた王が、今後自分の血族が命をかけて民を守ると神に誓って神龍の力を授けてもらった。  それから代々神龍は民のために生きている。『神龍の導き』を神龍の運命に付き合わせてしまったのは、孤独な神龍への神のプレゼントなのではないかと思っている。  でも近頃は治水や天候の予測が進んで、昔より被害が少なくなってきている。民の神龍に対する信仰も薄くなった。 私は民には神龍は必要なくなったのではないかと思っている。『導き』の君を、神龍の運命から解放できる。  だから、私が最後の神龍だ。  サク、最後に話せて良かった。  幸せに。もしも君に神龍の力が宿っていたとしても、このままアサギ国で力を隠して暮らして欲しい。  君のために最後の神龍になれるなら、私にとって最高の幸せだ」
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