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「では、神龍の天候を操る能力はいらないってことだ」
従者は愉快そうに笑ってる。
「いらないとは言ってません。神龍はみんなに祈られて、願いを叶えなくちゃいけなくて大変だなって思います。神龍も自分のために生きればいいのに」
「自分のためにか…面白い。神龍にあげたいプレゼントは何?」
「神龍に青い花をプレゼントしたいんです。青い花で少しでも癒されて欲しい。神龍は悲しそうだったから」
神龍だって、なりたくてなったのかもしれない。誰だって生まれる場所は選べない。
「神龍にはねだるばかりで、プレゼントをしたいなんて初めて聞いた。いいよ。神龍に会わせるよ。ただし、君が『神龍の導き』を見つけられたら」
侍従はにっこりと笑う。
「『神龍の導き』って何ですか?」
「神龍を癒す唯一の存在。これ以上はここでは話せない。
さっき麗しの館に行ったのは、麗しの館のガイドの中に『神龍の導き』がいるかもしれないし、『神龍の導き』がいなくても探す手伝いをしてくれないか頼みに行ったんだ。
あの人たちは『我々には関係ない』と言って、私の話も聞いてくれなかった。でも、君は自分から飛び込んできた。誰にも見られないところで、もう少し君と話したい」
誰にも見られないところで思いついたので、僕はサクラパンに案内することにした。
「ユキ父さん、友達を連れてきた。地下室を見せたいんだ」
店でパンの陳列をしていたユキ父さんに声をかけて、階段を下る。ユキ父さんは、侍従をじっと見てたけど「いらっしゃい。どうぞ」と言ってくれた。
この店には食材の保管のために地下室がある。地下室なら誰にも見られないだろう。
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