55人が本棚に入れています
本棚に追加
「この声は…神龍?」
耳に残る声。以前不機嫌そうな神龍の声を一度だけ聞いたけど、今は随分と印象が違う。
「私の名前はアイオライト・ベリル。神龍は役割にすぎない。君をサクと呼びたい。私はアオと呼んでほしい」
「アオ、ようやく引きこもりをやめたんだ。じゃ、後は2人で話しな」
「ルチルさん、どういうことですか?」
「これからの念話は2人だけでごゆっくりどうぞということ。私が念話を聞くのを遮断するから」
ルチルさんが笑いながら言った。お見合いみたいな展開は何?緊張して話せないよ…。
…沈黙が続く。
「いつもサクとルチルの念話を聞いていた。私はルチルのように上手く話せない。たくさんサクに聞きたいことがあるのに…」
緊張しているのは、僕だけじゃなかった。
「何でも答えるので聞いてください」
「アサヒとタクミという男とは、どういう関係なんだ?」
一番聞きたいことが、それ?浮気を疑われてる人みたいだけど、僕たち会ったこともないのに…
「サクの気持ちを疑ってはいない…君が心から神龍を思ってくれてるのは知ってる。浮気してるなんて思ってない」
どうして神龍が「浮気」なんて言うんだ?そう言えば念話だった。思ってることが伝わってるってことか…。
ええっ?じゃ、今までもずっと考えてることが全部伝わってたんだ!すっごい恥ずかしい!これも伝わってるんだ!どうしよう…
「そんなに慌てなくても、大丈夫だ。思いが伝わらない方がよければ、伝えたいことだけを意識して伝えればいい」
そうなんだ…知らないとは言え、神龍に失礼なこと考えてなかったかな… 「サクの念話はとても可愛らしかった。時々私も発言したくなった。アサヒとタクミとは随分と仲がいいようだな」
「アサヒとは赤ちゃんの頃から一緒にいるし、タクミは部活が一緒だから…」
とても親しい友達?友達だと思ってたのは僕だけだった。2人が僕を見ていたのは、友情じゃなくて…
いつから僕を好きでいてくれたのか、全然気づかなかった。
僕が2人に向けている気持ちは恋じゃない。大切だけど、独占したいとか、触れたいとか、そういう気持ちじゃない。
思いが釣り合ってない…同じ種類と重さの気持ちがあれば、よかったのに。釣り合ってなければ、お互いに苦しくなる。
「サク、そうじゃない。自分が向けた気持ちと、相手からの気持ちのきもちが同じではないことは、不幸せではない。
私は大切に思う人を見つけられただけで、幸せだと思う。
私も2年前、サクを見つけた。たとえ一生直接会うことはなかったとしても、命をかけて私の『導き』を幸せにしたいと思った。サクが幸せなら、私は幸せだ」
最初のコメントを投稿しよう!