その1

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

その1

その1 アキラ 追川さんからは、相和会の反目組織が動き出しているようだと言われた 麻衣や相和会だけでなく、その他、人を介した接触には十分注意するようにと… ケイコちゃんにも、電話でその旨は伝えておいたが… あの記事に目を付けた連中は、記事の中のオレに気付けば、寄ってくるかもしれない 当分、気をつけなきゃ… ... 「台風20号は関東南岸に接近し、強風を伴った強い雨が広い範囲で降り始めてきており…」 テレビでは台風のニュースがさっきから流れている すでに先ほどから叩きつけるような雨が降ってきた 今日はバイトもフルだったし、ちょっと疲れたから、風呂入って早めに寝るか… そう思ってた夜8時半過ぎ、ピンポンが鳴った こんな雨の中、誰だろうか… 俺は玄関を開けた ケイコちゃん! ... 玄関前に立っていたのは、まぎれもなくケイコちゃんだった マジソンバッグとピンクの傘を両手にして、びしょ濡れだ まあ、一目瞭然ってところさ 「ケイコちゃん…」 「アキラ、急でゴメン。家、出てきたよ…」 「そうか…、ああ、とにかく中へ入りなよ」 オレはいったん玄関の外に出て、彼女の体を押し込むように部屋の中に入れた 雨に濡れた彼女のその体は冷たいのだが、温かさも負けないくらい伝わってきた おそらくそれは体の芯から… ... 「これじゃ風邪ひいちゃうな。先、シャワー浴びた方がいい。着替えは大丈夫?」 「うん、とりあえず、最低限は詰めて持ってきたから」 彼女はそりゃ元気はなかったが、妙に落ち着いていた 「じゃあ、お言葉に甘えてシャワーもらうね」 彼女は浴室に入って行った ... 彼女が浴びるシャワーの水の音が耳に届く 人が泊まったことなどほとんどなかったので、こうして部屋でシャワーの音を聞くこと自体、不思議な感覚がしたよ 予想はしていた 覚悟も当然あった たが、こんなにも早くこの日が訪れたのかって気持ちだった
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!