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2年前、上空を飛ぶ神龍と目が合った気がした…僕の思い込みじゃなくて、本当に僕を見つけてくれたんだ。
「僕だって…神龍を幸せにしたい…」
「そうだな…サクは命をかけてまで『導き』を探そうとしてくれた。
時々上空からサクの青い花畑を見ていた。いつも私を思ってくれているようで、癒されていた」
嬉しい、気持ちが届いていた。
神龍を…アオを抱きしめたい。この臆病で優しい人を抱きしめたい。
「アオ、君に会いたい…」
両親も友達も学校も、全て捨てて、神龍の元に行きたい。そう思う気持ちと、ブレーキをかける気持ちがある。
「今までの『導き』は全てを捨てて神龍に尽くして、神龍と共に死んでいった。私はサクが全てを捨てて私の元に来てくれることを望んではいない。サクを愛している人から、サクを奪いたくない」
「だったらアオは一人で死んでいくの?アオが死んだら僕が神龍になって、僕のための『導き』が生まれるのかもしれないよ。
僕は君に会うためにベリル領にいく」
僕はどうして神龍を選ぶのだろう?
僕を大切に、大切に育ててくれた父さんたち。
これから、僕と生きていきたいと言ってくれたアサヒとタクミ。
僕は、僕を思ってくれる人の気持ちを切り捨てるのか?
僕は薄情な人間だ。
僕はどうして会ったこともない神龍を選んでしまうんだろう。
神龍への思いは、ただの思い込みかもしれない。
長い時間、一緒にいてくれた人より、神龍の側にいたいと思ってしまう。
今までの人生の中の、人との関わりも、頑張ってきた研究も、将来の夢も、みんな捨ててもいいと思ってしまう。
一時的な気の迷い?
周りの人を傷つけるようなことをして、後悔しない?
僕は、自分に問いかける。
神龍に会うことは、過ちかもしれない。
神龍への気持ちは、いつか覚める夢のようなもので、いつか消えるのかもしれない。
それでも、僕は神龍に会いたい。
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