その2

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その2

その2 ケイコ 「アキラ、今日からよろしくお願いします」 シャワーを浴びた後、髪を乾かして着替えを済ませた私は、まずは座ってあいさつをした 「こちらこそ。はは、ようこそってとこだよ。こんな狭い部屋で不自由かけるけどさ…」 私は部屋の中をぐるっと見回した 「ううん、アキラのもとにはこんな状況でじゃなく来たかったけど…。でも、これからずっとアキラと一緒にいられるかと思うと胸がはちきれそうだよ。ここはお城に見えるよ」 アキラは笑ってる そう言えば、ギターが見当たんないな… ... アキラがお風呂から出できたあと、ひと通り両親とのやり取りを報告した 夕食後、高校卒業資格の件で具体的な話をしていたんだよね 私は、とにかくお父さんが滞在中に、アキラとのことを告げるつもりでいた 今日は、ここがタイミングだと思って、両親二人を前に”正直”に告白したんだ 勇気を振り絞って… 「実は私、本気で愛してる人がいるんだ…」 私は単刀直入に切り出したよ そしたらお母さんから、ちょっと笑いをこぼしながらまず一言出た 「それ、テツヤ君じゃないの?」 参ったよ、これには… 「ああ、例のちょっとエッチな彼氏か。陸上仲間だってな。お母さんからは一度別れたって聞いてたが、ヨリもどったのか?」 お父さんも笑顔でそう言ってきて… ... 「ちがうよ。テツヤじゃない。年上の香月アキラさんて人で、私と一緒に警察で取り調べ受けた人だよ。向こうも愛してくれてる」 私は一気に吐き出した ありのままを 両親は呆然としていたよ そして、その後は想像していた通りの”風景”が、まるで台本をなぞるかのように展開した 両親は絶対認めない、私は絶対あきらめない… この押し問答が続いた後は修羅場だった お母さんは泣きわめいて取り乱し、お父さんからは横っ面を張られた 「出ていけ!」 お父さんからそう大声を浴びせられた私は、すぐさま2階の部屋へ駆け込んだ ... 私は、当面必要な荷物を、マジソンバッグに急いで詰め込んだ そしてバッグを手に部屋を出ると、妹の美咲が立っていた 「お姉ちゃん…」 「美咲、こういうことになったよ。ゴメンな。これ、連絡先だよ。悪いけど、2、3日中に一度電話してくれるか?」 「うん。家のことは心配いらないから。頑張ってね」 その言葉を聞き終わった瞬間、階段わきの廊下で私は妹を思いっきり抱きしめてた しばらくの間、二人とも声を出して泣いてたよ 暴風雨の中、私は家を出た バス停に向かって走り出すと、ジョンが盛んに吠えていた その鳴き声は、背中に突き刺さるように届いてきたよ ... 私が話し終わると、畳に並んで腰かけていたパジャマ姿のアキラが私の肩に腕を回してきた 私の体はアキラのその手に、優しく引き寄せられていった 私の心も一緒に…
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