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「すごくタイプだったんですよ、正樹さんのこと。カッコつけてるところがまた可愛くて。今日だって初めから欲がダダ漏れでしたよ?」
「は…?」
「でも財布がないと気づいた瞬間の慌てようと言ったらもう、可愛くて可愛くて。カッコつけていた分、浮き彫りになっていておかしかったです」
目の前の彼女はまるで別人に見えた。
ゆっくりと俺に近づき、目の前で膝をついたかと思うと、俺の頬に温かい手を添えてきた。
「歳下、大好物なんです私」
「え…君は俺より歳下のはずじゃ」
「もちろん嘘ですよ。本当は五つも歳上です」
「嘘だ、そんな…」
信じられない。
どう考えても目の前の彼女は俺より若いはず。
「私はいつも若く見られるんです。
何なら免許証でも見ますか?」
「なんでそんな嘘を…」
「歳下女子の方が余裕ができるかと思ったんです。
実際にそうでしたよね?」
思わず首を横に振りたくなったが、彼女は笑って俺の反応を楽しんでいる。
「でも本当に可愛かったな、正樹さん。財布がなくてお金がない、つまりレストラン代を払えない。良いところのレストランを予約したのに、いざ払えないとなれば恥ですよね」
全てお見通しだったようで、言葉を失ってしまう。
彼女はクスクスと笑っていた。
「平気な素振りをしていましたけど、全く隠せてなかったですよ。それに財布の件が落ち着くと、今度は欲望の眼差しを向けてきて。もちろん初めからヤルつもりだったんですけどね。こんな風になるとは」
「ま、待って…頭が追いつかない」
「そんな正樹さんも可愛いですね。でも今は難しいことを考えるのはやめて、どうぞ好きなように私を抱いてください」
「…っ!?」
目の前には立派に育った果実が二つ、俺に差し出されている。
これはもうあれだ、一気に彼女の言葉はどうでも良くなってしまった。
いや、彼女がそのように仕向けたのだ。
「さあ、欲をそのまま私にぶつけてくれていいんですよ」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる彼女には余裕が感じられた。
あまりの豹変に驚いたのも束の間、あっという間に欲が俺を呑み込んだ。
これから始まる男女の営みには、お金など一切必要がなかった。
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