神龍

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「どうやって『神龍の導き』を探すんですか?」  悲しそうな神龍を助けたい。でも僕に『神龍の導き』を探すことはできるんだろうか?探せなかったら神龍はどうなってしまうんだろうか?簡単に約束してしまって、神龍の迷惑になるのは嫌だ。 「サクくん、これ以上話すのは誓約が必要だ。今なら引き返せる。君が『神龍の導き』を探す手伝いをしてくれるのはありがたい。でも誓約を破れば命がないんだよ。君には危険をおかしてまで、『神龍の導き』を探す手伝いをすることの利点はないんじゃないか?」  もしも僕の友達が命をかけて『神龍の導き』を探すと言ったら絶対に止めると思う。神龍に会うために命をかけるなんて、正気とは思えない。  でも、でも、僕は… 「僕は2年前、神龍を見ました。神龍はとても綺麗で、すごく悲しそうだった。神龍を助けたいと思いました」  僕自身もどうしてこんなに神龍を助けたいのかわからない。でも神龍のことを思うと、胸を締めつけられるようだ。 「今まで神龍が人を食べると思っていたのに?」 「神龍が人を食べるという話を聞いても僕の目で見た神龍を信じていました。僕、誓約します。『神龍の導き』を探します」  あの悲しそうな神龍の力になりたい。ただそう思う。 「サクくんの覚悟はわかった。左手の手のひらを上にして、私の方に手を伸ばして」  ルチルさんは僕の手のひらに青い石を置いて、ルチルさんの手のひらで石ごと包んだ。石はひんやりしている。  ルチルさんは中性的でとても綺麗だけど、手のひらは厚くてゴツゴツしてる。フライボールの練習に打ち込んでいるアサヒや、実家の農業を手伝っているタクミのように、たくさん鍛えている人の手だ。  手を見れば、その人の生活の一部が分かると思う。ルチルさんは神龍の役に立つために努力している人だと思う。この人は信じられる。そう思った。
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