神龍

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<どうして神龍は『導き』を探すことに反対しているんですか?>  神龍は『導き』がいなければ、死んでしまうかもしれない。それなのにどうして? <今の神龍の父親は先代の神龍、母親は『導き』だった。二人はとても仲が良い番だった。先代の神龍はアサギ国民からのたくさんの願いを叶えていて、いつもボロボロだった。その度に傷ついた神龍を『導き』が癒していたんだ。でも3年前、ついに回復できないくらい傷ついてしまって、短い生涯をとじた。『導き』も後を追うように、昨年亡くなった。 神龍は代々長生きできない。人のために尽くして、早く死んでしまう。『導き』も神龍を失うと、長くは生きられない。 神龍も『導き』も幸せには生きられないから、神龍は自分の代で、神龍も『導き』もなくしてしまおうとしている> <神龍は回復できないってわかっているに力を使って、死のうとしているということですか?それとも神龍の力を使わないことにしたということですか?> <サクくんは察しているみたいだけど、前者だよ。神龍は代々お人好しなんだ。人に尽くそうとしてしまう。 サクくん、泣かないで…『導き』に会ったら、神龍も惹かれずにはいられない。きっと共に生きようとする>  いつの間にか、僕は泣いていたようだ。  悲しい運命の神龍と『導き』。愛し合っていても、長くは生きられない運命。 <僕は、神龍に、生きて欲しい…>  『導き』を何としても探して、神龍の命を救いたい。  『導き』は神龍に出会ったら、神龍を心から大切に思うんだろう。でも大切な神龍が傷ついて死んでしまうのを見送らないといけない。  愛する神龍が早く死んでしまうなら、『導き』の人生は幸せとは言えないのかもしれない。神龍は『導き』を思い遣るからこそ、『導き』の幸せのために出会わないようにしている。    僕は神龍のために『導き』を探したいと思っている。でも神龍は、自分の命より『導き』に幸せに過ごしてほしいと思っている。神龍の思いに反して、『導き』を探すべきなんだろうか?  神龍に会うことが『導き』にとっては幸せなことなのか、僕にはわからない。出会わなければ、悲しい別れはないのだから。
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